見出し画像

【LESSON】60種類の塩を並べてみて「しょっぱい」以外の表現をしてみたらこうなった。

全国のみなさんこんにちは。
FOOD STORY PROJECT 代表Lisaとメンバーの管理栄養士akikoです。

私たちFOOD STORY PROJECTは料理家・調理師・管理栄養士・スタイリストと食の専門家が集まるプロジェクトチームです。

普段はなかなかできない勉強をしたいということで調味料の勉強会を始めました。

画像1

第一回目は、菜園料理家の藤田承紀シェフに来て頂いて、
「塩」についてのワークショップを行いました。

本日は塩についてのお話です。塩って”塩こしょう…少々”と書かれていたりするし、大体の加減でいつも入れてるよ。という方には今日から役立つ知識になります!

本日は60種類の塩を並べて、それぞれの塩にあう食材と調理法を学ぶというなんともアカデミックな会です。

なぜ、FOOD STORYで勉強会を始めたのか

画像2

実は、私「塩」についてはずっと学びを深めたい、そして伝えたいと思っていました。
日々、たくさんの方の健康や美容のカウンセリングをする上で、
「何をどう食べるか」ということと併せて、毎日の料理で使う基本となる「調味料」を選ぶことの大切さを感じていました。

画像3

その理由として、調味料としての塩は、手軽にミネラルが摂れるものであるからです。
ミネラルとは塩の主な構成成分であるナトリウムの他、カルシウムやマグネシウム、リン、カリウム、亜鉛や鉄などのことをいいます。
私たちの体には約4%のミネラルが存在していますが、どれも体内では作られないため、食事から摂り入れなければなりません。(ここ、大事)

そして、一つのミネラルだけを摂ると、他のミネラルの吸収を妨げたりするため、バランスよく摂取することが大切です。(ここも大事!2回目)

たったの4%に過ぎないミネラルですが、筋肉の収縮や酵素のサポート、代謝機能に関わるなど、とても重要な働きをしています。縁の下の力持ちのようなイメージでしょうか。

画像4

そのため、ミネラルバランスが良い塩を選ぶことが大切です。
日本では戦後の工業化により、塩の需要が増え、効率よく塩を生産する「イオン交換膜法」により、電気を使い海水から塩化ナトリウムがだけを取り出す方法が主流になりました。そのため、成分として塩化ナトリウムが99%を占めるため、他のミネラルは殆ど含まれていません。
一方、一般的に「自然塩」と呼ばれる塩は、海水を昔ながらの天日干しや平釜炊きなどにより作られたものの他、岩塩を採掘法で採取したもの。
岩塩や湖塩も、大昔は地球の表面の多くが海で覆われており、海面の低下や地面の上昇、海水の蒸発などによりできたもの。
そのため、自然塩の元はすべて「海水」であり、ミネラル成分である、ナトリウム、カルシウムやマグネシウムなどを含みます。
毎日使う塩だからこそ、まずは自然塩を選ぶことはとても大切だと思うのです。
そして自然塩の中でも、原料は海塩、岩塩、湖塩から始まり、藻塩やハーブソルトなど、海藻やハーブが混ざったものなど、さまざま。
さらには、サラサラした粉末、サクサクしたタイプなど形も全く違います。

そこで、今回は藤田シェフに「それぞれの自然塩はどの食材に合うのか?」
ということを教えていただきました。

料理をおいしくする塩の選び方/使い方とは

画像5

菜園料理家|藤田承紀(Yoshiki Fujita)…1982年千葉県生まれ。イタリア・トスカーナ地方のレストラン「IL PELLICANO」や、ローマの老舗「AL CEPPO」にてイタリア料理を学ぶ。帰国後は「食卓に笑顔を」をモットーに料理家として活動を開始。現在、各種アレルギー・ビーガンに対応した料理教室、ケータリング、レシピ開発を展開。シェフを務める「らんどね 空と海」で木曜〜土曜日にランチの営業を行なっている。

料理をおいしくする塩の選び/使い方について

①塩分濃度を0.9%前後にする
塩分濃度は、人間の体液とほぼ同じ0.9%が一般的には美味しいと感じやすいそう。

ただし、全部が0.9%の塩分量の料理が続くと、味に変化がなくなってしまうため、全体の料理のバランスの他、スープや肉料理などと、物によって濃度を変化させているそうです。

例えば、スープの塩分濃度を0.5%から調整するとして
例)4人分スープ(500cc)
500g = 玉ねぎ 100g + 人参 100g + ごぼう50g + 水200cc(g) +オリーブオイル 50g
塩→500(g)×0.5%=2.5g(小さじ1/2)
と、塩を小さじ1/2入れることになります。

