学力別にすることは問題か?

イギリスのセカンダリという中·高校にあたる学校では、総合的な学力別にクラスを分けたり(Streamingと言います)、科目ごとに学力別にしたり(Set)と言います)することが普通です。プライマリと呼ばれる小学校では、KS2(Year 3-6)から分けることがあります。

この学力別は、Big Fish in Small Pondと呼ばれる心理効果(小さい集団でできると思うほうが、より高みを望む心理)からすると、いい面もあります。
いわゆる鶏口牛後、芋頭でも頭は頭、大鳥の尾より小鳥の頭ということです。

この心理効果を利用してか、イギリスの小学校は、人数が少なくなっています。1学年あたり2、3クラス(1クラスあたり30人が公立の標準、私立では、20人)が通常となります。大きい学校だと、学校長との距離が開くので、目が届かないことが減る。という意味もあるのでしょう。


カウンシル(市区)のスポーツ大会でも、公立私立問わず、

  • Small:1クラス/学年

  • Midium:2クラス/学年

  • Large:3クラス/学年

で分けて結果を出し、競争を絶対的にはしないのです。


能力がミックスしたクラスでいると、自分は普通。が、能力分けされると、自分はそのクラスでできる方。できると、思えると、もう少し頑張りたくなる子には向いています。どちらにしてもできない方、となっても、トップと離れるので、歯が立たない、頑張る意味がない、と思うことはなくなるという心理です。

が、小さい集団では、リソース(教員数と部屋数)がない限り、分けられる段階(クラス数)が限られるので、イギリスの小学校レベルではしない場合もあります。それは、通常、学習態度と学力は正比例するので、学習態度の悪い子ばかりが集まると、そのクラスの上のレベルの子は、足を引っ張られすぎる場合が多いからです。


フィンランドでは、学力別にクラス分けすることは禁止されました。というのも、学力別に分けることで、できる子どもたちには大きなメリットはないが、低いレベルに分けられた子たちには、自分はできないとレッテルを貼ることが多く、また、学力が伸びに頭打ちがあるというデメリットが大きいからです。

学力別が禁止、私立ででも、指導要綱に沿うようにきめられて依頼、国別の学力テストで1位から16位に落ちたとも言われていますが、トップレベルの学力比べを重視しておらず、全体の幸福度を重視しているので、特に大きな問題はないそうです。また、フィンランドでは、学力に差のあるクラスでも、先生が全員にチャレンジできるようなトレーニングもされているということです。


一般的に考えても、態度や考え方があまり良くない方の子たち同士が集まれば、態度や考え方が更に悪化するのはよくあることですし、いろいろな子たちが交わるのは総合的にはいいことなのはわかります。

が、よりできる子をできるようにするため、また、できる子が更に高みを伸ばすためには、この方法では、効果は低いことは確かです。が、学力の高い子への影響は、ほぼないが、子供が平等に扱われることで、より多くの子供達が高みに登れるなら、そこは、目をつぶって、本人及びその家族次第、というところに任せるのは、国としては、全体をよりよい方向に向かわせることが一番ですので、よりメリットのある方法と言えます。

つまり、正規分布でいう、平均を中心の大多数を伸ばす、ということを考えるのが、国の役目ですので、能力別にしないほうが良いことはわかります。

正規分布

飛び抜けてできる子供は、自分たちでなんとかしなさい。ということになり、飛び抜けてできない子は、子供の家庭、もしくは、能力そのものに特別な措置がいるということで、補助が入るわけです。子供には、機械を与えることが、何よりも大事で、リソースには限りがあるわけですから、飛び抜けてできる子の面倒まで見ていられないのです。

ところで、イギリスでは、選抜式の学校が、社会の流動性を止めているという考えがあります。ですので、選抜式公立も私立も諸悪の根源のように扱われることがあります。このことについては、次の記事で書いて行こうと思います。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?