#20_モーリシャスの悲劇

ドードーという鳥をご存じでしょうか。主にマダガスカル沖のモーリシャス島に生息していた飛べない鳥。天敵もいない孤島で平和に暮らしていましたが、乱獲によってあっという間に絶滅してしまいました。最後に目撃されたのは、17世紀の後半のようです。

私にとってドードーは、昔読んだ本に出てきて以来、なぜか心にのこる存在でした。なので、以前ドイツに行ったとき、博物館でドードーの模型を見つけたときは、こんなところにいた!と思ってすぐに写真を撮ったものです。

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そのドードーが暮らしていたモーリシャスが、今、大変な悲劇にみまわれています。ご存じのことも多いかと思いますが、今年の7月にモーリシャス沖で日本の貨物船が座礁し、重油が流出しました。先日の日経新聞の記事によれば、その量はおよそ1000トン程度で、汚染されたサンゴ礁の再生には数十年かかるといわれているということです。

このような海難事故は、多くの条約などの絡みあう特殊な領域で、取り扱う弁護士も限られており、私も経験はありません。ただ、いろいろみていると、この件のような「一般貨物船の燃料油」の流出事故については、主に「バンカー条約(燃料油汚染損害の民事責任条約)」などが適用され、結論、基本的には船舶の所有者が、賠償額の上限の範囲で賠償する、ということになりそうです。

ただ、それでは全部は賄えないため、上記の記事によれば、日本政府も、(日本国自体には賠償責任はないという前提のもと)モーリシャスに経済支援をすることで対応するとのこと。「道義的責任」ということですが、それはほんとうに必要なことであると思います。

ものごとを整理して、解決に向かう筋道を立てる道具として、法律は欠かせません。しかし、真の解決を図るためには、それに加えて、倫理や道徳が必要なのではないかと私は考えています。今回のモーリシャスの悲劇には、まさにその視点が求められるものと感じました。

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