仮に、塩と醤油を入れて調理をする場合は、塩と醤油のナトリウム含有量に差があるので、そこを併せて考える必要があるようです。

②料理に合わせた形状を選ぶ

一般的にはサラサラした粉状の塩は溶けやすいため、口に入れるとすぐ塩味を感じます。

一方、大きい粒の塩は唾液と共に溶けていくため、まろやかに感じるそう。

料理に合わせた塩の形状を選ぶことでより、素材の美味しさが引き立つ役割をしてくれます。

ステーキなど、
噛めば噛むほど味がでるものは、大きい塩などが合いやすいようです。

③塩の味で選ぶ

塩の主な成分はナトリウムですが、味にはそれぞれ特徴があります。
そのため、ナトリウム以外の成分の比率で味が変わります。

ー成分の主な味ー

ナトリウム …単純なしょっぱさ
カルシウム …まろやかさを感じやすくする
マグネシウム…苦い旨味
カリウム …酸味
鉄 …酸っぱさ
硫黄 …温泉卵のような香り

これらの微量の差で、味に大きな影響を与えます。
そして、藤田シェフが塩比べで用意して下さったのは、
塩を入れずにシンプルに調理された野菜やきのこなど8種類の食材たち。
そして塩はなんと60種類!!

画像6

(かつて集めたビーズのような…世代の人しか分からない話)

その中から、数種類の塩を選び、味比べをしました。

塩の味わいにこんなにも違いがあるとは。

洋服を色や丈を選ぶ時や、素材感の違いで表情が変わるのと同じくらいわずかな違いが大きな違いであることに気づきました。

60種類の中から9種類を選んで今回は試食。

画像7

画像8

画像9

この9種類の塩の味を

粒の形状 塩味 質感で比べてみました。

①カリフラワーのオリーブオイル炒め|ジャムツダウス

画像10

これは、モンゴルの岩塩のジャムツダウスの塩と。
野菜の甘みと、塩の本来の甘みが混ざり合って一体感のある味わいに。甘みを引き出す塩としては最適です。

粒の形状 粉砕 

塩味 ★★★☆☆キレの良い酸味

質感 さらさら

神様の塩という意味のジャムツダウスの塩。程よい塩味と酸味で後味がすっきりしています。

色で表すとふんわりした柔らかさの中に切れ味があるカナリ色。こんな感じ。味もしっかりあって、濃い。

画像11

②青菜のオリーブオイル炒め|クリスタル岩塩

画像12

キリッとした切れ味のある味わい。青菜独特のえぐみを部分を隠してくれます。中華料理で使われる空芯菜や青梗菜などによく合いそうです。

粒の形状 粉砕 

塩味 ★★★☆☆後味が甘い

質感 さらさら

色でいうと「ペールブルー」優しい甘さと、さらさらの形状のイメージ。

画像13

③ごぼうのコンフィ|アラエアシーソルト

画像14

ごぼうの強い味にも負けない存在感をしっかり主張してくるアラエアシーソルト。この赤い塩はハワイの伝統料理に欠かせないハワイ産の海水塩だそうです。

南国の青い海から…と思いきや、アラエアはハワイ語で赤土という意味で、酸化鉄が豊富に含まれている赤土を長時間高温で煎ったものにハワイの海水塩を加えて精製した赤塩です。土に海水を加えているのでこんな色だったんですね!
ハワイでは古くから神への捧げものとして儀式やお清めに使われてきました。日々の調味料としても愛され、古くからポキやロミロミサーモンといったハワイアン料理に使われているそうです。
カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムなど85種類以上のミネラルが含まれています。

この日はごぼうをコンフィ(低温油でじっくり煮る)にして、その上にこの塩をつけて食べました。

粒の形状 立方体 

塩味 ★★★★☆しっかりした塩味と硫黄の香り

質感 さらさら

色は元々の塩の色でもあるこんなイメージ。

画像15

④春菊とりんごのサラダ|またいちの天日塩

画像16

藤田シェフらしい食材の組み合わせ。

春菊とりんご。美女と野獣のような野生感の溢れる春菊と華やかな香りが特徴のふじりんごを調和させてくれるのが、またいたちの天日塩

春菊は大人な苦味が特徴のすき焼きのお供くらいにしか思っていなかったのに、このサラダを食べたら「え…!春菊って爽やかな主役になれたんだね」と褒めずにはいられないほどこの”またいたちの天日塩”がいい仕事をしてくれます。華を添えるりんごの可憐さにも注目。

どれも美味しいのですが、この日一番の驚きと美味しさを体験できました。

粒の形状 粉砕 

塩味 ★★★☆☆甘みとまろやかな味わい

質感 さらさら

画像17

⑤⑥リゾット|百姓の塩 / 伊達のうま塩

画像18

このリゾットなんと、材料はお米と水だけ。

お米と水…お、おかゆ…?

いいえ、お粥ではなくリゾット。お米のリゾットの一口目の旨みが口いっぱいに広がっていく瞬間を幸せと言わずになんという!(大げさ)

百姓の塩は山口県の海水塩。杉樽で寝かせた塩でキリッとした絡みのある塩味。

粒の形状 凝集晶

塩味 ★★★★☆甘みとまろやかな味わい

質感 しっとり

色は真っ白。純白な素直さと強さがある感じ。

画像19

伊達のうま塩は宮城県の海水塩。2日間に詰めて仕上げる甘みが濃厚です。

粒の形状 凝集晶 

塩味 ★★★☆☆うま味が強い

質感 しっとり

色はパステルピンクと紫のグラデーション。甘いけどそれだけではない深みがあります。

画像20

シェフのリゾットを作る際のフライパンのあおりを公開!

