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若月房恵
2021年8月21日 02:24
祖母のことから書こうと思う。 祖母が危篤だといわれ、二歳児を預けて駆け付けたとき、わたしはじぶんを認識してもらえるとは思わなかった。祖母は認知症にかかっていて、わたしは育児とコロナを言い訳に、自己紹介と曖昧な返事から始めなくてはいけない訪問を怠っていたからだ。 写真を送ってもらっていた。九十四とは思えぬように美しく、平安にみちて、いとおしい、こちらのひとではないような表情をしていた。