.LIVE(どっとライブ)と「反転」誕生の歴史

「.LIVEではこういう事件があって~」とか「これがきっかけで.LIVEが好きに・嫌いになりました」といった記事はよく見ますが、全体の流れに言及しているものは少ない気がしたので。

1.はじめに

株式会社アップランドの運営するVtuberプロダクション「.LIVE(どっとライブ)」では炎上が続いており(2020年1月時点)、登録者数の減少とファンのアンチ化(いわゆる「反転」)が止まらない状態となっています。
以下で触れる内容は、「事件単体での評価に限らず、今までの積み重ねも人離れの理由になっている」という話です。これがファンの総意である、というわけでは一切なく、現在でも応援を続けているファンも多数いる点にはご留意ください。

補足:「V」と「魂」について
ほとんどすべてのVtuber(V)にとって、中の人(魂)の話題はご法度となっています。
(Vtuber業界の先駆け、キズナアイが「(自称)AI」という設定を打ち出して活動していたことに起因すると思われます)
結果として「魂」の話題は5chなど演者本人の目につきにくい場所に限られ、匿名掲示板の性質上「魂」の過去の不祥事や人間関係などに結びつけられて攻撃されやすい土壌ができあがっています。
本記事ではファンが反転した原因のいくつかとして「魂」の情報にも触れる都合上、そういった攻撃的な場の意見も反映されていることは注意点として述べておきます。

2.幽閉事件

最初に.LIVEの運営体制が疑問視され始めたのは、2018年9月に.LIVE内のVtuberグループ、アイドル部所属の4名が3Dおひろめ配信を行った後のことでした。
元々アイドル部は2D絵のアバターで活動しており、「登録者数5万で3D化」「登録者数10万でオリジナル曲」という目標を掲げていました。公約の通り、登録者5万人(厳密にはタイミングが前後したメンバーもいましたが)を達成した「北上双葉」「夜桜たま」「もこ田めめめ」「金剛いろは」が9月15日から16日にかけて初の3D生配信を行いました。
しかし9月中旬の初3D配信以降、上記4名の過去の2D配信が全て非公開となった上に通常配信も行われなくなり、それらについて運営がTwitterで言及したのは約3週間後の10月7日でした。

その際の告知も「ちょうど1ヶ月たちましたので」と期間を強調しつつも全く理由にはなっていないもので、現在でもなぜアーカイブが非公開になったのか、なぜ1か月以上通常の活動ができなかったのかについては明確に説明されていません。
(文面を見る限りでは3D配信の環境が整っていなかったようですが、2D時代の動画を隠したり、準備期間中に2Dで配信させなかったりした意図については不明です)

ただ、この時点では一部のファンが運営に対して若干の不信感を募らせた、という程度の問題でしかありませんでした。他のアイドル部メンバーが不在メンバーの穴を埋めるように精力的に活動しており、「運営が多少信用できなくても頑張っている演者を応援しよう」という風潮が主流だったためでしょう。

3.ゲップランド騒動

.LIVE自体が比較的大きく炎上したのは2018年11月19日、あるTwitterアカウントからの漫画形式での告発でした。おおむね下記のような内容です。
・明らかにアップランドであると示唆される会社に友人の紹介でVtuberの「魂」として採用された
・声優事務所を辞めて準備をしていたが、「まだ関係はフラットである」としてアップランド側との契約締結、具体的な活動開始が引き延ばされ続けた
最終的には連絡に対する返答もなくなった

これに対してアップランドが翌日Twitterに(無言で)投下したのは、黒地に極小の白文字がびっしり書かれた3枚の釈明文画像と証拠画像でした。(後に公式HPにもほぼ同内容の声明文を発表しています)

・告発内容にはいくつか事実と異なる点がある
・企業イメージが傷つけられたことに関して弁護士と協議している
企業がビジネス文書として発表するにはあまりにずさんな内容と形式告発内容が全くの事実無根ではないと認めている点など、対応に疑問は多くありましたが、どのファンコミュニティでも.LIVE側擁護意見が多数で、むしろ主張に矛盾点の多い告発側を批判する流れが主流でした。
(告発側が別のVtuberの「魂」として活動開始した後の言動などを見る限り、実際あまり誠実とは言えない性格だったようです)