鍋肌のお米を混ぜながら…

画像21

画像22

画像23

画像24

(もちろん一粒も落ちていない!)


⑦アスパラガスのオリーブオイル炒め|ヒマラヤ山麗の岩塩

画像25

ヒマラヤ山麗の岩塩

粒の形状 粉砕 

塩味 ★★☆☆☆うま味が強い

質感 さらさら

岩塩=しょっぱいというイメージでしたがこれは口の中でゆっくりと溶けていく岩塩の優しい甘さとアスパラガスの相性がバッチリ。葉野菜よりも焼いたピーマンやパプリカにも合いそうな塩でした。こんな肌色で優しい包容力があるイメージ。

画像26

⑧にんじんのオリーブオイル炒め|インカの天日塩

画像27

画像28

にんじんをシンプルに味わうには地下海水塩のインカの天日塩

インカの天日塩とは世界遺産として知られるマチュピチュに程近いアンデスの山中。600年以上の間大切に守り続けられてきた手法で作られたこの塩を乾燥させて作られたのが、「インカの塩」です。カリウムやマグネシウムなどの「にがり」成分が少なく、エグミが少ないまろやかな塩味が特徴です。

粒の形状 粉砕 

塩味 ★★★☆☆うま味が強い

質感 さらさら

にんじんの味を引き立ててくれるまろやかな味。角が立つことなく、味がぼやける訳でもないバランスのいい味わいでした。にんじんに引っ張られてる感があるけど、オレンジのイメージ。はっきりしていてまとめてくれる、元気になれる味でした。

画像29

⑨きのこのオリーブオイル炒め|珠洲の藻塩 / 塩田村の塩

画像30

珠洲の藻塩

古代の製塩に使われていた海藻・ホンダワラの旨み成分を盛り込み、炊き上げました。
対馬海流と千島海流が交わる海に接する能登半島。
その恵みのきれいな海水と海藻を使用。

粒の形状 凝集晶 

塩味 ★★★☆☆苦味が強い

質感 しっとり

画像31

塩田村の塩

奥能登の揚げ浜塩。古代の製塩に使われていた海藻・ホンダワラの旨み成分を盛り込み、炊き上げました。
対馬海流と千島海流が交わる海に接する能登半島。
その恵みのきれいな海水と海藻を使用。

粒の形状 凝集晶 

塩味 ★★★☆☆甘みと苦味が強い

質感 しっとり

画像32

キノコをじっくりオリーブオイルで炒めたものに塩を合わせました。

どちらも能登の塩なんですが、旨味が非常に強い味わいです。

それぞれの味の好みや味の感じ方は人それぞれ。
この組み合わせが一番!ということに答えはなく、
一人一人の感じ方で良いものです。
中には、満月と新月の海水の違いだけで、味が違う塩もありました。

画像33

画像34

これらの食べ比べをしたことで、
それぞれの塩の違いや奥深さを知ることで、素材の本来の美味しさや風味が引き立つ素晴らしさを学ぶことができました。

画像35

画像36

そして、味や成分の違いが生まれるのは自然の産物だからこそ。
それぞれの自然の素晴らしさ、大切さを再認識することができました。

藤田シェフ:僕自身、塩と食材の相性を舌で実感してから「今までの自分の料理に足りなかったのは、塩の相性だったんだ」という事がわかりました。塩は本当に無限に個性があって、学んだ上で味比べをして初めて、その可能性に気づけます。例えば、秋刀魚にはみかんでもレモンでもなく、すだちやかぼすが合うように、似ているようで、大きく変わります。これから料理を始める人も、もっと深めたい人も、必ず役に立つ知識です。僕も引き続き、塩と料理のバリエーションを広げていきたいと思います。
Akiko:とっても素敵な時間でした〜!塩はシンプルだけど、奥が深くて、素材と組み合わせると、とってもクリエイティブなものが出来るんだと思いました。シェフ達のように多くの種類を使い分けするのは少し時間がかかりそうですが、笑 自分がよく作る料理に合うお塩を数種類、色々試しながら探してみたいと思います♩
Lisa:塩の味の表現がそれぞれみんな違ったことが面白かったです。私は春菊に合わせた「またいちの塩」が一番好きな味でした!日本は海に囲まれているので国産の美味しい塩が豊富にあることも嬉しいな〜と思います。塩の会や醤油の会など調味料の勉強会はまた開催したいです!

これらの学びを、FOOD STORYケータリングメニュー開発など、様々なことを通じて皆さんにお届けします。

画像37

最後に、藤田シェフ、場所を提供してくださった市川さん、本当にありがとうございました!

記事を読んでコメントやご質問等あればお気軽にください♪

written by Akiko Kajikawa&Lisa Obatake







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?