5年前の初連載の漫画を読み返す漫画家の話

自分の初連載を読み直した1日

自分の過去を思い出してのたうち回ることがある。何故あの時あんなことを言ったのか?何故あんなことをしたのか?恥でのたうち回り、自分が愚かと轟き叫ぶ。

逆に「あの時頑張ったな」と思う時がある。よく考えてみれば、頑張っていた。悪くなかった。そういう気持ちになる時がある。

昨日、とある理由で私は5年前に連載を開始した漫画「純情戦隊ヴァージニアス」を読み返すことにした。名前からもう恥ずかしい。人前で言えない。何が「純情戦隊」だ。このタイトルは、ネームの時に適当に決めた名前がそのまま通り、気がついたら正式名称になっていた名前である。なので、すごい恥ずかしい。連載が始まる前に連載漫画家が集まる交流会でペンネームと作品タイトルの描いた名札が配られたのだが、その時に「俺の漫画、純情戦隊ヴァージニアスってタイトルなんだ」と初めて知った。「純情戦隊ヴァージニアス」という適当に決めたタイトルと、「福岡太朗」という中学時代に適当につけたペンネームを掲げながら交流会に参加したのは今でも覚えている。名前は真剣に考えた方が良い。

話を戻すと、5年前に連載を開始した漫画を読み返した。

この作品です。

死ぬほど恥ずかしいと思ったが

案外面白かった……!!

死ぬほど恥ずかしかったが、4巻くらいから面白くなってきた。作者なので、内容はもう知ってるし、絵も昔なので下手だし、内容はラブコメなので身悶えするほどに恥ずかしいし、恥で最後まで読めないか?と、思いきやちゃんと読めました。やるじゃん!過去の自分。今過去の自分に肩パンしました。

正直、3巻まで甘々で「うう……読んでて恥ずかしい……俺がこれを描いたのか……キモオタの俺が……こんな甘々なものを!?」となりながら読んだのだが、4巻あたりから登場人物が増えてきて妙な勢いが生まれて、変なことが起こり続けて「面白いじゃん!」ってなりました。絵も3巻あったりから安定する。良かった。あと、作者以外の人が読んだら多分3巻までも面白いと思います!1〜3巻が主人公とヒロインのラブコメ漫画で、4〜5巻が変なやつらの群像劇になってたと思います。多分。

忘れていた自分の描き方

読んでみて思ったのは、背景を描けないなりに描いてたし、ところどころにパロディ描写があったりして「こいつ、楽しんで描いてるな」という感じが強かったです。舐めてました。過去の自分を。楽しんで描いている。変なパロディを入れて「気づくかな?」ってなってたり、可愛いキャラを頑張って可愛く描こうとしている。この頃、映画が好きで「マッハ!」や「トムヤムクン」や「マッハ無限大」によく似た映画をキャラが見てたし、モブキャラがキスをしているのを目撃しているシーンではモブキャラがスパイダーマンみたいに彼氏が逆さまでキスしてたし、そういう遊びとか楽しみが沢山描けている。

思えば、ジャンプ+での連載中はコメント欄をよく読み込んでて、コメント欄の反応を見て内容を決めるといったライブ感で描いていた。平成ライダーと同じです。平成ライダーは視聴者の反応見てラスボスとか決めるみたいなので。純情戦隊ヴァージニアスは私なりの平成ライダーかもしれない。戦隊物パロディなのに。

漫画や創作はコミュニケーションだと思っているので、これは強い。コメントを読みながら「こういうのはどう?」「こういうパロディはわかる?」という感じで描いていたのだが、これは読者と作者のコミュニケーションだ。最近はこういうコミュニケーションをする気持ちを忘れていたかもしれない。

あと、創作についての姿勢について描かれた漫画でめちゃくちゃ好きな漫画がある。中島敦支先生の描いた「モルモットの神絵師」だ。最高の漫画。この記事とは関係ないのだが思い出したので紹介したくなった。読んでほしい。

好きな物を題材にした

私はニチアサのスーパーヒーロータイムが好きだ。スーパー戦隊と仮面ライダーは沢山見ている。なので、戦隊物パロディをするときも「戦隊物」という文脈に落とし込んで作品作りをすることができた。追加戦士が出てきたり、ラスボスが力を取り込んでパワーアップしたり、そういうところはかなり意識した。いや、でも……意識したのはそこら辺くらいかな?でも、かなり意識はしました。

思えば、かなり好きなコンテンツのパロディをしたのが良かったのかもしれない。私よりも深い愛を持っている人は沢山いるが、私なりに戦隊物は大好きだ。ゼンカイジャーとかルパパトとか大好き。カーレンジャーも好き。だから、そのパロディ元の良さを自分なりに分かっていたので、良さをお借りすることができたのかもしれない。

やはり、好きなものを題材にして描くべきなのだろう。

結局のところこういう凡庸な意見に落ち着くが、やはり好きなものを題材にするのは強い。好きなところが分かるので、それを伝えることができる。好きなものを伝えることは創作の基本だと思う。なので、好きな物を題材にして描くのは強い。

かなり楽しんで描いた漫画

思い返せば純情戦隊ヴァージニアスは私がかなり楽しんで描いた漫画だった。そういうことが分かったので、読み返してかなり良かった。自分の漫画を褒めるのはなんだか変な感じだが、5年前の自分なんてもう他人だし、褒めても良いだろ。あいつ、楽しんで描いてたよ。

だから、今の私も5年前の私のように楽しんで漫画を描けたら良いと思う。目の前にいる人を驚かせたり、笑わせたり、そういうことを考えて描こうと思う。今の自分は大勢の人にどうウケるか?どう人気が出るか?どうやったらネームが通るか?みたいなことを考えて描いていた。コミュニケーションをとって好きな物を伝えるような描き方とは少し違った。がんばります。


今日は終わりです。

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