シュナムルさんの理系エピソードについて

この記事はとても長いです。書き慣れていないので読みにくいかと思います。すみません。有料設定の部分が最後にありますが、あくまでただのおまけです。本文はすべて無料で読めます。

はじめに

ここ数日、シュナムルさん (https://twitter.com/chounamoul)のことがとても気になっています。なぜなのか、自分でもあまりよくわかりません。しかしなぜだか気になって仕方がないので特に興味のあるところを少し調べてみました。せっかく調べたのに明日には忘れているような気がして勿体無いと感じ、twitterとnoteのアカウントを作って記録しておくことにしました。

きっかけは暇な空白さんのはてなダイアリーの記事に始まる一連の研究で、noteに移ってからのものも含めて順番に読みました。あまりに面白くて一気に読んでしまい寝不足になりました。

これからいろいろと調べてみたことを書き綴っていきますが、私個人としてはシュナムルさんに恨みつらみがあるというわけではなく、またシュナムルさんの主義主張やSNSにおける振る舞いにも強く思うところはありません。それでも気になってしまうのは不思議な魅力と言ってもいいでしょう。

概要

このnote記事では、京都大学 工学研究科 物理工学研究科を修了したと自称するシュナムルさんの理系らしい側面を収集して、先行研究を参照しつつ検証・検討してみたいと思います。

前提の説明:シュナムルさんの学歴について


シュナムルさん https://twitter.com/chounamoul はtwitterアカウントとして3万人以上のフォロワーを擁する人物で、本名や所属などは明らかになっていません。しかし経歴として京都大学 工学部の物理工学科に2002年に入学し、続けて工学研究科 物理工学専攻に進学して修士号を取得したことが主張されています。修士で卒業されたあとは文系に分類される職種で働いているようです。

上記投稿から、2002年に工学部の物理工学科に入学されたことがわかります。

学部4年、修士2年で合計6年在学されたことがわかります。

修了後は文系就職したことがわかります。

修士課程に2年間在学しただけでは修士号を取得したのかわかりませんが、ここでは修士号を持っていることが明らかにされています。

「体系的な専門知」をどう評価するかによって見方の分かれるところですが、修士号を取得するためには修士学位論文を書いて審査に合格する必要があり、少なくともある研究対象に関してはかなり詳しくなり、自然科学の研究であれば何らかの新規性が認められる結果を残すことが求められます。

問題設定:これから明らかにしたいこと

ここでは、主に次の三つのテーマについて考えてみます。
1. シュナムルさんの学歴に関する主張に妥当性はあるか?
2. シュナムルさんの専門分野は何か?
3. シュナムルさんの研究業績を発見できるか?

シュナムルさんの学歴について

先行研究の再検討

いきなりですが、この一つ目の論点に関しては先行研究でかなりのことがわかっています。暇な空白さんのはてな記事 

とnote記事

を読めば、少なくともシュナムルさんの主張がすべて正しいわけではないことがわかります。「京大一族」としての自分の家族・親族に言及する投稿で自身をそこに含めていない不自然と、履修した講義で使われたと主張する教科書の出版が受講したはずの時期より後、という矛盾が指摘されています。また、これ以外にも

という投稿があり、既に議論されていることですが京大の場合は学籍番号の記入は必須ではないようです。

先行研究では居住地の居住時期の関係もかなり整理されていて、書かれていることをそのまま読んでいくと京都に六年間いたとは思えません。

一方、それはそれとして、仮に京都大学に行っていなかったとしてもどこか別の大学で何かを学んでいた可能性は残ります。経歴がほとんど全て偽りである可能性もありますが、部分的に真実が混ざっている見込みもそれなりにあるかと思います。そのあたりを明らかにするためにもう少し具体的な理系っぽい投稿を見ていきましょう。

