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2022年9月16日新型コロナウイルス感染症対策分科会での発言

特別な疾病としての位置付けをいつまで続けるのか

大竹です。私のコメントは、現在のような新型コロナを特別な疾病として位置付ける政策をいつまで続けるのかを検討すべきではないか、というものです。資料1の最後のページ(11ページ)にあるように、第7波では第6波以上に新型コロナの重症化率と死亡率が減少しています。しかも、死因が直接新型コロナでないものが5割になっています。
 参考資料11の基本的対処方針の4ページ目に「令和4年3月から4月までに診断された人においては、重症化する人の割合は50 歳代以下で0.03%、60 歳代以上で1.50%、死亡する人の割合は、50 歳代以下で0.01%、60 歳代以上で1.13%となっている。季節性インフルエンザの国内における致死率は50 歳代以下で0.01%、60歳代以上で0.55%と報告されており、新型コロナウイルス感染症は、季節性インフルエンザにかかった場合に比して、60 歳代以上では致死率が相当程度高く、国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある。ただし、オミクロン株が流行の主体であり、重症化する割合や死亡する割合は以前と比べ低下している。」という表現があります。

第7波の重症化率・致死率


参考資料1−4の大阪府のデータから第7波の致死率を計算すると、50歳代以下で0.004%、60歳代以上では0.475%と8月21日時点ではありますが、季節性インフルエンザよりも低くなっています。なお、重症化率は50歳代以下で0.009%、60歳代以上で0.141%となっています。致死率に関してはまだ上昇する可能性はありますが、例えば東京大学の仲田さんのグループの推定によれば、東京都のデータだと9月中旬にはある程度収束しており60歳代以上致死率は0.54%です。9月14日のアドバイザリーボードに提出された西浦先生の資料でも、統計的に補正したリアルタイムの死亡率推定でも、第7波の死亡率は第6波よりも大きく低下していることが報告されています。

特別な疾病として対応する合理性は?


このような状況では、新型コロナ感染症を特別な疾病として医療、保健と体制が対応し、国民に様々な行動制限を課し続ける根拠はなくなってきたと解釈するのが自然だと思います。特別な対応をすることで、逆に医療の逼迫が発生したという側面もあると思います。もちろん、今後の変異株で対応を変える必要があるというのは理解できますが、ワクチン接種や自然感染の結果、第7波の変異株は現行法が根拠とする特別な対応をすべきという感染症の定義に入らなくなってきたと考えられます。

今後の変異株の可能性


今後、特別な対応が必要になる変異株が出現した際に、それへの対応を素早くできるように仕組みを作ることは必要です。しかし、それはどのような新型の感染症に対しても同じです。現在の変異株の危険性が高いとは言えなくなっている状況で、医療、保健、国民に特別な対応を課することの合理性はあまりなくなってきていると思います。少なくとも、今後どのようになれば、現在のような体制を解除できるのか、という見通しを立てるべきです。いつまでも、必要性が低下しているのに多くの人材と多額の金額を新型コロナ対策に振り向け、社会経済活動に制限を続けていると、国民の負担は新型コロナ感染症の直接の被害よりもはるかに大きくなります。

新型コロナ感染症・感染対策と社会経済活動


特別な疾病として対策を続けることの社会経済的な負担を考えるべき資料として、参考資料12に新型コロナ感染症および感染対策と社会経済活動の間にどのような関連があったかをまとめています。経済活動は大きく低下し、まだその影響から回復していません。婚姻件数や出生数もトレンドよりも減少しています。自殺も増えましたし、教育や子供の健康も悪化しました。水際対策や感染者の隔離期間の設定でも社会経済活動は大きなマイナスの影響を受けました。社会経済活動の活性化は感染拡大のリスクを伴うのは当然ですが、重症化リスクが低い感染症の場合に、自宅療養期間・濃厚接触者の制限、水際対策、イベントなどの社会経済活動に制限を加え続けるべきか再検討すべきです。他の多くの疾病のように、自主的な感染対策に移行すべきではないでしょうか。

全数把握のあり方関する混乱


全数把握のあり方に関する混乱は、感染状況を計測することと、感染者の隔離による感染抑制の二つの目的が、混在していたことに問題があると思います。重症化率が低いが、感染力が強い感染症の際に、感染者の隔離をすることが事実上困難になってきていて、それを行うことの社会的負担が大きいのであれば、感染者隔離という行動制限のための全数把握はやめて、自主的な感染対策に移行するというのが自然です。一方、感染状況を把握するためであれば、全数把握ではなく定点観測をすべきです。また、免疫獲得の状況をチェックするために、健康診断などの機会を通じて抗体検査を行うということが感染状況を予測する上では有効ではないでしょうか。

コミュニケーションのあり方


政策を変更するにあたって、どのような情報が必要なのかを政府側から明らかにしてもらって、それを政府でも作っていくことが必要ではないでしょうか。自宅療養期間の変更についても、医学的な感染性の情報だけでなく、「重症化リスクが低下したため、感染拡大のリスクは高まっても、社会経済活動への悪影響を緩和するために自宅療養期間を短縮することとした」というような説明が必要ですし、そのための情報も必要だと思います。感染が広がって重症者はどの程度増えるか、一方、社会経済活動を活性化することでどの程度の人たちの命が救えるのか、という試算を示していくことも重要だと思います。

2022年9月16日新型コロナウイルス感染症対策分科会資料

参考資料1−1〜1−2
参考資料1−3〜8
参考資料9〜15


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