結局表立った動きは以降ないままこの騒動は風化し、.LIVEリスナーの間でも言及されなくなっていきました。

4.黄金時代(hPa)

いくつかの問題は発生したにせよ、.LIVE自体は順調に勢いを伸ばしていました。
特に2019年5月19日に開催されたアイドル部1周年記念のライブイベント「はんぱないパッション(hPa)」は現地勢・配信勢合わせて推定約15000人が参加し、チケット代だけで1億円を超える金額が動いたとも言われています。(あくまでファンによる試算で公式発表ではありません)

しかし、.LIVEはこの時点から一部では「価格設定が異常すぎる」とも言われていました。
・hPaのネット配信チケット 9,990円
・「花京院ちえり」オリジナル曲+限定ボイス 5,555円
・東京観光ツアー(1泊2日) 33,980円
・1周年記念グッズセット 15,000円
ファングッズの適正価格などは一概に言えませんし、値段に納得した人が買えばいい、という話ではありますが、これらが全てhPa前後の数日間で一斉に販売・発表された、と聞けば否定的意見が挙がることも納得されるのではないでしょうか。

また、1周年記念セットには、アイドル部メンバー「八重沢なとり」が「カルロ・ピノ」の誕生日にプレゼントした手作りの絵本「ありのおひめさま」が含まれていました。これに対しては「贈られた演者が読み聞かせ配信で感極まるほど思い入れのあるプレゼントを売り物にするのはどうなのか」という批判もあり、「カルロ・ピノ」本人が「自分の宝物ではあるが、運営と話し合ってファンの人たちにもお裾分けしたいと決めた」という旨の発言を行いました。

この後.LIVEで起きる問題を知っている方々には、一部ファンの間で「.LIVEはファンの事を軽視して十分な説明をしない」「不始末が起きた時に一番に(そして多くの場合唯一)フォローに回るのは演者」とすでに認識され始めたことがお分かりかと思います。

5.モンペ騒動

(1/22追記)
.LIVEがファンに対して十分に説明をしない」姿勢は特に、イベント等の共演者について顕著に見られていました。
テレビ朝日のバラエティ番組「超人女子戦士ガリベンガーV」では、スペシャル回を除き10回の間「電脳少女シロ」とアイドル部のメンバーから二名の計三名が出演する形が続いていました。しかし2019年4月18日放送の放送では、出演者が「電脳少女シロ」「北上双葉」、(以前から交流のあった人物ではありましたが)個人Vtuberの二人組となった上、観覧席の演者が他の出演者の話を遮って発言するような場面が目立ちました。
(後の配信で「突っ込んだ場面ばかり抽出されて使われてしまった」という趣旨の発言をしており、これ自体はテレビ局の演出によるところが大きかったようです)
また、2019年8月24日開催の「超人女子戦士ガリベンガーV 激突!スーパーヒロイン知能大戦」および「電脳少女シロ生誕祭2」のゲストとしてVtuber事務所「にじさんじ」の所属メンバーが発表された際にも、同じ.LIVE所属のメンバー出演が発表される前の段階で、ほとんどこれまで交流がなかった演者もゲストとして呼ぶことに一部で疑問の声が上がっていました。
(これに関してもゲスト演者は「電脳少女シロ」のファンであることを明言しており、8月15日の「ガリベンガーV」放送での共演予定もあったことからの人選であったと思われます)
どちらの件も一言でいえば「テレビ局の都合」だったのですが、多数の「どういう意図か説明してほしい」という声に.LIVEは答えず、それほど多いとは言えなかった「.LIVEとは関係ない演者との共演は避けてほしい」という意見を大きく取沙汰し、特に前者の問題に対してはアイドル部プロデューサーの肩書きを持つ(実質的な運営の代弁者の)「ばあちゃる」が自身の配信内で「ゲストに対する個人攻撃はやめよう」と発言しました。
注意喚起自体は至極全うとは言え、割合としては決して多数派ではなかった過激派の声にのみ反応する姿勢を見せたことは、後の騒動における「否定的意見に対する攻撃手段の提供」という構図の遠因となっていくことになります。
(追記ここまで)