私見


これは単なる私の感想ですが、教科書の出版年に関する矛盾はどちらかというとマイナーで、うっかり設定の遵守が甘くなる何気ない投稿における違和感の方が判断材料として強い気がします。時系列の整合性という"エビデンス"を重視せず印象に重きを置くのは不思議に感じられるかもしれませんが、先行研究で明らかになっているようにシュナムルさんの主張する時系列には怪しいところが多くあります。この原因として考えられるのは、
1. 特定回避のために意図的に事実と異なる情報を出した
2. 矛盾を生じるとわかってはいたが、より大きな問題が露見するのを恐れて事実と異なる情報を出した
3. 今回出した情報は真だが、それと矛盾する情報の方が偽
4. 単に間違えた
あたりが思い浮かびます。本件に関して言えば、
・「熱および物質移動」を3年前期に履修したが単位を落とし、翌年再履修した。再履修の間に(今度こそ単位が取れないと進級できないなど真面目に取り組む必要を感じて)教科書を購入した
・「熱および物質移動」を3年前期に履修したが、それはそれとしてこの分野に興味を持ったので(4年生の卒業研究で関連するテーマを選んだなど必要が生じて)後から教科書を購入した。
というような語られていない部分があって、前者は落単を不名誉に感じたため、後者はそこから卒研の内容や所属した研究室が特定されることを恐れたために触れなかったので矛盾だけが残った、というような妄想もできなくはないです。

具体的に何を学んでいたのか

大学院での専門は?

まず、専門分野は材料工学であることがわかっています。

京大工学研究科の材料工学専攻には2022年4月1日の時点では6つの講座があり、12の分野に分かれています(寄附講座はシュナムルさん在学時に同じものがあったとは考えにくいので省きました)。原理的には、2007年度に合格した修士学位論文に片端から当たっていけば、(シュナムルさんの主張が真実だとして)シュナムルさんの修論を見つけることができるはずです。

とはいえ、当該年度に出される修論は数十はあると思われ、一つ一つ調べていくのは難しいでしょう。博士論文の場合はデータベースがありますが、修士論文は研究科の図書室に行かないと読めそうにありません。研究室によっては公開しているかもしれないのですが、簡単に調べてみると公開していない研究室もあったのでウェブ上で調査を完結するのは不可能です。

卒業論文や修士論文を書いた?

そこで、見方を少し変えて、シュナムルさんの投稿を検索してみることにします。キーワードは卒論、修論、研究、論文です。しかしながら、これらのキーワードではシュナムルさん自身の研究に関する投稿は見つかりませんでした。唯一卒論でヒットしたのは

これだけで、卒論を書いたことがあるような素振りは感じられなくもないです。修論に至ってはひとつもヒットしませんでした。大学院に進学したからといって皆が研究を楽しめるわけではなく、中には思い出したくないような辛い思い出になっている人もいるかと思います。シュナムルさんは卒業後にそれまでの専攻とは全く異なる仕事に就いているようなので、あまり自分の研究内容を振り返ることはないのかもしれません。

論文、研究といったキーワードでもそれらしいものは見つかりませんでした。材料工学分野ならば修士時代の研究成果でも学術誌に掲載される論文になることがしばしばあるかと思います。しかしそういった形跡は見当たりません。

学会に参加した?

論文化まで至らずとも、何かしらの学会発表はこなしていると期待されます。これも学会などいくつかのキーワードで調べましたがダメでした。どうも調べ方を改める必要がありそうです。

実験した?

純粋な理論研究を除けば、材料科学の研究に実験は不可欠かと思えます。そこでシュナムルさんの投稿で実験というキーワードを含むものを検索してみました。しかし自身の研究に関わるような投稿は見つかりませんでした。代わりに出てくるのは後から言及する分子モーターの話や、

妻の話、

チンダル現象の話などです。

ここまでのまとめ

これまでの調査では、院生時代の出来事についてはわずかな言及さえも見つかりませんでした。可能性としては
1. そもそも大学院に行っていない
2. 何らかの理由で書きたくない、書きたいと思えるようなことがない
3. 偶然
あたりが思い浮かびます。とはいえ、後述する特定分野への強い関心を思うと3は考えにくい気がします。2であれば、他のものごとへの言及の仕方からすると研究室やアカデミアへのネガディブな投稿がありそうなものですが、調べる限り自身の経験に拠っていると思わしきそれはありませんでした。

学部では何を学んだ?

