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クラブ組織が航空の裾野を広げ航空の安全を確保する理由

USAF Aero Club(米空軍エアロクラブ)という組織に長く関わってきました。飛行クラブです。私が所属していたクラブは常時100名以上、多い時で200名程度のメンバーが所属していました。米軍の四軍(空軍・海軍・陸軍・海兵隊)のパイロットだけではなく、士官・下士官・民間人という構成。民間人であれば小学生からリタイア組まで広い年齢層で構成されていました。

正式名称はAero Club / Flight Training Centerと言って飛行クラブと訓練センターという両方の側面をもっているのです。アメリカでも一般的な飛行クラブでは名称こそついていないものの、正式な訓練を提供するところが多いです。

そもそも訓練とは?という話ですが、資格取得のための訓練もあるでしょう。資格維持・技量維持・リフレッシュ訓練などの訓練もあります。

アメリカでも〇〇航空大学とか〇〇フライトセンターとか、専門的にパイロット訓練を提供するところもあります。日本の航空大学校や私立の〇〇大学の操縦学科と言う大学機関であったり、〇〇航空と言うフライトスクールとして訓練を提供するところです。国内において基本的にはそのような場所は最初から目的を明確にもった選ばれた方々いる場所として、興味本位に立ち寄れる場所では無いと思います。残念ですが...

一方飛行クラブと言う組織は、パイロット資格を持っている人たちはもちろん、持っていない人達が集うところです。有資格者は自身の技術を磨くため、友人や家族と空の散歩をするため、資格を持っていないメンバーを連れて空の散歩をするためであったり、無資格者は飛行機を間近に感じながら、常に空の話が聞ける場所として、興味本位で立ち寄れる場所になっています。無資格者本人も、その家族も、友人もたくさんの人達が足を運んでくれる場所です。

クラブに所属するパイロットと飛んで時々操縦桿を握ってみて楽しんだり、クラブに所属する教官パイロットからの正式な訓練を受けることも自由にできます。遊びながら、気が向いたら訓練というスタイルもあれば、訓練を中心にしながら、たまには息抜きに遊ぶフライトをメンバーと楽しむ。これが飛行クラブの活動です。

実際にその現場でメンバーとして、そして教官パイロットとして活動に関わってきて確信しました。

クラブは航空の裾野を広げる原点であり、航空の安全を確保する場所である。

具体的な事例をあげてみます。

自家用操縦士同士のメンバー

飛行機をレンタルして二人で飛ぶのです。お互いの友人家族を後部座席に載せる場合もあります。

二人で飛ぶ時は、例えば左席のパイロットは操縦する機長として、右席のパイロットはその補佐役として無線交信、チェックリスト、ナビゲーションなど役割分担をすることもあります。

左席のパイロットがフードをかぶって計器時間をつけるのであれば、右席のパイロットは外を見る責任あるパイロットとなって正式にログブックに時間が記載できるようになります。もちろん左席のパイロットは操縦をしているので当然機長としての時間は記載しています。

二人で費用を折半しつつ、効率の高い訓練をすることで、技量維持や次のステップに繋げるためのフライトができるのです。

航空の安全に繋がります。

仮に後部座席に無資格者が乗っていたら、その方々は興味津々で前の様子をみていることでしょう。飛行中にもたくさんの質問もするでしょう。飛行後も、撮影したビデオを見ながら質問の嵐(笑)興味を持ってきたらやってみたくなるものです。自分の友人家族がいとも簡単にしかもカッコよくやっている様子を見ればやりたくなるものです。

一人二人と航空に興味をもちパイロット資格を取得したくなる人が登場ということです。

航空の裾野拡大に繋がります。

自家用操縦士と無資格者とのやりとり

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そんな方々はパイロット資格を持っている人にたくさんの質問をしてきます。それを答えるパイロットがいます。しかし全部は答えられないのが現状です。自分は知っているつもりで飛んでいるけど、知らないことを聞かれることも多々あります。

そんな時には私たちの教官パイロットへ聞きにきます。〇〇って聞かれたけど、これって何?

素晴らしい質問です。知らないことを知る。その聞くという姿勢がそのパイロットを成長させます。

玉那覇の上司はすでに1万時間を軽く超えるパイロット。その人は授業前にはしっかりテキストを広げていたし、毎月届く航空雑誌には必ず目を通していました。その彼に私からもう勉強しなくてもいいんじゃ無いの?彼の答えは

Never End. A good pilot is always learning.

そして彼が私を採用したときの言葉を思い出しました。

You don't have much teaching experience? You are here to gain your experience, right?

そしてさらには試験官だった彼が合格後に必ずいうセリフ

This is the license to learn.

そう常に学びなのです。

パイロット有資格者と無資格者が混在するクラブでは、日常の中で無資格者からの質問を有資格者が答えるシーンがたくさんあります。そうやって有資格者は日々勉強になるのです。

航空の安全に繋がります。

有資格者の教官パイロットへの道

FAAにはPilot Certificate(パイロット資格)とは別に、Instructor Certificate(教官資格)という資格が存在します。Instructor CertificateをさらにGround Instructorという座学教官という資格、Flight Instructorという飛行教官の資格に分けて存在します。

パイロットであることとインストラクターであることは別物という考え方です。コーチング先進国アメリカならではの考え方だと思います。

玉那覇も次の3つのCertificateを保持しています。

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FAA Airline Pilot Certificate

FAA Flight Instructor Certificate

FAA Ground Instructor Certificate

所属していたクラブではパイロット資格を取得して100時間を超えたパイロットに対してGround Instructorの資格取得を勧めてました。

彼ら彼女ら自身もクラブ活動の中で無資格者として参加し、有資格者となり、無資格者とのフライトやクラブ活動を通して学びを体感してきた方々。今度はオフィシャルに教える立場となることを勧めるのです。

資格取得という新しい目標が設定されると、更に無資格者に対しての教える練習に気合が入るのです。自分自身の勉強の質が向上する。

航空の安全に繋がります。

そうしてGround Instructorとして活動を始める。

航空の普及に繋がります。

Ground Schoolの講師

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Ground Instructor資格を取得し、所属していたクラブのルールとして飛行時間100時間を超えたメンバーに対してGround Schoolの講師をお願いしていました。もちろんFlight Instructor資格を持ったメンバーも参加しています。

飛行時間100時間とはCommercial Pilotになるための時間にも足りません。

いいんです。飛べることと教えることは違うことなのです。

要は教えることを学びの一環として位置付けているのです。

FSOパイロットクラブではその発想で活動します。ハンガートークという経験の共有をする場所であり、航空の普及と安全を目指せる場所なのです。










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