2019年9月14日からのよみうりランドでのイベント「VtuberLand2019」内の4週目「.LIVE WEEK」の詳細発表で、.LIVEリスナー界隈は荒れに荒れました。
「VtuberLand」は「upd8」「IRIAM」「hololive」「.LIVE」「にじさんじ」のそれぞれのVtuber事務所が1週間ごとにホールイベントやコラボグッズ販売などを行う形式でした。他の事務所のイベント出演者はほぼ全員が自社の所属Vtuberなのに対し、.LIVEは10月13日開催のホールイベント第三部「*ASTERISK 〜Halloween music party in Chieri-Land〜」出演者について、8月22日時点で自社所属4名・ゲスト4名と発表していました。
さらに8月30日に追加出演者が.LIVE所属1名・ゲスト4名と発表されたことで、当日の出演者は13名中8名が外部ゲストという状態となり、大きな反発を生みました。これは単純に自分の推しの出番が少なくなるのでは、という危惧以外に、追加で発表されたゲストに下ネタやきわどい弄りなど、いわゆる「汚れ芸」で人気を得ているVtuberが含まれており、彼女(あるいは彼)らを毛嫌いしている層が.LIVEリスナーに多くいた、という面もあります。

この炎上に対し、「ばあちゃる」が8月30日の生放送で発言した内容はさらに油を注ぐ結果となりました。
・直前(追記部分)にも他のイベントで外部ゲストに文句を言う層がいたが、「推しのためを思って言っている」という意識は持たないでほしい
・批判は外部ゲストでなく、自分や運営の意見受付にぶつけてもらいたい
上記だけであれば比較的常識的な注意事項だったのですが、この放送の直前には「電脳少女シロ」のオリジナルソング配信開始告知、放送前半には「もこ田めめめ」のソロライブ発表告知があり、ファンは発表を喜ぶ暇もなく苦言を聞かされるような状態でした。それに加えて、
・文句を言う層は「モンスターペアレンツ(モンペ)」だと思っている
・今回のイベントはたまたま「ちえりーランド」という名前に決まっただけ
・(放送時の低評価数について)1200は少ない、前(低評価芸を前提としたASMR企画の時)は4000くらいあった
など、ファンの感情を逆撫でする軽率な発言が非常に多くありました。

結果、ファン同士の間で「あいつはゲスト出演に苦言を呈していたからモンペだ」「金を出している側をモンペ呼ばわりするような運営を肯定するのか」「自分もゲストが多すぎると口にしてしまったが実は運営にモンペと思われているのでは」といったような疑念・内紛が発生することとなりました。
さらにこの翌日の8月31日、「夜桜たま」書きおろしの「電脳少女シロ」2周年記念イラスト(シリアルナンバー付き)が先着46名限定・46,000円で発売されることが告知されました。この発表は「電脳少女シロ」が毎日動画を投稿する19時に行われたため、動画を待機していた熱心なファンほど告知に気付けない構造となっていたことも少なからぬ批判を生みました。

「ばあちゃる」が配信内容について謝罪を行うと発表したのが9月2日、.LIVEが(相変わらず日付も責任者の署名もない)声明文を発表したのは9月6日でした。「ばあちゃる」の謝罪部分は下記のような内容(要約というよりは、ほぼ文章の転記・抜粋状態ですが)です。
・放送前のチャット欄でゲスト出演者を叩くような発言が見えた
共演者を攻撃する流れを看過できず、自分にヘイトを向かせることで場を抑えるため「モンスター」という言葉を使ってしまった
他にも失言だった箇所があった
また、.LIVE側も「これまで運営に送った意見は本当に反映されているのか」という批判に対して、10月中に配信で意見への回答を行うことをアナウンスしました。