さらに目先を変えて学部生時代のことを調べてみます。まずはノートの写真があります。

左上は近代史?、右上は量子力学?、左下は物性物理、右下も物性物理でしょうか。上二枚は密度が高めで、特に右上は式番号がついているので教科書を自分で読みながら取ったノートかと思います。下二枚は密度が低く、余白に眠いと書いてあるので講義中のノートのようです。私はまったくの素人なのでよくわかりませんが、書かれているフェルミ準位の定義は"数学的な"ものではなさそうです(数式は使うかもしれないが)。とすると教科書を写経したのではなく、講義で聞いた説明を自分なりに理解してメモにしようとしたのかもしれません。

蔵書からわかること

次に、本棚の写真がいくつかあります。

見た感じ、物理工学科っぽいのは『新しい物性物理』、『低次元半導体の物理』、『熱学・統計力学』、『ファインマン物理学』、『物質の対称性と群論』、『材料強度学』でしょうか。出版年がちょっと気になったものとしては『低次元半導体の物理』がありますが、これは2004年なので学部三回生のころに相当します。『新しい物性物理』は2005年で四回生相当ですが、ここで目に付く最新の物理本がブルーバックスなのは違和感がなくもないものの有り得なくもないです(内容の易しい啓蒙書だとしても分野の理解には役立つため)。

一方こちらはだいぶ様子が違います。本棚というよりは机の上のようですが、物理っぽい本が見当たりません。WILEYの本は下記投稿で言及されている『Molecular Motors』のようです。その右にあるなんとかMotorsも分子モーター関係の本と思われます。

この本は2006年出版なのでシュナムルさんはM1相当となり、"大学生"を学部生と解釈すると説明とは矛盾しますが大学院生も含めて大学生と思えば無矛盾です。机の上に置いてある印刷された論文みたいなものの詳細はわかりませんが、見出しにEconomyと読める文字列があるので物理の論文や教科書ではなさそうです。

2022年7月24日追記:読者の方からご指摘いただき、『Molecular Motors 』には電子版と書籍版があり、前者が2006年出版だが後者は2003年出版とわかりました。ご指摘くださった方ありがとうございます。なので当該書籍の存在は出版年と整合します。https://www.wiley.com/en-us/Molecular+Motors-p-9783527601509

こちらは2018年9月の投稿なのでかなり現在に近づいています。一方でシュナムルさんはかなり昔の写真を今撮ったかのように投稿することがあるので断定はできません。一枚目の最下段にいくつか物理と数学の本があります。ここにある『熱学思想の史的展開』は次の投稿で言及されているものかもしれません。

と思ったのですが、この本はハードカバーが1987年出版、三分冊の文庫は2008年出版なので後者の場合はシュナムルさん卒業後の本になります。しかし、これも学部入りたての頃にハードカバーを借りてその後文庫本で買い直したということも考えられなくもありません。少し調べてみると全面的に改稿された新しい内容のようです。また、これは文庫本用の棚とのことなので、別の本棚にハードカバーがあるのかもしれません。

大学時代と明示的に説明されている二つの書棚では、いずれも弁理士試験の参考書がありました。学部生時代から弁理士の勉強をしていた、けれども大学院に進んで材料工学を専攻した、ということでしょうか。シュナムルさんの投稿を検索する限りでは弁理士に関する言及は一切ありません。ちょっと不思議なところです。

本当に興味があるのは

分子モーターへの言及

これまでに何度か登場していますが、シュナムルさんは分子モーターに強い関心を寄せています。

わりにピンポイントな言及が卒業後かなりの年数を経ても出てくるので、相当に興味があるのだと思います。

熱・統計力学

本棚の節でもいくつか出てきましたが、シュナムルさんの蔵書のうち専門的なものは多くが熱・統計力学に関係しています。また、シュナムルさんが多少の計算を伴う考察めいたことを投稿しているのはDr. STONEに関するこれ

と自動車のエネルギー効率に関するこれ

に限られます。

わりと最近も非平衡統計力学の本を読んでいました。

熱力学と統計力学は地続きなので、まとめてしまうとメジャーな学術書への言及の大半はこの分野です(事の発端になった?『熱・物質の移動』もそう)。

統計力学が材料工学とどれくらい関係するか?は私の知識では判断しかねるところですが、おそらく統計力学と関係するのは物性物理で、たとえば材料工学のテーマの一つである材料の強度は物性というよりも連続体の力学の範疇かと思います。

妻は職業研究者

関連して、シュナムルさんの妻とされる人物は職業研究者であるとされています。妻関係で研究に関係ありそうな投稿をいくつか見てみます。

このあたりの投稿から、妻の専門は生命科学、特に神経生理学あたりと読めます。

多少気になる点として、少し前に紹介した投稿で言及されている柳田先生は理研神戸の生命システム研究センターの長でした。しかし上記投稿で言及されている五重塔は理研和光にあるものだと思われますのでここはあまり関係がないかもしれません。シュナムルさんは和光に縁があることがわかっていますので、研究所の一般公開などで目にする機会があったものと思われます。

