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#187_裁判の相手方の住所を偽った場合(ウソの住所を申告した場合)、どうなるか

先日、裁判の相手方の住所を偽って、結果的に「欠席裁判」にして勝訴判決を得た事件がニュースになっていました。

この手口を理解するには、前提として、

① 裁判(厳密には「訴訟」といいますが)は、原告の作成した訴状が被告に届かないと(送達されないと)始まらない(ちゃんと請求を理解させて、防御の機会を与えないといけない)
② 一方で、訴状が届いたのに放置して何もしないでいると、最終的に被告は敗訴する
(知っていながら争わないのだから、請求を認めたものとみなされても仕方ない)

という点も理解しておく必要があります。

そのうえで、「では、被告の住所に訴状を送っているのに、被告が居留守を使って一向に受け取らない場合、どうなるか?」を考えることになります。

この場合、いつまで経っても「送達」が認められないとすれば、被告のゴネ得になってしまいますので、「その住所に被告が住んでいることが確かなのに、訴状を交付することができない」ということがいえれば、裁判所から書留郵便等で発送したことをもって、送達の効力を認める、という制度があります。これが「付郵便送達」です。原告と被告の利益のバランスを図ったものといえると思います。

そこで問題なのが、この、「その住所に被告が住んでいることが確か」の度合いと、その確認方法です。

この点がゆるいと、適当な住所を記載したうえで、簡単に欠席裁判に持ち込めてしまいます。なので、原告には、現地調査やその調査報告書の提出が求められます。この調査報告書には、「その住所に被告が住んでいる」ことを裏付けるような事実を記載することになりますが、けっこうリアリティのある事実を詳細に書くことが必要です(表札、郵便ポスト、洗濯物、電気・水道メーター、隣人からの聴取り結果など)。

上述の事件においても、裁判所は当然、現地調査の報告書を提出させたのだろうと推測します。が、原告において提出したそれが虚偽だったということでしょう。このような事件が生じた以上、付郵便送達のハードルが多少は上がるかもしれません。

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