以後、対立煽りだけでなく、.LIVEファンの間でも運営に批判的な人間に「モンペ」のレッテルを貼りあうような流れが続きます。
ちなみにこの時のホールイベントは当日に接近した台風19号の影響で中止となり、「ばあちゃる」が身を挺して擁護したゲスト出演者もそれ以外の演者も誰一人出演できない結果に終わりました。

6.ビリビリ動画進出

2019年9月11日、中国の動画配信サービス「bilibili(ビリビリ動画)」で.LIVE所属メンバーが長時間コラボリレー配信を9月13日から毎週2日行うことが発表されました。
これに対しては様々な「モンペ」意見が飛び交いました。
・.LIVE(特にアイドル部)はほとんど内部コラボを行うことがないのに、なぜ中国で解禁するのか
・アイドル部のチャンネルには(当時)字幕翻訳すらされていない自己紹介動画しかアップロードされていないのに、どうやって中国人のファンを増やすつもりなのか
・そもそも中国での認知度はほとんどなく、中国語が堪能なわけでもない.LIVEメンバーをいきなり中国で長時間配信させる方針は正しいのか
(余談ですが、このbilibiliコラボ企画は発表当日まで演者すら知らされていなかった疑惑があります)

そして実際にbilibiliでのコラボ配信が開始すると、「モンペ」意見はさらに苛烈になりました。
・ほぼ毎回のように機材トラブルで放送開始が遅れているが、運営より先に演者が謝罪しているのはなぜなのか
・YouTubeでは反応しないと明言していたスーパーチャット(投げ銭)について、なぜbilibiliでは積極的に反応するのか
・毎週6時間以上同じゲームを配信しているが、日本語でゲームプレイしているだけの実況を中国の視聴者が見ているのか
・配信するゲームもPUBGやOverwatchなどFPSばかりで中国でもそこまで人気があるわけではないと聞くが、本当に中国の視聴者が見ているのか

2カ月に渡り通常配信の予定を潰してまで行ってきたbilibiliリレーですが、全く登録者は増えず、配信にコメントするのは日本から来た既存のファンがほとんど、という状態でした。
また、発表当初から宣言していたアーカイブの公開は10月11日まで行われず、正規手段ではこれらのコラボ動画を視聴することは長らくできなかったこともファンの不満を生みました。加えて一部アーカイブ動画に録画ミスがあったことに対して、(投稿動画の概要欄でのみ)「bilibiliの仕様」と説明したことも不信感を募らせる結果となりました。
(個人ユーザーが生配信を録画していた時には、不思議なことに最後まで記録できていたとの証言があります)

7.「おはなし」

2019年10月6日、.LIVEアイドル部所属の「夜桜たま」がTwitterの自己紹介から「.LIVE所属」を削除するなどの行動をとり、さらに翌10月7日には何らかのトラブルを示唆するようなツイートを行いました。

さらに、同日この件に関して説明を行う生配信を行いました。
(以降の各メンバーの配信も含め、これら「お気持ち配信」はすべて運営許可の元行われています)

・自身のソロライブが平日に企画されていたため9月中に告知する予定だったが、担当者からの連絡が遅れていた
・確認したところ、「多忙のため後回しにしていた」という返答があった
・これまでも同様の連絡不足があり、改善を求めていた他、アイドル部メンバーに相談することもあった
・普段から良くしてもらっている人ではあるが、今回の件は自分のファンをないがしろにするような言動が許せなかった
・今日(10月7日)告知をする事になっていたが、ファンには現状をきちんと説明した上で、それでも納得して来てもらうのが筋だと思った
担当者とも話をして、改善の約束を取りつけてもらえた

これに対しては「モンペ」の意見としても「大したことじゃなくて良かった」「だって.LIVEだし」というような意見が主流でした。そもそも.LIVEのファン軽視や、連絡体制がずさんであることは周知の事実であり、改善を約束してもらったのならばそれで済む問題だと思われたためです。
ただし、ソロイベントを翌日に控えていた「もこ田めめめ」や、前述のよみうりランドの企画を進めていた「花京院ちえり」のファンを中心とした一部リスナーからは「このタイミングじゃなくても」という批判が多少強かったことは付記しておきます。

