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スクール選び?それよりもっと重要なこと

Flyingと言う雑誌で取り上げられた記事。

たくさんの雑誌やコラムそれぞれの有利な点と不利な点が紹介され、いつの時代も学校選びの悩みの種であることは間違いないでしょう。

玉那覇自身は訓練生としてはPart 61で訓練を受けました。教官としては非常にユニークなところでした。米国空軍の管理下に置かれるフライトトレーニングセンターは全てPart 141が基本でPart61も併設される仕組みです。しかし玉那覇が勤務したのは米国本国ではなく日本だったのでPart141が発行できなかった。今思えば米軍とは言え連邦航空局から許可が出なかったのは不思議です。米国空軍フライトトレーニングセンター本部から定期的に実施される監査はPart141の方式で実施、それに加えて空軍規則の監査が加わるのでそれ以上の厳しさで実施されていました。

本部から来る監査官は空軍ロジャーシャープ大佐で、厳しくも丁寧にしっかり指導してくれました。監査官と言う立場で規則の遵守徹底を確認され、安全にトレーニングを実施するために設定されたシラバスの実施の背景にある訓練のノウハウを教えられました。この人日本人じゃないの?と思えるほど細かい所までつつかれ厳しいなとも思いましたが、それが安全を証明する「保険料の安さ」の実現につながっていると数日の監査で実感できるものでした。

その経験からPart61でPart141の基準で実施しているところの良さを伝えていきたいと思います。学校選びというより、訓練生として何をすればいいのかを考えてみてみたいと思います。

訓練環境

Part61の有利な点の一つMore flexible training environmentとあり、逆の面を見るとLess structured training environmentともされています。一方Part141では有利な点としてMore structured training environmentとも言えますが、不利な点としてMay be too rigid for students not planning to pursue an aviation carrierとも書かれています。この点がまさに玉那覇が在籍していたスクールの両方のいいところ取りでした。

実例をあげて解説していきます。

アマチュアパイロットを目指す訓練生のケース

しっかりとしたPart141のカリキュラムで訓練を実施しています。訓練生のほとんどが米軍基地関係者なので本国アメリカに出張や休暇で戻ることが多々あります。そんな絶好の機会を見逃すはずはありません。アメリカ現地で訓練を受ける最大の優位性を活かすべきです。ノンタワー空港、FAAフライトプラン、FAAブリーフィング、クラスBやCと言った空域や空港、クロスカントリー、大陸上空の飛行、キリがありません。とにかく場数を踏ませる。経験値を増やすことです。

そして最も重要なのが楽しむこと。アメリカの空港にはほとんどと言っていいほど空港内のラウンジやレストランがあり、行く先々でたくさんの飛行機やパイロットと出会うことができます。

二つのポイントを伝えましたが、これってPart141では中々できないことなんです。カリキュラムで決められたところにしか行けない。全てのカリキュラムに組み込まれたレッスンの目的に沿って飛ぶ。楽しもうなんてミッションはない。友達家族と一緒に遊びに行こうなんてレッスンないですから。でもそこが玉那覇は一番大切と思っています。

飛行機って楽しいなあ。と体験からくる原点作りです。成功体験です。魂を揺さぶる、涙が出てくるほどの感動が、その後の容易ではないパイロット訓練を乗り越える原動力になると思うのです。

プロパイロットを目指していなかった訓練生のケース

前述の通り彼は40歳も超えてアマチュアパイロットになりたいと入学してきました。そんな彼が楽しく飛ぶことを一番目指していたのです。色々なところで経験をつける中で彼の気持ちが変わった時がありました。私に「俺インストラクターになる」と言ってきました。「こんな楽しい世界を人に伝えてお金もらえるって最高じゃん」

自由な空を 感動の空を エキサイティングなアメリカを感じたんですね。

彼は空軍退役後アメリカに戻りインストラクターになるべく訓練を受けていたのですが、そのインストラクターからエアラインパイロット目指したら!との一言で人生一転。エアラインパイロットもしながら、休みの日にはインストラクターとしても飛べるよ。とのアドバイスに一気にフルスロットル状態。40歳半ばでエアラインパイロットになり、ボーイング747まで乗るパイロットになっています。

