9月の株価上昇は売り時?日経平均はさらに上昇するのか
9月上旬から世界的に株式市場が上昇基調にあります。短期間でここまで株価が上昇したからまた下落しそうだと考え、売却を検討されている方もいるでしょう。まずは簡単に直近の株価上昇の背景を整理した上で、今後の株式市場の見通しを見ていきます。
9月に株式相場が上昇した理由
世界的に株式市場が上昇した理由として、主には次の4つが要因として挙げられます。
・米中貿易協議に進展の兆しがあり、10月初旬の閣僚級協議での進展に期待が高まったこと
・米国景気が堅調であること
・ECBとFRBが金融緩和を実施、日銀も金融緩和姿勢を維持していること
・イギリスやイタリアでグローバルな政治リスクが後退したこと
今後の日本株市場にとってポジティブな4つの材料
足元の日本景気の状況を考えると、米中貿易摩擦による輸出や設備投資の減少で日本経済の成長がスローダウンしている点、10月1日からの消費増税で国内景気が冷え込みそうな点が懸念されます。しかし、日本の景気見通しを考える上では悪い材料ばかりではなく、次のような4つのプラス材料もあります。
1.新技術や産業分野への設備投資の増加
例えば、5Gサービスのスタートや新しい半導体製造技術の導入、自動運転の進化といった新しい技術や産業分野には次のような設備投資が始まっており経済にプラスの影響を与えることが想定されます。
5Gサービスへの投資
次世代通信規格「5G」の整備に、NTTドコモやKDDIなど通信6社の設備投資は2018年度の1兆3200億円から、2022年度には1兆5050億円まで拡大が見込まれています(出典:民間調査会社)。5Gの普及にあわせて、遠隔医療や自動運転など自動化技術の進展とともに、産業構造の変化を引き起こす可能性が考えられます。
半導体製造装置へ投資
国際半導体製造装置材料協会(SEMI)は、半導体製造装置への投資について2019年は前年比でマイナス成長となるものの、2020年は緩やかに回復し、2021年には過去最高額となる600億ドルに到達するとしています。
電動化や自動運転など次世代技術への投資
国内の自動車メーカー主要7社が計画する2020年3月期の研究開発費は、電動化や自動運転など次世代技術への対応で計3兆円を超え、過去最高となっています。
2.景気循環による回復期が近い
さらに注目したいのが、景気循環による自律的な景気回復への期待です。そもそも景気は上昇期間と下落期間を繰り返して循環するため、下落期間が続けば自然と上昇期間が到来します。
世界景気の代表的な先行指標であるOECD景気先行指数は、過去2回の景気の下落局面では平均して1年5カ月で底を打っています。今回は2017年12月から低下を始めており、すで1年8カ月経過しています。このOECD景気先行指数と連動して動いているのが、例えば日本の工作機械受注です。
日本の工作機械は海外への輸出が多いため、輸入国の景気の影響を受けやすいのですが、昨年の3月からほぼ1年半に及んで工作機械受注も減少しており(出典:一般社団法人日本工作機械工業会)、そろそろ更新需要が期待される時期になりました。IMFの2019年7月見通し(WEO)においても、世界経済の成長率は2019年は3.2%、2020年は3.5%に改善するとみています。ひとたび世界経済が回復を始めると、日本企業への需要が期待されるでしょう。
3.国内企業の自社株買いの増加
企業経営におけるROE(*1)重視の姿勢が定着したことや株主を軽視する経営者に対して積極的な提言を通じて企業価値の向上を狙う「物言う株主」の攻勢により、企業の余剰資金を株主に還元する動きが強まっていることで、2019年は国内企業の自社株買いが急増しています。
4月からの5カ月間で5兆円近くもの発行会社による自社株の買い付け枠が株主総会で決議されており、株式相場の下支え要因の1つとなるでしょう。
4.消費増税の負担増加に対する政府による対策
10月からの消費増税に対しては、増税前の一時的な駆け込み消費と増税の反動の可能性がありますが、政府はポイント還元政策や軽減税率を導入することを予定しており、中期的には内需企業にとっては懸念材料の緩和効果が期待されます。
ポイント還元政策とは、2019年10月1日〜2020年6月30日までの9カ月間、キャッシュレス決済時に消費者へ2%〜5%のポイントを還元する内容になっています。
軽減税率とは、「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」を対象に消費税率を8%に据え置きするという制度です。
日経平均株価は「2万4000円台」を目指す可能性もある?
では、日経平均株価は具体的にどのくらいの水準を目指すのでしょうか? 株価の割高・割安水準を示す株価収益率(PER)の指標を使って見ていきましょう。PERは、次の計算式で表すことができます。
PER=株価÷1株あたりの利益(EPS)
日経平均株価の予想PERは過去3年間12倍〜16倍のレンジで推移、その平均値は13.7倍となっています。
仮にPERを、現在の12.6倍と3年間の平均値の中間値13.2倍とし、今期予想EPSを1750円(*2)、来期5%増益(*3)として、下の計算式に基づいて計算すると次のようになります。
株価=PER×1株あたりの利益(EPS)
日経平均株価=13.2倍(PER)× 1750円(今期予想EPS)×増益効果5%
=2万4255円(1円以下切り捨て)
一般的に株式市場は将来の企業業績を織り込んで推移します。上記の仮定に従えば、来期の企業業績回復を見越して日経平均株価は2018年10月の高値水準「2万4000円台」を再度目指す可能性があり、今の日経平均株価が2万2048円(*4)であることを考えると、まだまだ投資を検討しても良い水準かと考えます。
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(注釈)
*1 ReturnOnEquityの略称で和訳は自己資本利益率。株主から集めた資金をどれくらい効率よく事業に回せているかを測る指標。
*2 各種データより株式会社FOLIOが推定(9月26日推定値)
*3 大手証券会社3社の予想平均値
*4 2019年9月26日終値
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