私はこのあたりのことが何もわかっていないので適当にWikipediaなどで調べました。フィラメントとは生体内で筋繊維や細胞骨格を形成する細長いタンパク質の総称だそうです。例えば、筋繊維はアクチンフィラメントとミオシンフィラメントで構成されています。細胞骨格を形成するフィラメントはアクチンフィラメントとミオシンフィラメントの中間の太さを持つため中間径フィラメントと呼ばれるそうです。弘前大学畜産学研究室のWebページ http://nature.cc.hirosaki-u.ac.jp/lab/3/animsci/text_id/Cytoskeleton.html がわかりやすい気がするのですが、シュナムルさんが大きな関心を寄せるアクチン、ミオシンの分子モーターとかなり関係が深いようです。

学術誌に対する言及

そのほか、多少気になる投稿としては学術論文誌に関するものがあります。

Chemistry Lettersは日本化学会の英文誌で、確かにインパクトファクターは書かれているくらいの数字です。しかしいくらなんでも"トンデモ糞論文"は査読を通らないと思われます。気になるところとしては、シュナムルさんが専門としていた材料科学系の雑誌をあえて挙げずに自身の分野とも妻の分野とも異なるものを出したところでしょうか。

PNASは米国科学アカデミー紀要のことで、インパクトファクター10くらいの有名な雑誌です。分野を限定せずいろいろな研究内容の論文を掲載するので、NatureやScienceのようなところがあります。生命科学系の印象が強いですが物性物理の論文もたくさん載っています。

その他の些細なこと

これはどちらかというとシュナムルさんが学生だった頃に抱いた思いではないかと予測します。

また、ひとつひとつは挙げませんが、その他のシュナムルさんによる自然科学への言及は"空が青い理由"、"一般相対性理論は人類の知性が獲得した最大の成果"、"量子力学はなんか不思議"のように一般教養の範疇に収まっています(具体的な計算を必要とせず、あくまでお話として理解できるという意味で)。

まとめ

長々と色々書きましたが、結局先行研究を大きく超えることは叶わず、決定的な知見は得られませんでした。残念です。しかしながら、シュナムルさんの興味ある分野や知識の水準、経験のあることやないことについてなんとなくおぼろげな輪郭が見えてきたように思います。当然のことですが、シュナムルさんが全ての経験を投稿しており、投稿で言及されていないからといってその事実が否定される、というわけではありません。ここでは、あくまでシュナムルさんの強い自己顕示欲、特に私生活や自身の強者ぶりを知らしめたいという願望を先に読み取り、それを前提とした話しをしています。

ここで私から見た実際のところの予想を示してみます。括弧内の数字は勘でつけた自信度みたいなものです。

1. シュナムルさんが京都大学 物理工学科の学生であったことはない (95%)
2. シュナムルさんが一時期理系を志したのは本当。おそらく京大でも早慶でもなく、もう少し入試の易しい大学に入って何かを勉強した (80%)
3. 実験はしていない。何か研究めいたことをしたとして、計算のみで完結するタイプの理論研究、もしくは実験も含むレビューだけで卒論を書いたのではないか (90%)
4. 仮に大学で理系の学問を学んだとしても、大学院には進んでいない。論文を書いたことがなく、学会に参加したことがない (90%)
6. 材料工学の研究はしていない (90%)
5. 熱力学、統計力学に興味がある。また、分子モーターに興味がある。これらのいずれかに関する内容で卒業研究に取り組んだかもしれない (70%)
6. 職業研究者の妻は実在しない。妻の設定は和光の理研を見学したときに得た知見がベース (95%)

結論は以下の通りです。
1. シュナムルさんの学歴に関する主張に妥当性はあるか?:ない。しかし理系の学部に入って何かを学んだ可能性はけっこうある。
2. シュナムルさんの専門分野は何か?:専門分野はない。強いて言えば熱力学と分子モーターに興味がある。
3. シュナムルさんの研究業績を発見できるか?:論文、学会発表はない。もしかしたら卒業論文は世の中のどこかにあるかもしれない。修士論文はない。

ここで本文は終わり、残りはおまけです。読んでくださりありがとうございました。

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