しかし、「花京院ちえり」が「こんな配信をすると聞いていたら止めていた」とツイートしたことをきっかけに事態は混迷を極めていきます。

続いて行った配信では、今後のイベントを楽しむ気持ちに水を差してほしくなかったためにツイートを行った、と釈明しています。

・ツイートは感情に任せてしまった部分があり、心配をかけてしまって申し訳ないと思っている
・今後もファンとの時間を大切にしたいと考えているため、まずは直近のイベントを楽しんでほしい
・「夜桜たま」の意見も自分の意見も、アイドル部全体の総意だとは思ってほしくない
・8月30日の「ばあちゃる」の発言は軽率だったが、ファンの事を考える気持ちは本物だと思っている

この発言は「夜桜たま」が明確に批判し、運営側が非を認めることで合意していた「ばあちゃる」(≒運営)の不手際を擁護する形となりました。一方で「夜桜たま」の配信内容に対しては「そのような意見は総意ではない」と(イベントのフォローのためとはいえ)否定してしまったことで、「自身は裏に隠れて擁護させる運営と黙って従う演者」というイメージが染みついていくことになります。
Twitterではアイドル部のメンバーが明日のイベント楽しもうという趣旨のツイートを次々に行い、さらに.LIVEが「話し合いを行う」として当日の配信予定キャンセルをアナウンス、「夜桜たま」は「落ち着きます」という言葉を最後にツイートすることはなくなりました

以後.LIVEが誰と何を話し合っているのか話し合いの経過はどうなっているのか、詳細は一切説明されず、「話し合いには数週間かかる見込み」というツイート等が数回行われるのみとなります。

アイドル部メンバーも通常通りの配信に戻り、メンバー間のTwitterのやりとり内でも配信内でも、「夜桜たま」は触れないよう指示があったかのように話題に出されなくなりました。また、それ以外のメンバー間の交流も目に見えて減少していきます。
この時期、アイドル部メンバー「猫乃木もち」のTwitterアカウントも2019年10月20日の投稿を最後に更新が途絶えていたのですが、「牛巻りこ」「木曽あずき」というさらに更新頻度の低いメンバーが在籍中(活動中とは言っていない)の状態だったため、表立って大きく騒がれることはありませんでした。
(10月9日の時点で突然「猫乃木もち」「カルロ・ピノ」の配信が中止になったことなどから、「配信で何か言おうとして止められたのでは」という不安の声はありましたが)

2019年10月30日、運営から10月中とアナウンスがあった意見の回答が(「期待していた」配信ではなく)文書で公開されると告知され、翌31日の昼頃に公式HP上にアップロードされました。
(日付はなく、署名の位置には「以上」と書かれているだけでした)
・コラボ配信は演者それぞれのスタンスを尊重していくが、今後増加を予定している
・スーパーチャットは演者のモチベーション向上につながるため、今後は反応を推奨していく
・連絡体制は人員を増加しており、今後改善していく
・アイドル部の問題については心配をかけているが、さらに数週間待ってほしい

「〇〇をしてほしい」という意見と「〇〇をしないでほしい」という意見が両方ある場合は回答しない、という斜め上の方針から打ち出された内容は、ファンの疑問や不満を解消するものとは到底言えませんでした。また、「夜桜たま」に関する話し合いは一向に進んでいないことをうかがわせ、「ファンに夜桜たまが受けた『後回し』の追体験をさせている」と評されました。
11月25日には事務所が意図して話し合いを遅らせることはない」と、責任はすべて演者にあるとも受け取られかねないようなツイートを行っています。

