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「直接的な経験」(2020年9月)

●9月4日/4th Sep
もうすっかり影が薄くなっているが、2月に出版した鎌田先生との対談本「ヒューマンスケールを超えて」を読んでくれている人がいるみたい。
この本は、宗教学者との対談ということもあり、長いスパンで地球の文明を捉えたものだが、そこで予想していたことがどんどん現実化している。
ビフォアコロナにかいたけど、ポストコロナにこそ読んで欲しい本。
あとがきより
「『もう何をやっても地球は長くは保たないのではないか――』。2020年を迎えたいま、そんな思いが誰の頭の中にも浮かび始めている。だがいまの文明にはもはやオルタナティブが用意されていない。一方で『持続可能な開発』という題目だけは勇ましく唱えられ、世間は大騒ぎしている。しかし、その〝持続可能〟が何を意味するのかは依然として曖昧だ。地球環境は人間にとっていよいよ不都合な状況となりつつある。そんな危機的な状況にもかかわらず一向にまとまらない人類の問題の真の原因とは何なのだろうか。――本書『あとがき』より」
ヒューマンスケールを越えて – 頭で「分かつ」世界から生命のリズムや流れと「共にある」世界へ – (鎌田東二・ハナムラチカヒロ)
https://beyondthenexus.com/beyond-human-scale/?fbclid=IwAR3MnrqR1Wwg_HnLeZTv7OEMLxrATJaFqN-fvnnH1B7v1UuqyXleEDqfXek

●9月6日/6th Sep
この数千年の人間の進化は、意識領域の中でメタ認知が発達していった度合いと考えて、今のところほぼ間違いなさそうだ。メタ認知は直接的経験を脳内で改めて認知し直す間接的経験なので、我々が意思決定する前に脳が既に決定しているという話は、メタ認知が後からやってくると解釈するのが妥当だ。認知とメタ認知の間に半秒の時差が生まれるのは何の矛盾もないように思える。
いずれにせよ、メタ認知の発達は今の科学や文明の発達をもたらしたかもしれないが、かつてように他の生き物たちと一体的に分け隔てなく把握していた世界とは見え方が全く異なるのだろう。直接的な経験に浸っているならば、生き物を殺すことをまともにするのは難しいはずだ。
結局のところ、言語を介した間接的な経験が主流となり、直接的な経験の機会が失われていることが今の破壊的な文明の原因でもある。前著の「ヒューマンスケールを超えて」では宗教学の立場からそんな話を紡いだが、真意が伝わるにはおそらく時間がかかるだろう。
海外の哲学の議論や人工知能の議論ではそんな話が自由にされる場がまだありそうだが、日本ではどの学会でそんなディスカッションが出来るのか。少なくとも僕のメイン学会ではとてもではないが難しい気がする。というよりどの学会でも専門に特化していきがちなので、そんな大きなフレームワークの話をする研究者はマイノリティなのかもしれない。結局は話が出来る研究者と個別にしていくしかないのか。

●9月13日/13th Sep
3年前に東欧で撮影に参加した映画「Bread, Salt and Heart」。コソボのあちこちでエチュード的に作ったがとても楽しかったが、こちらもいくつかの映画祭で受賞しているみたいだ。
一緒に共演したマキさんやべシムさんは元気にしてるだろうか。またこの災禍が落ち着いたらコソボを訪ねよう。
https://www.facebook.com/filma.ks/videos/280644765785300

●9月15日/15th Sep
マネジメントの学部生の卒論ゼミも後半戦に入ってきた。前期はzoomでの遠隔ゼミだが、後期はようやく対面で出来る。僕にとってはマネジメントで卒論を見る最初で最後の学生たち。好きな研究対象を選ばせてみると、かなりの多種多様なテーマになった。
今日の学生は昨年から今年にかけて大ブレイクした漫画「鬼滅の刃」を対象にして、そのコンテンツ分析から人気の秘密を探る研究。始めるまで読んだことも無かったが、読んでみていくつかなるほどと思う視点があった。
ひとまず現在までの全21巻の187話と登場する102キャラクターをコンプリートしたマトリクスを作ってそのデータからようやく分析が始まる。
その他にもジャニーズ研究やディズニーランド研究、食パンブーム研究や音楽サブスクリプション研究などもあり、文化コンテンツのコンプリート系が多くなりそうだ。学生たちと一緒に論文書き終わると、随分と詳しくなっていることだろう。

●9月16日/16th Sep
お金の話を書き進めているが、読み手の前提となる知識の見積もりが難しい。お金の発行の仕組みを理解しているとすれば、MMTの話とかいきなりしてもいいのだけど、やはり通貨、中央銀行、信用創造、国債、マネーサプライ、マネーストックといった基本的なところから説明した方がよいのだろうか...。

●9月21日/21th Sep
ビジュアルコミュニケーションの会社、アマナさんに取材頂いた記事が、アマナトのコーナーでも取り上げて頂きました。コロナ後のまなざしについて少しだけ語っています。
インタビューされたアマナさんがとても熱心に理解しようと努力されておられたことに誠実さを感じた。やはりそう簡単に理解できることではないのだなと改めて。先日の講演でも感じたが、課題図書になっていた「ヒューマンスケールを超えて」は受講生にはとても難しかったらしい。理系の研究者なので、きっと何かノウハウを得ようとするモードで読んだのかもしれないが、そのモードでは全く役に立たないと思う。
これからの世界の予測については伝えたいことはたくさんあるが、社会には聞く体制が出来ていない多くの方々もいる。そういう意味では媒体では限界も感じるが、こうして一部だけでも取り上げて頂けることに感謝しかない。
ご関心ある方は是非。
ハナムラチカヒロさんが考える、コロナ後の“視点のデザイン”とは
https://visual-shift.jp/19214/?fbclid=IwAR1j_H80fcd1ufH8e0SAZ_zyzhw4P7R9Y_Qnbs2XOnPR36ajTR6PpToObyQ

●9月22日/22th Sep
執筆と思考に疲れ、この世界の混乱と欺瞞に疲れ果てた夕刻。地球の回転と太陽のティンクトゥーラが織りなす、毎日繰り返されるひと時の奇跡に、自分がなぜこの世界に生きているのかをもう一度思い出す。

●9月30日/30th Sep
恒例の半断食期間。この期間は玄米しか食べないが今日で6日目。今回は執筆しているせいか、これまでにも増して食べることを意識しないようになっている。しかも短期のハーフでしているのでこのまますぐに終わってしまいそうだ。
瞑眩反応も初日2日目ぐらいで、後はずっと身体も軽い。次の本でも少し触れる予定だが、人間の消費の中心が食であり、現代の病理が消費への欲望から生まれるなら、食を克服すれば大方の問題は解決するはずだ。
食欲のコントロールは全ての欲の制御の基本になる。理念的な所でいくら立派なことを唱えても、己の食欲の制御が出来なければリアリティもなくなる。

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