映画「きっとうまくいく」起承転結

ネタバレ全開。映画を構成の観点からレビュー。

うろおぼえ起承転結まとめ。

.ログライン

10年前に交わした約束。10年後、一番金持ちになってる奴が勝ちだ。その約束の勝者をはっきりさせるため集まった4人が、行方知らずの天才ランチョーが、自分の理想を追い続けた大学時代のことを回想しながら、彼の行方を突き止め、彼が自身の夢を実現したことを知る。

.メインプロット

4人が行方知らずのランチョーを探しながら、大学時代のランチョーとのエピソードを回想していく。

.サブプロット

ランチョーとヒロインとの恋。その行方。

.【起承転結】
..起
インドの工学系大学を卒業した主人公含む4人は10年前、10年後に再会し、誰が一番成功をしたか競う約束をした。

そして、10年後の現在、ファルハーンとラージューはチャトルに約束通り約束の場所に呼び出される。ファルハーンとラージューらが主人公側で、チャトルはライバルポジション。天才だったランチョーは約束の場所に来ていない。
チャトルは学園で常に2番目の順位で、天才ランチョーに常に負けているのが悔しかった。だからいつききっと負かしてやるという執念を抱いていた。彼はプライドが高く嫌味でお調子者な性格。

そして10年後の現在、彼は企業の社長になっており、再会した他の2人に対して勝ち誇った態度を取る。彼は今、400以上の特許を持つ発明家フンスク・ワングルと契約交渉中で契約が成立すればますます企業は躍進するとのことだ。俺が一番であり、10年前の約束の勝者は自分だと勝ち誇る。

..承
だが、そこには肝心の学年一番のランチョーがいない。他の友人2人もランチョーとは5年以上連絡を取っていないらしい。チャトルが調べたところでは、ランチョーは今、避暑地のシムラで暮らしているということで、チャトルは勝負の行方を知るためにシムラに一行を連れて向かうことにする。

はたして10年前の約束の勝者は誰なのか?

ここで、学生時代の4人の長い回想に入る。ランチョーとファルハーンとラージューは三馬鹿トリオで学園で問題ばかり起こしていた。

ファルハーンとラージューは落第生で成績もゲビだった。一方ランチョーは学校の規則に従わない問題児だが、成績が良く、やがては学年でトップの順位を取る。

そんなランチョーは良い成績を取ってよい企業に就職することを至上の価値とする現在の学校に疑問を抱いていた。学問は学問のためにおこなうべきであり、学問そのものへの好奇心や楽しさが大事では無いかと考えていたのだ。そんな中、学問を追究すべく新しいドローンを発明していた学友の1人が、学長に発明を否定されたことで自殺してしまう。そこからランチョーは学長に逆らうようになっていく。

こうしてランチョーは旧弊的な考えに囚われた学長と何度も対立することになるが、あるとき出会って一目惚れした美しい女性が、学長の娘だとわかる。2人はお互いに惹かれ合うが女性には既に婚約者がいたし、彼女は対立する学長の娘でランチョーの恋路は険しそう。結局ヒロインは婚約者とわかれ、ランチョーの恋はうまくいくかに思えたが、何故かランチョーはヒロインと結婚の約束をしてくれない。ランチョーにはヒロインと結婚できない理由があるようだが、彼はその理由も話してくれない。
一方ランチョーは大学で学生たちが抱える様々な問題を解決し、彼等の夢を応援していく。他の落第生の2人の家族の問題を解決したり、友人が本当にやりたいことがエンジニアになることでは無く写真家だと知るとその夢を全力で応援してやったり。学生たちはランチョーの働きかけによって、学歴社会に囚われ見失っていた夢や理想を思い出し、行動に移していく。
ランチョーは彼等にとってまさに夢を思い出させてくれた恩人だったのだ。

..ミッドポイント
そして現在に時系列が戻る。彼等はシムラにあるというランチョーの家を発見する。そこは豪邸でランチョーは優秀な成績によって大成功を収めたかのように思われた。

