見出し画像

クラブの厳しいルール・パート1

クラブ組織が航空の裾野を広げ航空の安全を確保する理由には実は続きがあるのです。

航空の安全という意味では地上での教え合うというレベルだけでは達成できないものです。知識を数値化し評価する。技術を基準に基づき評価する。過去の事例に基づいて様々なルールを設定するのです。

クラブの安全=航空の安全を確保するための厳しいルール

玉那覇自身がアメリカでのパイロット訓練をFAA Part 61(FAA Part 141との違いはスクール選び?それよりもっと重要なことをご覧ください)で受けてきたこともあり、クラブに入会する手続きとチェックアウトするまでの過程に驚いたのを今でも覚えています。

FAAのパイロットなので、FARという航空法やAIMというマニュアルについては勉強してきました。しかし所属したクラブではその土台の上に更にいくつもルールが設定されていたのです。

米空軍直轄の組織です。安全に対しては厳しいのは当たり前です。米軍本部から規則と基地本部からの規則の二本立て。

更に私が所属していたのは沖縄県内にある嘉手納基地なので、飛行する場所は日本の空となることからそのルールも。

画像1

Safety Meeting

Safety Meetingという月一回のメンバー全員参加が義務付けられている会議です。欠席するとフライト停止処分です。当然諸々の理由により欠席を余儀なくされるケースもあります。その場合は会議を録画したビデオを見ることでフライト資格を戻されます。ただし、そのビデオを家に持ち帰って見るということは許されません。スタッフのいる部屋で全て見ることを確認されるという掟です。

安全に関わる大切な情報をメンバー全員が把握して理解しておくことです。これは空軍本部の規則として全米のクラブで実施されているルールです。

画像2

PIF - Pilot Information File

通常のフライトにNotice to Airmen、通常NOTAMと言われる航空情報を確認する作業があります。使用する空港や空域の情報、そして使用予定のサービスなどの情報です。使えると思ってフライトしたら実は使えなかったということがないようにとても大切な情報です。

クラブにはそれと同じようにPIFが設定されています。クラブ独自のルールであるSOP(後述)の変更などが記載されています。これも空軍本部の規則として全米のクラブで実施されているルールです。

もちろんそれをチェックしないとフライトの許可は出ません。

画像3

SOP - Standard Operating Procedures

空軍本部の規則で網羅する内容はチャプターごとに定めらています。

Administration

Pilot Currency Requirements

Operational Restrictions and Local Area Procedures

Student Pilot Procedures

Safety

Maintenance Procedures

Flight Instructor Responsibilities

項目に各クラブで運用を決めているのです。それらを読み込まないとチェックアウトもできない。特にローカルルールについては後述する学科試験でも問われます。

途中で変更があればPIFとして発表し、改定のタイミングで本SOPとして発表する。これも空軍本部の規則として全米のクラブで実施されているルールです。

画像4

Exams

学科試験のことです。数多くの種類があります。

Standardization Exam

Instrument Exam

Instructor Exam

これらは初回と毎年の受験が義務付けられています。合格基準は70点以上です。

Standardization Examは、FAAのパイロットであれば回答できるFAR(航空法)とAIM(手順)についてだけではなく、空軍規則やSOPについての質問もあります。単純にFAAの知識だけでは合格できないようになっています。

Instrument Examはクラブ機をInstrument Flight Rulesで飛行しようとするInstrument Ratingを持っているパイロットを対象とし、Instructor Examはインストラクターとして活動するパイロットを対象としています。

有効期限は1年となっていて、それ以降は毎年受験及び合格が必要となります。これも空軍本部の規則として全米のクラブで実施されているルールです。

Make and Model Exam

クラブ機の機種毎の学科試験です。陸上単発機という大きなくくりではなく、各機種毎という試験です。Pilot's Operating Handbook(POH)を参考にして勉強しますが、資料を見ながら解いてもいいOpen Bookの問題と、インストラクターの前で資料を見ないで解くClosed Bookの問題があります。Closed Bookには緊急操作やV-speedについての問題です。

Cross-Country Exam

一旦空軍基地に設定されている空域(通常はFAA Class CやDと同じ)の外に出てしまうとアメリカであればFAA方式の空域、そして日本であれば日本の空域となります。特に日本の空港周辺に入ったり、着陸したりするとなるとFAAとは異なるJCABのルールを知る必要が出てきます。

これは通常であれば初回のみの受験と合格が要求されていますが、後述するCurrencyが切れた場合には再受験が必要となっています。

これも空軍本部の規則として全米のクラブで実施されているルールです。

このような手順を経てフライトチェックに臨めること。フライトチェックでは何をして、メンバーとしての権利を行使するための義務を、実は入会の時点で3時間ほどかけて次のIndoctrination Briefingとして説明しているのです。

画像5

Indoctrination Briefing

膨大な量なので、チェックリストを使用しながら説明する内容を網羅します。FAAパイロットとしてアメリカで飛んでいた人たちの表情を見ると玉那覇が最初に受けた印象とあまりにも同じなので笑ってしまします。軍のパイロットからはそのような表情はなかった記憶があります。民間とは違うそれなりに厳しいルールを日頃から経験してるからでしょう。

I know it's too much, but....this is the rules for our safety.

こうやって通常数日をかけて準備をしてやっとフライトチェックに臨めるのです。それは次回お伝えします。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?