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フォーカル・ジストニアの治し方

フォーカル・ジストニアの原因


フォーカル・ジストニアの原因は、主に自分の楽器演奏に対する才能の自信の無さと、厳し過ぎる親の教育です。

私がカウンセリングしたフォーカル・ジストニアに悩む音楽家たちは、例外なく両親や家族との関係で葛藤を抱えていました。


あるクライアントの両親は、子どもの頃のクライアントに暴言や暴力を振るっていました。

また、あるクライアントのきょうだいはとても意地が悪く、何かに付けて子供の頃のクライアントを虐めていました。

また、別のクライアントの母親はガミガミと口うるさく、クライアントはいつも委縮した子ども時代を過ごしていました。


家族とは、本来であればいつも1番の味方であるべき存在です。

しかし、上記のように、味方どころか「家族が1番の敵」のような環境だと、誰を信じていいのか分からなくなります。

幼い子供にとって家族が心を許せる存在でないと、子供はいつも不安でオドオド、ビクビクしてしまいます。


そのため、子供は子供なりに「生きる知恵」を編み出します。

たとえば、
「いつも優秀でなければいけない」
「いつも周囲の人に気を使わなければいけない」
「いつも『良い子』でなければいけない」
といった類の考えです。

フォーカル・ジストニアを発症する人の特徴


フォーカル・ジストニアを発症する人は
「真面目」「完璧主義」「優等生」タイプが多いと言います。

なぜこのような「良い子ちゃん」タイプが多いかというと、上述のようにギスギスした家庭環境の中で生き残るために「良い子でいれば、親が私を愛してくれるだろう」と、子供なりに考えたからです。

この考えは、成長して大人になってもずっとその人を守る「生きるための知恵」となります。


そのため、何かミスをするとトコトン落ち込む傾向があります。

「いつも完璧でなければいけない」という自分のポリシーに反するからです。

「ミスをした自分に生きる価値はない」とまで思い込み、いつまでもクヨクヨと引きずってしまいます。


また、彼らは自分の音楽の才能に対する自信に欠けるところがあります。

しかも、なぜ自信が無いのかを突っ込んで聞いてみると、

「自分はちゃんとした音楽の教育を受けていなかったから」
「自分は楽器演奏の教育を受けるのが人より遅れていたから」
「あるとき、音楽関係者からダメ出しされたから」

などと、「取るに足らない」理由で自信を喪失していたのです。



自分の才能に自信を持つか、否かは「自分次第」です。

自分次第なら自分の音楽の才能に自信満々であっても、誰も文句を言いませんし、むしろ芸能の世界では「言ったもん勝ち」で、人より目立つことも大事だと思います。

しかし、フォーカル・ジストニアを発症する音楽家は、「謙虚」「控えめ」という意味で「自信が無い」と言っているというより、「自分の才能に本気で自信が無い」ケースが多いように思われます。


