午後4時

沈黙とキーボードが叩かれる音が息を詰まらせていく。
そっと鞄から財布を取り出して席を立った。
事務室の重いドアを開け、自販機まで緩慢に歩く。
鈍く光る銀の硬貨を差し入れると赤いランプが灯る。
選ぶのはいつもロング缶の甘いカフェオレ。
ボタンを押すとピッと電子音が短く挨拶し、誰もいない通路に落下音を大袈裟に響き渡らせた。
冷たい缶を握りしめ、再び事務室へ戻らねばならない。
机の前に座り、プルタブに爪を掛けた。
薄いアルミを音を立てて裂き、小さな破壊を味わう。
砂漠で与えられた水のように、甘ったるいコーヒーを飲み込む。
この束の間の時間だけは、机に縛られた奴隷ではなくなる。
私が私であるための、ささやかな休息であり抵抗なのだ。
電話が鳴る。
残りの一口を飲み干し、受話器に手を伸ばした。

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