枝豆の蒸し焼

同じものなのに、ちょっと違えてやるだけで見た目や味が変わるものって、ある。麻婆豆腐から豆板醤を抜いて優しい肉あんかけ豆腐に仕立てたり、卵豆腐にわさびではなくて辛子をちょんと乗せてみたり。そんな一工夫(というよりちょっとしたいたずら)が目先を変えて楽しい時間を連れてきてくれる。

先日読んでいたマンガのなかで「枝豆は茹でるのではなく、少量の水と一緒にフライパンで蒸し焼きにするとよい」というエピソードが出てきた。いつかやろうと思っていて、とはいえそこまで強い思い入れもなかったレシピなのでついつい忘れがちになる。結局、今年の夏の間にはやらずじまいかな・・・と思っていたら、スーパーで見かけた名残の枝豆(生)。これはやるしかないでしょう。

ボールに枝豆を広げて、粗塩をたっぷり振って、両手で拝むように、祈るように枝豆の鞘をこすり合わせる。そうやってうぶ毛をのぞいて、フライパンにちょっとの水と一緒に投入。蓋をして、待つのはおよそ5分くらい。

フライパンの中は泡ブクだらけ、あーしまったなー、これだとアクが出ちゃってるよなー…とか思いつつ、他の料理の下ごしらえをしつつ。時間になって蓋を開けたら、いつもとは違う枝豆の匂い。

なんだろう、いつもより甘い匂い。ひとくち食べてみると、茹でたてのちょっと硬い&ぷりっとした食感ではなく、ホクホクとした味わい。栗のような、芋のような、そんな食感。

合わせるのは、いつもの麦焼酎のロック。手軽でおいしい、9月の日曜日。

(620字/10分)

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