なぜ、彼らはこのように自分の音楽の才能に自信が無いかというと、子どもの頃に親から褒められたことがないからです。

子供のちょっとしたミスにはクドクドといつまでも親が子供を叱りつけるのに、子供がどんなに頑張っても、滅多なことでは褒めてくれません。

極端なことをいうと、「テストで100点取ったら褒めてくれるけれど、90点以下では褒めてもらえない」のです。


自分の子ども時代を振り返ってみても、そんなにカンタンに100点を取ることはできないものです。

しかも、子供の全てが勉強好きとは言えません。

必然的に、「親から褒められたことは年に1、2度」あるいは「親から褒められた記憶がない」となります。


このような育てられ方をすると、「どんなに頑張っても、自分は親から認めてもらえない」という無力感に囚われます。

そのため、どんなに社会的に成功を収めていても、「私は、自分の音楽の才能に自信がありません」と、うつむきがちに答えてしまうのです。

フォーカル・ジストニアの原因ー「人生の転機」


こういう人が音楽家となり、ある日「人生の岐路」「人生の転機」とも呼べる状況に遭遇します。


たとえば、ある音楽家は海外の音大へ留学することになりました。

ある音楽家は、大規模なコンサートへ出演依頼をされました。

ある音楽家は、いよいよプロとして独立することになりました。

ある音楽家は、音大の卒業試験を迎えることになりました。

ある音楽家は、コンクールの審査員を務めることになりました。

ある音楽家は、それまでの演奏フォームから新しい演奏フォームへ変更しました。

ある音楽家は、コンペティションに臨むことになりました。


一見するとどのケースもバラバラですし、それほどの重大事件とも思えません。

むしろ、音楽家として生きていくためには「避けて通れないケース」であり、ごくありふれたケースでしょう。

しかし、「いつも完璧でなければいけない」「少しのミスも許されない」と考えている人にとって、これらのケースは「一歩間違えたら命とり」になります。


たとえば、
「海外の音大へ留学することになった」
→「せっかく留学しても、大した成果を収めることができなかったら、どうしよう?」

「大規模なコンサートへ出演依頼をされた」
→「大観衆が見守る中で、演奏を失敗したら、どうしよう?」

「プロとして独立することになった」
→「仕事の依頼が全く来なくなり、家族を路頭に迷わせるような事態になったらどうしよう?」

「音大の卒業試験を迎えることになった」
→「不合格になって、留年することになったら、どうしよう?」

「コンクールの審査員を務めることになった」
→「ちゃんと審査ができなかったら、どうしよう?」

「演奏フォームを変更した」
→「かえって『演奏技術が落ちた』と言われたら、どうしよう?」

「コンペティションに臨むことになった」
→「コンペに落ちて、オマケに審査員からダメ出しの嵐をくらったら、どうしよう?」


と、悪い方へとどんどん妄想と恐怖が膨らみます。

すると、恐怖のあまりにノルアドレナリンが過剰分泌され、人によってはパニック障害を発症します。

この「○○だったら、どうしよう?」という恐怖の背後には、
もしそうなったら、私は誰からも愛されない!」という恐怖が潜んでいます。


人間にとって1番の恐怖は、もちろん「死」への恐怖です。

幼い子供にとって1番の恐怖は、「誰からも愛されない」恐怖です。

幼い子供は自分で自分の面倒をみることができず、「誰からも愛されない」ことが「死」へと直結するからです。


この「死」に対する恐怖は究極のストレスとなって、人間の体に様々な変化を及ぼします。

人間の脳は、ストレスを感じるとセロトニンが不足して精神的に不安定になったり、ノルアドレナリンが分泌されて不安になったりします。

また、セロトニンは分泌され過ぎたドーパミンを調節する働きがあります。

*セロトニンは、このような働きから「脳というオーケストラの中の指揮者」と呼ばれています。


つまり、セロトニンが不足することでドーパミンが暴走します。

ドーパミンは、アセチルコリンと共に随意運動(楽器演奏の際の手足や口の動き)を制御します。

フォーカル・ジストニアの脳神経学的原因


一口にジストニアと言っても、遺伝性ジストニアや向精神薬(D2遮断薬)の副作用によるジストニアもあります。

そこで、向精神薬の副作用によるジストニアについて調べてみることで、フォーカル・ジストニアの脳神経学的原因が分かるのでは?と思い調べてみました。


https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf8296.html

D2遮断薬は、統合失調症の薬です。

このサイトによると、D2遮断薬は「脳内のドパミン受容体やセロトニン受容体への作用により、幻覚、妄想、感情や意欲の障害などを改善する薬」ということです。

統合失調症は、ドーパミンの過剰分泌が原因とされています。


そこで、ドーパミンのD2受容体を遮断することで、統合失調症の症状を改善します。

そして、このD2遮断薬の副作用により、ジストニアの症状が現れることがあります。

錐体外路症状
ふるえ、歩行異常、ジストニア(筋緊張異常)などがあらわれる場合がある


ドーパミンのD2受容体を遮断→ドーパミンが減少→統合失調症の症状が改善→ジストニアの症状が現れる。

つまり、ジストニアの原因は「ドーパミンの減少」とも言えます。


さらにD2受容体について調べてみると、

https://www.igaku.co.jp/pdf/1807_resident-02.pdf#search='d2%E9%81%AE%E6%96%AD+%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%81%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%AA%E3%83%B3'

 「アセチルコリン分泌に重要な受容体としてドパミンD2 受容体がある.この受容体が作用するとアセチルコリンが 減少するため,この受容体を阻害することでアセチルコリ ンの分泌を増加し消化管運動を促進することができる」

D2受容体を阻害→ドーパミンが減少→アセチルコリンの分泌が増加

=ジストニアの症状が現れる


このことを考えると、ジストニアの原因は「アセチルコリンの分泌の増加」とも言えます。

パーキンソン病は、「脳内のドパミンとアセチルコリンとのバランスが崩れ、アセチルコリンが相対的に多くなっていると考えられており」と言われます。

http://utanohosp.jp/html/patient/know/neurology_08.html


ドーパミンとアセチルコリンは、共に随意運動を制御します。

ドーパミンとアセチルコリンの分泌量は、どちらかが少なすぎても多すぎてもいけません。

それぞれの均衡量のバランスが崩れたとき、随意運動に障害が現れます。


パーキンソン病は、

ドーパミンが減少→相対的にアセチルコリンが多くなる


アセチルコリンの働きは、

「アセチルコリンは骨格筋や心筋、内臓筋の筋繊維のアセチルコリンの受容体に働き、収縮を促進する。自律神経の内、副交感神経を刺激し、脈拍を遅くし、唾液の産生を促す活性がある。」

