梶の日常 (楠美目線)

7限が終わった。

「まぁた梶のやつ、授業サボりやがってぇ。どこ行ったんだあいつぅ?」

榎本がスマホを見ながら呟く。

(たぶん屋上だろうな。)
オレは心の中で思った。

「おーい、榎本ー」

榎本が友達に呼ばれて席を立った。

オレはそれを機に、屋上へ向かった。

梶君は時々授業をサボる。本人曰く、退屈だから。先生に引き止められるのが嫌で、授業が始まる前の休み時間には姿を消している。

ある日、オレは梶君が、授業をサボるために教室を抜け出すところをたまたま目撃した。どこへ行くんだろうと、そのまま後ろ姿を見送る。どうやら梶君は屋上に続く道へと歩いているようだった。授業が終わると梶君は何食わぬ顔で席に戻ってきた。気まぐれで授業をサボり、帰ってくる。

そう、梶君はマイペースな人だった。

だから今日もいつものように平然と戻ってくるだろうと思っていた。しかし、放課後になっても梶君の姿はない。

どうしたんだろう……と思い、オレは今、屋上に向かっている。念の為、マフラーを持っていく。12月に入りかなり冷えこんできていた。

扉の鍵は開いていた。ドアノブを回して屋上に出る。ぱっと見、誰も見当たらなかった。

(あれ、梶君いないのかな)

今いる位置からもう一段高い所に目を移す。そこにはハシゴがかけてあるので上に登ることができるようだ。太陽に照らされたそこには黒い影が伸びている。

オレはハシゴに手をかけ登っていった。

(あぁーやっぱり、梶君だ)

そこには梶君が、陽の光を浴びながら大の字に寝転がっていた。ヘッドホンは耳から外し、肩にかけている。飴は咥えていなかった。

オレはニッコリ笑って近づく。

梶君は寝ているようだった。目を閉じて、微かにすーすーと寝息が聞こえる。
気持ち良さそうなのでこのまま寝かせておきたいとも思ったが、風邪をひいたら困る。何しろ寒い。

オレはしゃがんで肩のあたりをツンツンと突く。

(起きないな…)

今度は真っ赤になった鼻先をトンと触る。

ようやく気付いたのか、ゆっくりと瞼を上げる。ぼんやりした視界を振り払うように、目を擦っている。体を起こし、ぼんやりとオレを見る。

「あぁー、くすみ……?」

オレはニッコリと笑い、コクっと頷く。

「寝ちゃったのかオレ……」

「っくしゅん」と小さくくしゃみをする。

(やっぱり寒いんだ)

オレは持ってきたマフラーを首元にかけてやる。

「あったけ〜。さんきゅ」

オレはニッコリ微笑んだ。



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