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自律人材とは・・・

1. 自律人材とは

リモートワークが進展することによって、自らの頭で考えて行動することができる“自律型の社員”の必要性が高まっています。対面で業務を行うことと違ってリモートワークでは、社員本人の意思の強さやモチベーションの維持によって仕事の効率に大きく差が出ます。上司からの指示がないと行動できない”依存型社員”にリモートワークは大変です。コロナ以前、上司はオフィスを一望することで所在や仕事ぶりを把握することができました。サポートを求める部下に対して必要に応じて具体的な指示命令を下すことができました。リモートワークでは四六時中、画面越しに部下ひとりひとりチェックすることは現実問題不可能です。ですからリモートワークと社員の自律化は必須の条件となるのです。現在リモートワークを行って業績を維持している企業は、個々の社員が自律して高いパフォーマンスを発揮している企業と言えます。

自律とは、広辞苑によると、『自分の行為を主体的に規制すること。外部からの支配や制御から脱して、自身の立てた規範に従って行動すること。』とあります。

ここから「ビジネスパーソンにとっての自律」を私なりに解釈すると以下のようになります。
経営者や上司から具体的な指示や命令がなくとも、自らの頭で考え、責任をもって行動すること
責任とは『人が引き受けてなすべき任務』という意味です。本来的の意味からすると、自分が正しいと考えたことを主体的に行動することであって、その結果が良からぬものであっても、それはまた別の話ということになります。
ただ私は、(行動の大小によっても話は変わりますが)経営者や上司の指示を受けずに、自ら考えた施策や行動をするわけですから、自律的行動によって引き起こされる事態に対してペナルティをも受け入れる覚悟があることを指していると考えます。

そうした自分の考えを持つという意識と、責任ある行動をする人材がこれからの時代は求められると考えます。

2. 中小企業には、自律社員が必要

規模の大小に関わらず、自律社員が必要なのは言うまでもありません。ビジネス現場にAIが着実に進展するであろう近未来では尚更です。そもそも仕事は、その目的(Why)がまずあって、何をなすべきか業務(What)が決まります。そしてどのように(How)実施をするかという構造になっています。ビッグデータとIoTによって機械学習が更に進展すると、What、Howは自動で導き出されます。そうなると人間は何をしたら良いのでしょうか?意思決定そのものです。自分の経験値や観察力をもって現状を分析し、課題を設定し行動に移すことです。

ですから、ほとんどのビジネスパーソンに自律的な行動が必要になってきます。ただ一般的に大企業は、職務に対する役割や行動が丁寧に整備されていることが多いので、自律人間が育ちにくい環境にあると言えるかもしれません。
大企業は業務が細分化されていて、業務プロセスが体系化されていることが多いので、一般社員は自律的に行動せずとも一定の成果をあげることができます。一般社員よりも業務範囲が広がり、より長期的な視野が必要なの自律人材化が求められます。管理職層の自律人材化が求められます。

一方、多くの中小企業では、一つひとつの業務領域や権限が明確に定められていることは稀です。従って自分の力で都度、課題解決していかなくてはなりません。中小企業においては一般階層から自律人材化が求められると考えます。

そして中小企業は大企業ほど、将来の企業存続が約束されているわけでありません。いま現在は業績好調であっても10年後、20年後現在と同様の企業規模を誇っていくことが保証されていません。(もちろん大企業でも保証はありませんが経営資源の脆弱な中小企業よりも環境変化に対する耐性は強いといえます)
今現在の企業価値をさらに高めるためには、創業者や先代の定めた、決まった路線を歩んでいくだけでなく、様々な可能性を模索しながらベストな選択をしていくことが必要になってきます。

3. 創業間もない企業に自律人材は育ちにくい

業績の良い中小企業は、ワンマン社長が強烈なリーダーシップを発揮しているケースが多く見られます。そこでは社長が一番の営業マン、もしくは一番のエンジニアです。事業の細かな部分に関して社長が一番よく知っているし、いつでもスタープレイヤーです。(もちろん社長というのは実質的な経営者という意味なので、役職としてCEOかもしれませんし、会長かもしれません)

ともかく中小企業においては、ある程度のワンマン社長が必要でありますし、どの企業も社長の存在感がないとリーダーシップを発揮しづらい状況にあります。

例えば、どんなに美しい経営理念やビジョンを掲げても、お金になる仕事を取ってくることができない社長には、説得力がありません。格好いいことを言うからには、まずは自分が再現してみることが必要です。社員を束ねてリーダーシップを発揮するには、言行一致が必須条件です。

もちろん社長自身が、手を動かさなくても価値創造できるように仕組みを作り、体制を整える場合はこの限りではありません。そして自分よりも優秀な人材を集めるだけの器量(才能と徳)がある場合も別です。

いずれの場合でも、中小企業、とりわけ創業社長の企業では、社長が最前線に立ち、最もよく稼ぎ、最もよく働くのです。一方社員は、そんな社長に触発されて与えられた仕事を全うします。仕事を生み出す社長に対する依存度が高まります。こうして社長の創った価値構想を疑いなく実現していくことが社員のミッションとなります。当然の因果と言えますが、皮肉にも社員の方は、仕事そのものの目的、Whyを考えなくなりがちです。前述したように中小企業の社員こそ(制度の整った大企業よりも)一人ひとりの自律した行動が求められるのに・・・です。

4. 企業継続には、自律型経営幹部が必須

創業社長が元気なうちは、それでいいのです。問題となるのは、社長の勢いが衰えてきた頃です。40代で起業した青年実業家も30年後には70代、引退の時期となります。もちろん70代の社長に価値がないということでありませんが、70代の社長が30年後を見越してビジネスを展開できるでしょうか?よほど夢とロマンに溢れる人でない限り難しいと思います。

ですから社長が将来を見通せなくなったら企業継続は、難題です。
社長の他に会社の将来や事業の方向性を考え、準備をして実行に移すことのできる人材が、必要不可欠なのです。私利私欲ではなく、会社の置かれた環境を自分の頭で考え、最適と思える方向性を見出し、組織を引っ張っていくことのできる人材です。

現在の事業やビジネスモデルが、将来も不安なく展開できるのであれば全く問題はありません。創業者の作った既定路線を走っていけばそれで良いのです。ところがAIが進展しデジタル社会が目の前に到来している現在、そしてコロナ禍によってこれまでのビジネス慣習が大きく変化するであろう状態においては、先を見通すことのできる自律人材が経営幹部の中に必要となります。

社長が健在の間に、時代の変化を読み取り、未来永劫(完全には無理ですが)に渡って事業が成り立つように価値を創造できる人材を育成する必要があるのです。

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