ロールプレイング物語工学(未完成)

思いつきホカホカの物語工学論です。思いついただけの走り書きなので未検証。
ロールプレイングゲーム、または小説をつくる方向け。
実用性については未検証ですが、近いうちにこの手法で物語を構築してみたいと思っています。

ベースとなる考え方

制作者自身の視点を、「シナリオマスター」と「ロールアクター」の2つに分けます。頭の中に別々の意識を作るイメージです。

シナリオマスターは神の視点による「障害・カタルシスの配置」
ロールアクターはキャラクターの視点による「目的意識・固有能力の行使」

これらを別々の意識によって実行することで、物語を構築していきます。
さらに、マスター及びアクターの利己的な判断で世界観が破綻してしまわないよう、彼らを監視し最終的な決定を下す三つ目の意識「アドミニストレーター」も用意しましょう。

これらは、TRPGのゲーム構造自体を創作手法として解釈したものになります。それぞれ、ゲームマスター、プレイヤー、ルールブックに相当します。
ただしTRPGを遊ぶときとは違い、最後まで物語を改良していくことが許されています。

それでは、それぞれの視点について掘り下げていきます。

サイド:シナリオマスター

シナリオマスターは、物語の流れを想像し、運命を提示する役割を持つ。
ただし、物語の進行に対する最終的な決定権は持たない。
シナリオマスターは劇中に存在してはいけない。
そして、創造者ではなく、想像者でなければならない。

○カタルシスの配置
シナリオマスターの最大の使命は、物語を魅力的に描き切ることだ。
結末を操ることができない以上、彼らはどうにかして「盛り上がりそうな場面」をデザインする必要がある。
シナリオマスターは決してロールアクターの敵ではなく、時には味方をすることもある。

○障害の配置
シナリオマスターの主な役割が、ロールアクターの往く先々に障害を課すことである。
障害は闇雲に配置するのではなく、各アクターの「目的を阻害」し、また「固有能力を引き出す」ことが求められる。
ただし、障害の乗り越え方を押し付けることはできず、最終的にはアクター自身が判断を下す。
一方で、アクターの突飛な判断に対して、新たな障害を与えることもできる。

○ハンドアウトの決定
シナリオマスターはロールアクターの結末を決めることはできないが、その「生い立ち」を決めることができる。
ロールアクターにそれぞれの過去と社会的立場を課し、その自己形成を促す役割を持つ。
ただしハンドアウトに書かれる事柄は観測的事実のみであり、アクター自身の内面を記述することはできない。

○シチュエーションの操作
シナリオマスターは物語の展開を決めることはできないが、後からその「状況を修正する」権利が与えられる。
物語がカタルシスを迎えそうになかったとき、物語の前提にテコを入れ、改めて仕切り直すことができる。
ただし、この操作の過度な行使は厳禁であり、適用が許される度合いには注意しなければならない。

サイド:ロールアクター

ロールアクターは、物語の世界に身を投じ、自らの手で運命に立ち向かっていく役割を持つ。
物語の俯瞰的全貌を知ることは許されず、それぞれの目を通して世界を認識する。
ロールアクターは劇中に複数存在し、それぞれが異なる意志を持って行動する。

○思考と声
ロールアクターを形成する重要な情報として、彼らの「頭の中」を知る必要がある。
アクターたちは自身が見聞きしたこと、過去にあった経験、自らの価値観と望みをもとに、常日頃から考え事をしている。
セリフだけではない、そうした脳内を言葉として表し、より彼ら自身の声に聞き耳を立てることが第一である。

○目的意識
ロールアクターが物語に関わるとき、彼らは常に何らかの「意味」をもって行動する。
特に何らかの障害が目の前に現れたとき、彼らは必ずしもそれを解決するために奮闘するわけではない。
常に彼らの本当の意志に立ち、望まない問題からは身を遠ざけることが肝心である。

○固有の能力
ロールアクターが物語を通して活躍するために、彼ら一人ひとりには「誰よりも秀でた能力」が与えられる。
しばしば彼らはそうした自身の強みを意識して日々を過ごし、自身の身の置き方、心の拠り所にさえすることもある。
こうした能力はけっして一つとは限らず、いくつもの強みを知る者ほど強大な存在感を示す。

○運命
ロールアクターは自らの意思を持って障害の突破にあたるが、決められた以上の能力を行使することはできない。
時には実力以上の結果を発揮することもあるが、特に「挑戦的な行動は失敗する」ことが常である。
判断を誤り、より窮地に陥ってしまったとしても、決してアクター自身が俯瞰的全貌に関与することは許されない。

サイド:アドミニストレーター

アドミニストレーターは、物語の間違いを正し、暴走を防ぐ役割を持つ。
物語を魅力的に描くことには関与せず、物語の基礎が破綻しないように常に公平にジャッジを下す。
アドミニストレーターは劇中世界の物理法則そのものであり、この物語において唯一「ルール」を課す権利がある。
そして、あらゆる物事の「最終決定権」はアドミニストレーターが持つ。

○世界の法則
アドミニストレーターがルールを統制するためには、この物語世界を支配する「物理法則」を決めておく必要がある。
これは現実の物理法則をオーバーライドしてもよいし、全く新しい法則を埋め込んでもいい。
劇中で“何かよく分からない”しくみとされる概念でも、ベースとなる“非観測的事実”は構築しておく。
なお、物語を面白くするためであれば、シナリオマスターの要請によって法則を書き換えてもよい。
ただしこの法則は常に公平でなければならず、恣意的であってはならない。

--------

以上です。
よし、早速物語を作ってみよう!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?