が、ランチョー本人だという人物に会うと、それはランチョーとは全くの別人だとわかる。衝撃を受ける3人。ランチョーだと名乗るその男も3人が誰だかわからないようだ。壁にはランチョーの名前での学位授与書が飾ってあり、卒業時に撮った写真に写っている姿は、彼等が知っているあのランチョーでは無く、目の前にいる見知らぬ男だった。

ランチョーは何者だったのか? 自分達の思い出は嘘だったのか?
だが、彼等はランチョーと名乗る男を問い詰めることで、ランチョーの正体を知る。彼等が知っているランチョーは、本物のランチョーの家の小間使いの少年だった。だが少年は大変賢く、本物ランチョーの代わりに学位を取るために本人と偽り、大学に通っていたのだ。学歴社会のインドに置いて学位の存在は喉から手が出る程欲しいものだったのだ。

彼等は思い出す。ランチョーが首席で卒業を果たした卒業式の日、ランチョーは学位授与式の後、いつの間にかいなくなってしまっていたのだ。あれは正体を偽っていた後ろめたさがあったからだろうか?

彼等はかつてのランチョー(仮)がいるという、田舎町の小学校へ向かう。ランチョーは山間の小学校で教師をやっているらしい。

また、その過程で彼らはランチョーと大学時代に付き合っていたが結局別れてしまったヒロインを見つけ、彼女を連れてランチョーのもとに向かう。

..転
彼等が小学校に着くと、小学生たちは様々な発明品を自分達で作り工学を楽しんでいた。それはランチョーがかつて実現したかった学びの姿だった。
そして彼らついに、ランチョーと再会する。ランチョーは元気にやっていた。子供たちに楽しそうに勉強を教えている。こうして再会を懐かしむ面々。ヒロインとランチョーも10年越しについに結ばれる。

..結
一方、学園二番のチャトルは、ランチョーに対して勝ち誇っている。「ただの学校教師か。俺の勝ちだな!あいうえおを子供たちに教えているのか」とランチョーを笑う。そしてランチョーに対して、敗北したことを証明する書類にサインをしろと迫る。ランチョーは、「こいつ本当に変わらないな」と苦笑しつつサインをして書類を渡す。そしてチャトルは立ち去りつつ、自分の尻を叩いてランチョーを馬鹿にする。チャトルは立ち去る際、ランチョーが最優秀名生徒がもらえるという「宇宙飛行士船用の万年筆」を持っていることに気づくと、「これは俺のものだ」と奪い去っていく。10年間も大事にしてきた万年筆のはずだが、それを取られても余裕で眺めているランチョ-。

友人たちが、「取り戻さなくていいのか?」と問うと、ランチョーは「大丈夫。直ぐに戻ってくるさ」という。そして携帯でチャトルに電話をかける。
電話を観るチャトル。その呼び出し人の名前は「フンスク・ワングル」。
そう、チャトルが現在交渉中の有名な発明家の名前である。
それがランチョーの本名だったのだ!彼は有名な発明家になっていた。冒頭の伏線がここで意外な形で回収される。
勝ち誇っていたチャトルは青ざめる。フンスク・ワングルは大金持ちで自分の財力より全然上。全く敵わないし、そもそも彼とは莫大な利益に繋がる契約を交渉中だったのだ!
チャトルは慌ててランチョーの元にもどりペンを返して謝罪するが、
ランチョーはチャトルに「あんたとは契約できないな」と告げる。

.感想
冒頭の「誰が10年後一番成功しているか?」という降りと、オチが非常に効いている。ランチョーが偽名を使わざるを得なかったこと。偽名だったからこそオチが効いてくること。その偽名の裏にもドラマが有り、ランチョーが大学時代にずっと実現したいと行動してきたことが現在に繋がって成功にも繋がっている。
学歴社会に対するアンチテーゼも入っており、テーマとハイコンセプトとドラマが親和的になじんでいる。
途中散文的なエピソードが多く、非常に回想が長ったらしいが、全体としてはよく出来たドラマだった。

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