2019年12月1日、アイドル部所属「牛巻りこ」の活動休止が発表されました。

「牛巻りこ」は10月25日以降ツイートを行っておらず最後の動画投稿は2019年7月2日生配信は1月4日で、イベント以外ほとんど活動のない実質的「幽霊部員」状態となっていました。
11カ月の間ファンが問い続けてきた「なぜ通常配信が途絶えているのか」は最後まで.LIVEから説明されることはなく、活動休止に際しても「体調不良の治療に専念するため」と.LIVE側から発表されたのみで、演者本人からの動画やツイートでのメッセージはありませんでした

2019年12月2日、アイドル部所属「カルロ・ピノ」が心配をかけているファンに伝えたいことがある」と宣言して配信を予告しました。
「カルロ・ピノ」は「やりたくないことはやらない」と公言して細かな運営方針に従っていないように見えたこと、先述の10月9日に突然配信を中止されたうちの一人であったことなどから、内部情報の暴露、あるいは何らかの運営批判意見が飛び出すのではないかと見る向きもありました。
しかし、その後「カルロ・ピノ」の口から語られた内容は「モンペ」の認識とは大きくかけ離れていました。

自分の立場でないと言えないことがあるため配信を行った
・内容を運営に相談した際に止められたが、最終的には許可をもらった。発言に制限は加えられていない
・「夜桜たま」が批判することとなった運営の報連相対応についての不備は、存在は認識していたが、改善の下地はできつつあった
運営と演者では責任の重さが異なるため、安易な回答はできない。運営が悪意を持っているというようなことはなく、演者の要望が運営に制限されているといった事実もない
・「花京院ちえり」が表に見える形で問題に触れてしまったことは失態だと思っているが、自分も同じ気持ちだった
・情報共有に制限があったのは、内部からの情報漏洩が疑われる状態にあったためだった。また、メンバー間での不安をあおるような話もあった。そのためコラボ等の打ち合わせの場には運営が同席している
・運営の目の届かないところで発表があった結果、「親の心子知らず」となってしまった。ただしそれももう必要なくなる
聞いた話と自分で見てきた話が違っていたため、現状に向き合って考えを伝えなければいけないと思った
体制の改善については近いうちに発表できると聞いているので、待っていてもらいたい

「花京院ちえり」と同じく運営の不手際を認めながらも擁護して「夜桜たま」を突き放したこと、過去に「猫乃木もち」が歌配信を、「牛巻りこ」がフルトラッキング配信を制限されたという証言がありながら「特殊な事情のない限り制限はない」と断言したこと、「ファンに裏側を見せたくない」と言う一方でメンバー間の不和や情報漏洩というさらに大きな裏側の問題を持ち出したことなど、動画のコメント欄には多くのファンの失望と疑問が綴られました。
何より決定的となったのは、演者がどれだけ矛盾だらけの運営擁護をして非難を浴びようと、.LIVEは決して表に出て来ず、演者を守ってくれないという事実が知れ渡った点でした。運営と比較的配信頻度の高い演者が同じ考えを持っていると認識されたことで、運営に対する反転が一部演者に対する反転と同義になった(そしてそのフォローを運営がすることは一切ない)、ということでもあります。

8.契約解除・noteリレー・マネージャー部誕生

2019年12月4日、.LIVEから「夜桜たま」、そして「猫乃木もち」両名の契約解除が発表されました。

「アイドル部」の「卒業」でも「引退」でもない「契約解除」という裏側を否応なく意識させる言い回し、「本人から契約解除の申し入れがあった」「詳細な説明はできない」と情報を一切出さない姿勢など、これまでの.LIVEの体制が何一つ改善することなく終わりを迎えてしまったことに大きな非難の声が挙がりました。
「夜桜たま」だけでなく「猫乃木もち」の契約解除も同時に告知されたことで、表立った問題がほとんど見えていなかった状態からの離脱経緯についても満足な説明がないことに対して、一層批判の風潮が高まりました。
当然ながら、二人からのコメントやお別れ動画・配信等は一切ありませんでした
アイドル部所属「神楽すず」は、「文章で気持ちを伝えたいと思うので今は言及を控えさせてほしい」とコメントしています。