つまり、「アセチルコリンは骨格筋の収縮を促進する」→ジストニア

となるのでは?と思います。


次に、なぜ向精神薬の副作用以外でドーパミンが減少するのか?という話ですが、

「ストレスがかかると、脳全体に突起を伸ばしている神経からノルアドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質が放出されます」

https://www.toho-u.ac.jp/sci/bio/column/029758.html

また、人間関係や家庭環境の悪化に長く苦しむ人は、ドーパミンが脳内で分泌されにくくなります。

https://gigazine.net/news/20191113-dopamine-production-stress/

人間関係や家庭環境の悪化に長く苦しむ人はドーパミンが脳内で分泌されにくくなることが判明
人間関係や仕事上の問題、家庭環境の悪化といった心理社会的なストレスに長くさらされている人は、急なストレスに対処するために必要なドーパミンの産生能力に支障がでるという研究結果が報告されています。研究チームは、この研究結果が「心理社会的なストレスによって精神疾患や中毒のリスクが高まる理由」に関連する可能性を示唆しています。
リンク
gigazine.net

常にストレスがかかる状態だと、ドーパミンの生産量が分泌量に追い付かなくなります。

そのため、「ドーパミンが減少」→パーキンソン病やジストニアが発症

というメカニズムなのではないか?と思います。


つまり、ストレスの元となる原因を心理療法で取り除く→ドーパミンが適正量になる→パーキンソン病やジストニアが治る

ということだと思います。


実際、「心理療法でストレスを取り除き、精神的に安定するようになるにつれ、フォーカル・ジストニアの症状が治まっていった」というクライアントは多いので、この理論に間違いは無いと思います。

まとめると、

毒親の元で育ち、常に「精神的支配」のプレッシャーを感じ続ける事で、絶え間ないストレスに晒される

ストレスの影響で、ドーパミンの生産量が分泌量に追い付かなくなり、ドーパミンが枯渇

アセチルコリンとのバランスが崩れ、アセチルコリンが優位になる。

アセチルコリンの作用で骨格筋が収縮し、ジストニアやパーキンソン病が発症。

という事になります。


また、もう一つの仮説として、「ノルアドレナリン説」があります。

脳の中の「扁桃体」という部位があります。

この扁桃体は、過去の経験と現在の状況を照らし合わせて、「危険か、そうでないか」を判断します。


そして、「危険だ」と判断すれば、副腎髄質から大量のアドレナリンやノルアドレナリンが分泌されます。

そして、ノルアドレナリンの作用で、筋肉への血流が増えすぎてしまい、筋肉が緊張し過ぎて強張ってしまいます。

フォーカル・ジストニアに悩むあるピアニストさんが「『演奏を失敗したら、どうしよう?』と思ってから右手が動かなくなった」と、告白されていました。


おそらく、「失敗したら、どうしよう?」と思ったことで、扁桃体が「ピアノ演奏=危険な行為」→「逃げろ!」と判断したのだろうと思います。

そして、ピアノに向かう度にノルアドレナリンが過剰分泌されて筋肉が強張ってしまうのだろうと思います。

フォーカル・ジストニアに悩む人の特徴として、「日常生活では普通に指が動く」というのがあるので、私は「ドーパミン減少説」よりも、「ノルアドレナリン説」の方に信頼を置いています。

フォーカル・ジストニアの治療ーありのままの自分を好きになる


有料記事では、実際に私が有名ミュージシャン、大物ミュージシャン、海外で活躍するミュージシャンを治した方法をご紹介します。


個人差はありますが、治療を開始してから3、4年でフォーカル・ジストニアが治ります。

残念ながら、「来週コンサートなので、今日中に治して欲しい!」というご要望にはお応えできません。


フォーカル・ジストニアの症状が改善されて完治していくプロセスは、「ありのままの自分を好きになるプロセス」と同じだと考えてください。

自分の心の中に両親や家族に対する怒りや憎しみで心がいっぱいだったり、そのせいで自分を憐れんだり、自分を好きになれない気持ちでいっぱいだったりするうちは、フォーカル・ジストニアの症状は改善しない、ということです。


もし、「明日までに両親や家族に対する恨みや怒りを捨て、彼らを愛し、ありのままの自分を好きになってください」と私が言ったら、あなたは「そんなの、ムリです!」「できません!」と答えることでしょう。

フォーカル・ジストニアを治療するということは、「ありのままの自分を好きになる」ことと同じだということ、そしてそうなるためには時間がかかるということを理解して頂ければ幸いです。




フォーカル・ジストニアの治し方

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