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私とサウナ

「え?サウナのためにわざわざ名古屋まで行くの?」

私はそう聞き返した。

サウナは嫌いなわけではないが、別に好きでもなかった。銭湯などでも、自分からサウナ室に向かうことはなく、サウナを満喫する友人を横目に、そそくさと脱衣所に向かうタイプの人間であった。

「名古屋には、日本最高のサウナがあるらしいんですよ!」

2018年11月。サウナシュラン2018にて堂々の1位・名古屋「ウェルビー栄」、および聖地・静岡「サウナしきじ」をはしごする旅行に誘われ、深く考えずに着いて行ったことがきっかけで、私は目覚める。

名古屋・ウェルビー栄

大学時代に学んだ、現実刺激によるフラッディング法。最初から最も強い刺激にさらすことで強い効果が期待できるという、認知行動療法の手法である。

日本最高のサウナとの呼び声が高い、ウェルビー栄。その激しいロウリュとマイナス25℃のアイスサウナをいきなり体験したことは、まさに、フラッディング法の状況に当てはまっていた。

アイスサウナ後に休憩をしていると、自分の身体がドクンドクンと脈打つのがわかる。こんな世界があったのか、と気付く。

静岡・サウナしきじ

名古屋・ウェルビー栄での一泊後、興奮さめやらぬまま、聖地と呼ばれる静岡・サウナしきじに向かう。

もはや、何も考えずにサウナにただ身を任せる。

蒸気が噴出しているときの薬草サウナの熱さ、天然水の水風呂の肌触り、滝の音の大反響。

決して広くない浴室空間なのだが、精神は身体を抜け出し、大自然にいるようにも錯覚する。

それから

生活の節々にサウナが入ってくるようになる。

出張時の宿泊先は、サウナを基準に決める。ドラマ・サ道でのホームサウナにもなった、上野・サウナ&カプセルホテル北欧は至高である。ドラマ放映により北欧が大混雑していたときに選んだ神田・セントラルホテルは、ビジネスホテルの割にサウナもよかった。

旅行の宿泊先も、できればサウナがあるところがよい。サウナシュラン2019・特別賞、ドーミーイン金沢のサウナはヒーリングミュージックが静かに流れ、サ室→水風呂→外気浴の動線も自然で、とても落ち着くものだった。

サウナシュランに入力したサ活の記録によると、2019年は約48回、ほぼ1週間に1回はサウナに入る生活となった。

東京・高円寺の小杉湯では、銭湯を「ケの日のハレ」と表現しているが、まさにその通りだと感じる。日常の延長の中で、自分の機嫌を自分で取るための方法、それがサウナであると思う。

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