40歳超えての新しいことへの挑戦は大変だと思います。彼にとって揺るぎない成功体験が原動力となっている証明です。

プロパイロットを目指す訓練生のケース

沖縄で飛んでいると行くところも限られています。洋上飛行ばっかりです。ほとんどの訓練生がアメリカでの飛行経験も持っています。もちろんたくさんの成功体験もあり、パイロットとしてやって行くという意思は固いです。そのレベルの訓練生に伝えるのは、たくさんチャレンジをアメリカでしてこい!です。

自分の限界を感じてこい。無茶をしなさいということではありません。限界に近いと感じたら現地教官と一緒に飛んでみて実際に体験してみなさいと言う事です。そうやって自分の知識と技術と経験を広げていくのです。

ここで二人のパイロットがいるとします。二人とも300時間の飛行経験。一人はいつも慣れてるところを飛んでいる人。もう一人はチャレンジをしている人。さてどちらのパイロットが経験値が豊富と言えますか?飛行時間だけはわからないところですね。

インストラクターを目指す訓練生のケース

確かに素晴らしいカリキュラムがPart141では組み込まれています。そこに柔軟性を持たせたPart61的な発想をアドバイスしていました。

子供に教えてごらん。

小学生の子を持つ訓練生に言ったアドバイスです。任せとけ!と言ってましたが撃沈され戻ってきました。カリキュラムで教科書のセオリーを勉強するのは大切なこと。でも実践では多種多様な背景と勉強スタイルを持った訓練生がいるんだよ。小学生にもわかる方法だと一番いいね。

沖縄でのFAA Part141とPart61から学んだこと

パイロットの実地試験にはオーラル試験とフライト試験があります。飛行機がある空港から離陸して試験官が指定した空港へ飛んでいく計画書をオーラル試験とフライト試験で確認します。

嘉手納基地飛行場に飛行機がありそこから離陸して目的地は近隣離島の空港です。そこは日本です。初代から継続されるチーフインストラクターと試験官のポリシーは取得する資格がFAAであればアメリカ国内であればどこでも飛べるくらいの知識は持つべきだと。

そこで訓練生には負担が大きいのですが、オーラル試験ではアメリカの空港を離陸し、アメリカの空域を飛び、当然アメリカの航空情報や気象を入手して分析する能力が求められています。なので飛行計画書を二カ国分作るということになります。なのでグランドスクールも座学も多くの時間にFAA方式を勉強します。

そのような背景があるので、訓練生がアメリカに帰国した時に現地でフライトをすることについては強く推奨されることなのです。

スクールはクラブという側面もあり、メンバー全員が毎月定期的に集まって勉強会をしています。これは空軍のルールで義務なのがすごいところです。強制的に勉強する機会を作り出すのです。アメリカでの飛行体験を共有したりするのですが、何よりも四軍(空軍、陸軍、海軍、海兵隊)所属のパイロット達や訓練生が集まって航空ネタを話すのは楽しい!ハンガートークってやつです。

たくさんの経験をつけされるという点は、沖縄にいるという環境下では物理できに不可能でしたが、米軍からの指示でフライトシミュレーターの導入が決まり、それを使っての訓練はもちろん、教官達のレッスンの研究にも活用し、教官達に対しては強制的にアメリカでの計器進入を定期的に実施させて彼らの研修にも活用していました。

第一に楽しみながら、Part141に準じたしっかりとしたカリキュラムでPart61の不利な点を解消する。

FSOパイロットクラブでハンガートークを楽しみ、知識を広げ、フライトシミュレーターで経験値を広げる。遊びから入り実機では魂を揺さぶるほどの感動を味わう。厳しい訓練を乗り越えるためには、最初の段階ではそこが大切です。そしてある程度乗れるようになった時にも、アメリカの空を感じる事も大切なことなのです。



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