ライブ!
新型コロナウイルスが猛威を振るう中、日本のエンタメ界はステイを強いられている。
先日、遂にエンタメ業界がエンターテイメント再始動に向けて政府に働きかけたというニュースを目にした。
そんなご時世ではあるが、私は運良く、先日あるゲリラライブに参加することができた。
私は某有名ファストフード店Mで資格試験に向けた勉強に励んでいた。
その日訪れたMは、落ち着いたオシャレな雰囲気で、スーツを着た社会人や制服を着た高校生、大学生らしき若者たちが皆黙々と作業に打ち込んでいた。
そんな人たちを横目に、私は1番出入り口に近い席に陣取った。
平日3時のルーティン、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」をBGMに黙々と勉強に打ち込む。
すると店の外から何やら歌声が聞こえてきた。「なんの音や?」
プチパニックに陥っている間にその歌声がどんどん大きくなっている。
「えっ?これ何?」
その時店内にいた作業中の女子高生、男子大学生、読書中のおっさんたちも困惑している。
すると店内にその歌声の主が入ってきた。
店にいた全員が、朝礼に遅れて入ってくる不良生徒が体育館に入ってきた時に、全校生徒がその不良生徒に一斉に視線を向けるように、サッと歌声の主の方に視線を向ける。
その困惑というスパイスをまとった矢のように鋭い視線の先には、、、
一面にびっしり赤ペンで詞が書き込まれたメモ帳を片手に、その詞をメロディーに乗せて、1フレーズも聞き取れない歌手としては絶望的な滑舌で、「これは自分の単独ライブだ!」と言わんばかりに堂々と歌い上げる、少々汚めのお爺さんが立っていた。
その時、店内にいる全員がこう悟ったことだろう。
これは目を合わせちゃいけないやつだと。
そんなことはお構いなしに、何も注文することなく、お爺さんは歌いながら店内を一周歩く。
それは、まるで満員のライブ会場で、ファンサービスとして客席の間を練り歩きながら歌う永ちゃんのようだった。
そして、オリジナルソングを一曲歌い上げたお爺さんは、満足気に店を出た。
怪訝そうな顔を浮かべる客の中で、私だけは少しだけ心が和んだ。そんな私は、やっぱりズレているのだろうか。
どんな形であれ、生ライブと生レースだけは最高だ。
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