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昭和の靴製造メーカー③:靴の作業工程「底付け〜出荷」編

今回は「昭和の靴製造メーカー」の最終回、「底付け〜出荷」になります。

バブ作業を終えた靴は、張り工さんへと戻ります。
戻ってきたアッパーの底面に糊を塗り、靴底を付けていきます。靴底側はアッパーが他の工程に回っている合間に処理をして糊を塗り乾かし、先に段取りをしておきます。

さらに靴底を定着させるために、圧着機を使います。この圧着機も他の機械と同様に、工場によって扱う機械は異なります。

私の知っている当時の圧着機は、上から木型を押さえつける棒が2本並び、下面はさまざまな形の底がフィットするように、分厚い革の下には水が入った袋が敷かれていました。例えるとウォーターベッドのような感じです。それが左右に敷かれていて、右足、左足と交互に数秒間隔で圧着していました。

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またヒールが付く底などは、部分的に底面の当たりが弱くなってしまいます。そこで、ビーチサンダルの底に使われるような柔らかい材料を一つひとつ底面の形に合わせてカットして挟み込み、隙間がなくなるよう調整して、均等に圧が掛かる工夫をしていました。

次に、底付された靴から木型を抜き1足ずつ棚に並べていきますが、小さな工場でも1日200足ほど生産します。
そこでアングルという高さ2mほどの棚を使います。

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棚には4〜5足置ける木板が1段につき2枚、それが10段ほどに分かれています。全部で100足ほど置くことができ、移動しやすいよう底面にはコマがついています。

婦人靴などヒールの付く底は木ねじを内側から打ち込み、更にその周りに4~5本の釘を打ち、仕上げ工さんに渡します。この釘打ち作業も、現代の機械ではスイッチ一つで簡単にすべての釘を打ち込むことができます。

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仕上げ工の作業は現在も昔もほとんど変わっていません。
中敷きを敷き、糊や汚れを取り除き、クリームを塗って磨いたりします。革靴であれば電気ゴテや熱風機でシワを取ったり、化粧を施して箱に収めて出荷されていきます。

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靴の作り方は国や地域によって違いますが、神戸市ではAMラヂオから浜村淳の声が聞こえ、祝祭日も関係なく、時には日曜も出勤し、お昼になっても時間通りに食事がとれず、日付変更線を超えてからの帰宅というのは日常茶飯事という方もたくさんいました。

そんな、ある昭和の風景でした。

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