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クラブの厳しいルール・パート4

クラブの厳しいルール・パート1では知識確保の厳しさ

クラブの厳しいルール・パート2では飛行技術維持の厳しさ

クラブの厳しいルール・パート3では飛行頻度の厳しさ

についてでした。

今回は最終回。運用するスタッフに対しても厳しいルールについてお話しします。クラブの厳しいルール・パート1でも書いたように空軍直轄の組織なので空軍クラブ本部@アメリカと空軍本部@現地のルールに基づいてそれぞれの役割が定められています。

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マネージャー・ディレクター

クラブ運用の責任者です。

滑走路を有する空軍基地での運用です。軍用機を運航する部隊やその司令部との共通認識が必要です。

定期的及び不定期の会議に参加して情報共有と、必要があればクラブ会員に伝える義務があります。緊急時の対応訓練、事故処理の対応など、Wing Safetyと言われる空軍の安全部隊との連携は必須です。

安全部隊からの定期監査や、基地内に存在する施設全体に共通する定期監査などの対応も実施し、安全対策をしっかりしているのが特徴です。

米空軍直轄組織の飛行クラブであるため、定期的な米軍本部でのトレーニングの受講も必須です。全米各地の飛行クラブのマネージャー達が一同に介してのトレーニングとカンファレンスです。

米軍本部の担当者(大佐、民間人であれば大佐レベル)をトップとして安全管理担当者、総務管理担当者、整備担当管理者などのチーム編成で各地の飛行クラブの定期監査が実施されます。チームリーダーの大佐はパイロットなので、後述するチーフインストラクターのチェックも実施します。

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チーフメカニック

機体整備の責任者です。

FAA整備士としてFAAのルールに基づき機体整備を実施する整備チームのリーダーです。空軍直轄のクラブ本部の監査は2年に一度、空軍本部@現地は1年の監査もあれば、不定期の実施される監査も多くあります。

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チーフインストラクター

フライトプログラムの責任者です。

教育プログラム

FAA教官パイロットとしてFAAのルールに基づき資格訓練を提供するインストラクターチームのリーダーです。

インストラクターの採用・教育・審査や、それらの訓練シラバスの作成、訓練記録の確認及び管理、定期及び不定期のインストラクター会議を担当します。

空軍直轄のクラブ本部の監査は2年に一度実施されますが、その際に前述した活動内容をチェックされます。航空法上そして空軍規則上問題がないかどうか。【ベテラン教官からの指導方法2】にも書いた当時のシャープ大佐からは厳しく指導されました。指導された項目については前述したインストラクター会議で共有し、訓練内容と訓練記録の品質向上に活かしていました。

多くのPrivate Pilot Courseを受講する訓練生のドロップアウト率を下げるための方策を伝授されました。全ての空軍クラブを回っていてデータは豊富です。こうなって辞めていったという事例を見いていた彼の言葉には重みがありました。また訓練記録から読み取れる訓練内容や頻度そしてその順番などで事故防止の考え方を指導されました。いろいろな事例でのケーススタディは非常に興味深かったです。

クラブ全体の共通する懸念事項として教官パイロットの計器飛行の技量維持でした。FAA教官パイロットは前提としてFAA Commercial PilotとInstrument Ratingを持っています。クラブのインストラクターチェックアウトでもその両方の技量をチェックされます。そして計器飛行のカレンシーは航空法のみであること(半年に6回の計器進入など)や、アメリカには豊富にある計器進入方式が日本には数が少ない、アメリカに戻ったときに技量が維持されているかどうかなど、様々な問題を指摘されていました。

そこで【なぜフライトシミュレーター?と聞かれるので パート①】でも書いたようにフライトシミュレーターで様々な計器進入方式を経験させる訓練を追加しました。

これまでは初回にInstrument Checkとしてチェックアウトし、半年以内に6回の計器進入などを実機またはシミュレーターで実施、そして初回から1年後のInstrument Checkを実施。というレベルでした。

追加した訓練は毎月1回のアプローチを必須としたものです。常に過去半年以内で6回の計器進入というカレンシーの条件も満たしながら、教官パイロットとして知っておくべき経験しておくべき様々なアプローチを準備していました。

一般的なILS・VOR・LOC・GPSはもちろんですが、数が少ないBack Courseや、当時まだ存在していたNDB、レーダーを使用しない自分で全て飛んでいくフルアプローチや、Circlingなどをギリギリの気象条件を設定していました。

教育以外のフライトプログラム

遊覧飛行やDiscovery Flightもあれば、空軍と連携したフライトミッションもあります。

それぞれの内容やルート、フライトできるパイロットの条件や訓練などを設定するのも仕事の一つです。

そのために空軍の会議に参加、ボートメンバー(後述)を召集して会議を実施することも仕事の一つでした。

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インストラクター

クラブのメンバーでもあり、チーフインストラクターの管理の元教育プログラムを実施する担当者でもあります。

チーフインストラクターからアサインされた訓練生を担当します。インストラクターもほぼフルタイムで働ける人もいれば、軍の仕事が忙しくなかなか時間が取れない人もいます。軍のパイロットをしながらインストラクターを兼務している人もいます。F15とC152を乗りわける頭と体にはいつも感心していましたが、本人は超楽しんでいました!

クラブで定められた訓練シラバスに則って指導し、訓練記録を記入し、記入後はチーフインストラクーへ提出、チーフインストラクーからの指摘事項は別途面談して修正。担当した訓練生のステージチェックをチーフインストラクターに依頼し、フライト後は個別面談で教育技法のディスカッション。

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ボードメンバー

正式には、Standardization Board Memberと言います。構成されるメンバーは前述した全ての人間たちに加えて、空軍安全部からのsafetyの専門家とクラブメンバーからClearing Authorityと言われるフライトディスパッチ権限を持つ者が含まれてます。

少なくとも3ヶ月に一回は一同に介しクラブの活動について、そして安全について協議ディスカッションします。

事故や事故に至らない事例が発生した場合にはチーフインストラクターの召集で適宜集まります。

Aero Club / Flight Training Centerという名称通りフライトクラブでありながらも正式な訓練センターです。アメリカではFAAの指定養成施設として位置付けしていることから、これらのスタッフの資格要件や監査内容は当たり前といえば当たり前です。




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