前略ふう

中学生私「生物学上は女」

※先述いたしますが、これはジェンダー的な話ではなく、いわゆる黒歴史的なイタイ話です。

私がリアル中学生の頃、「前略プロフィール」という自分のプロフィールを載せて交流するウェブサイトが流行っていた。

ハンドルネームから始まり、生年月日、性格、職業、好きな女性、男性のタイプ、似ている芸能人、嗜好品、兎に角主張したいこと、ここだけの話、などたくさんの項目が用意されていた。
(詳しくは前略プロフィールで画像検索すると雰囲気つかめると思います。)

みんな「前略」と略し、○○の前略みたんだけど好きな女性のタイプ更新してたね※1、とか、ここだけの話のところ意味深じゃね?なんて話した記憶がある。

今の子がLINEのアイコンやひとことで自己アピールするのと同じ感覚で、当時の私たちはもっと直球に自分のプロフィールをカスタマイズして、交流や水面下での探り合いを行なっていた。

(この前略プロフィールについて書きたいことがたくさん湧いてしまったので、また別途で書こうと思う。)

そしてそのころの私といえば、それはもうガッツリ中二病にかかっていた。

それも、斜に構え鋭い切り口で物事を切る私カッケー的なアレと、みんなと違う私デンジャラスandミステリアスでカッケー的なアレとのハイブリッド。最悪。

もちろん前略プロフィールでもそれは遺憾なく発揮され、他の子とは違うデザイン!(背景色と文字の色が選べた)、他の子が答えないような質問!(何に答えるかは自由に選べた)と必死だった。

「今一番欲しいもの」
自由な時間
(謎の多忙アピール)

「世界平和に必要なのは」
そんなものない
(殺伐アピール)

「前世」
どこか遠い海の魚
(いきなりどうした)

「よく使う路線」
萌え路線?
狙っちゃいます的な??藁※2
(ズレた回答お見事です)

とかなんとか頑張っていた。
しかし中二心を満たす会心の一撃はなかなか放てず、

「嗜好品」
嗜む程度

と答えた友人の才能に嫉妬していた。

なんとかそれを超える究極の回答はできないものかと試行錯誤したり、他の友人らの前略をみてアホだなと見下したりするそんな最中、私は史上最強にクールな回答を産み出してしまうことになる。

そう。
もうお気づきかと思うが、

「性別」

生物学上は女

である。


これの何がイイって、まず「生物学上」という響きの頭の良さ。
え?なに?生物学ってなに?賢い人なの??
という反応がくるに決まっている。

そしてさらに、生物学上は女、つまりは生まれ持った体を学問的に分類するとそうですよね、という己を俯瞰して突き放す冷たさ。
確かにそうだけど!フツーそんな事意識して生きてへんやん!自分に対して冷静で客観的すぎん??
と恐れ慄くに決まってる。

極め付けは、分類はそうだけどね、という含みのある言い方。
まさか!!え?女と言い切らない何かがあるの??デンジャラスandミステリアス…!
と一目置かれるに決まってる。

そんな感じで、中学生私は「生物学上は女」という会心の一撃を放った。

当時その記述に対して何か言われた記憶は1ミリもないので、どう思われていたかはわからないが、私は最高にキマっていると思っていた。

こんなにクールでデンジャラスandミステリアスな私最高では??と真面目に思っていた。

それから数年が経ち、私が中二病という概念を知り、中二病とかwwwと高二病を発揮している頃。
ネットの書き込みで「痛い女の言動あるある」として「生物学上は女」が挙げられていたのを目にした。

え??待って??!?
なんで私の発言知ってるの???
私の前略プロフィールみた?????

冷静に考えればそんなはずはない。

よくよく調べてみれば、全国各地津々浦々、痛い女子たちは皆「生物学上は女」と口にしていたらしい。

誰かが言い始め波及していったのか、それとも痛い女子は思いつく運命なのかはいまだ知る由もない。

が、私からしてみればその言葉は自力でたどり着いた最高にクールな回答であったので、まさか他の(それも痛い)女子達がこぞって使っていたことに驚いた。
と同時にどこか悔しくもあった。

私の会心の一撃は、痛い女子のテンプレだったんだ…。

いやでもそれは、私はデンジャラスandミステリアス系中二病たちの「正解」に知らずのうちにたどり着いていたということでは…?

そう。
私はある種、痛い女子として「完璧な回答」を自力で産み出したのだ。

今でこそ、ネットを通じて様々な人の痛い言動が入ってくるし、中二病という概念は、言葉が死語になりつつあるくらい浸透している。
当時は中二病というスラングがネットで普及し始めた頃で、ガラケーで前略やCROOZブログや@peps!をポチポチ更新する我々にはなかなかまだ届かない頃だった。

そんな時代の中で、近い年齢の痛女子(イタジョシ)たちか己の痛力(イタヂカラ)で一つの回答にたどり着くって、なんだか奇跡のようではないか。

そう思えば、なんだか素敵なことに思えてきた。

だから、私の「生物学上は女」という回答を産んだその才能だけは、今でも誇らしいなと思うようにしている。



※1 好きな女性のタイプの項目
主に恋人のいる人間が相手の名前+ポエムを添えたりする場所
片思いの人間はそれとなく匂わせる絶好のスポットとして利用
しかし一番みんなが気にかけていたのは異性の回答ではなく、同性の友人の回答だったりもした。
仲のいい友達の名前を書いて友情をアピールするのが流行っていたので、そこに自分の名前や自分と思わしき記述があるかどうかは結構重要なことだった。

※2 藁
文末に添える「笑」の意味。
私は「笑」を「藁」にして使っていた。
「www」がまだそんなに広く使われる前だったように思う。
オタクの人たちもまだ

(ヲイ
(氏ね
(笑
とかやってた記憶がある。
メール世代の我々は
(笑
(ヮラ
(わら
*ワリャ*
みたいなバリエーションがあって、オタクの人たちのノリをいっちょかみしてた私は個性を出すために藁に変換していた。
たしか手紙などの文面でもそう書いていた。
そして後になって他の人も使っていたことに気がつ(ry


追記

「生物学上は女」がクールだという表現は、当時無知な中学生であったこと、みんなと違う自分に酔う思春期特有の感覚に由来するものなので、実際の生まれ持った性に疑問を持って悩んでいる人やそういった問題を揶揄したりする意図は全くありません。

また、中二病や生物学上は女というワードに対してのネットや周囲での普及率は当時の私が肌で感じていたものなので、実際の調査やデータを基にしたものではありません。

最後に、「生物学上は女」と言っていたことがある人がいたらどんな経緯でそれを言い始めたのか興味があるのでコッソリ教えてくれたら嬉しいです。

#エッセイ
#前略プロフィール
#黒歴史
#生物学上は女
#中学時代


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