界隈は大きく荒れ、「夜桜たまが内部情報漏洩を行っていた説」「メンバー間の不和が決定的となり夜桜たま側が折れた説」「花京院ちえりとカルロ・ピノ、アップランド社員が共謀して夜桜たま側を追い出した説」など、妄想と憶測に基づくファンとアンチ(反転・対立煽りを含む)間の攻撃が絶えることなく続きました。

翌12月5日、最初にnoteで現在の自分の心境を発表したのは「神楽すず」ではなく「もこ田めめめ」でした。

続いて「神楽すず」「ヤマトイオリ」「金剛いろは」「八重沢なとり」「花京院ちえり」がnoteやEvernoteで騒動に対する心境を明らかにしました。
始めの投稿から最後の投稿まで約70分、まるで誰かから指示があったかのように連続で記事が投稿され、「メッセージを書くことも書かないことも選ぶことができた」とのことですが内容も(事件についてどの程度触れているかに大小の差はありますが)大まかには同趣旨でした。

・「夜桜たま」の配信については相談があったとは認識しておらず、大変ショックを受けた
・「花京院ちえり」「カルロ・ピノ」の配信は表に出すべきではないことを表に出してしまったと感じているが、彼女らの主張は間違いではないと考えている
・運営の連絡体制に問題は感じていたが、人員増加などで徐々に解決に向かっている
変わらずに活動を続けたいと思っているので、不安を感じていても自分たちを信じて応援してほしい
(要約部分が大きいので、各メンバーの正確なスタンスについては個別の記事をご確認ください)

ほとんどの残留メンバーが運営の現体制を擁護し、同時に「夜桜たま」の契約解除理由が何らかのルール違反であると匂わせるような文面もあったことで、ファンの心理は絶望と混乱の渦中にありました。

一方で、12月4日には「夜桜たま」の「魂」と目されるTwitterアカウントがいくつかのラインから補足され、12月5日の連続noteリレーの際にはそれぞれのメンバーに対し現在地情報を更新してお別れのメッセージを残しました。
さらに、このアカウントがフォローしていた内の一人が「目に見える物すべてただただ悲しい」とツイートし、歌動画をアップロードしたことで「猫乃木もち」の「魂」であったことが明らかになりました。
一部のファンは運営が最後まで提供できなかった「お別れ」に立ち会うことができましたが、「魂」の情報を詮索しないと決めている「正常」なファンほど彼女たちの最後の姿を確認することは難しかったことも事実です。

あるファンにとっては感動の、また別のファンにとっては地獄の一夜が明けた12月6日、.LIVEから2019年最後の笑いの刺客「マネージャー部」が放たれました。

(今回の声明文は驚くべきことに日付と一応の責任者の署名が入っています。代わりに「ばあちゃる」に20日ほどの謹慎処分を行うことを「ばあちゃる」の責で発表することになっていますが)

謹慎中の「ばあちゃる」に代わって注意喚起等を行う役割のために開設された「マネージャー部」は稼働当初から積極的にファンへの返答を行い、「(「ばあちゃる」に対して)無期限謹慎にしろよ」はい!検討いたします!、「彼女達が悲しむ姿をもう二度とみせないでください」マネージャーとして、アイドル部の子達が悲しむ姿を絶対にファンの皆様に見せないようにしていきます!など、終始異様なテンションを保ち続けました。Twitterの誕生日を当日に設定したためホーム画面ではお祝いの風船が飛び交い、「葬式にピエロが来て風船を配っているようだ」とまで評される状態でした。

以後「マネージャー部」はアイドル部の配信開始をたまにリツイートし、配信中に契約解除されたメンバーや連想される単語、さらには配信のない在籍メンバーへの不安の声や運営の批判などがコメントされると即刻削除するという八面六臂の活躍を見せています。

9.おわりに

長くなりましたが、これでも細かな.LIVEの問題(責任者が未だに匿名の人物問い合わせ窓口よりTwitterや動画で騒ぎになる方が対応の早い体質等)については網羅しきれていません。もし時系列のおかしい点や、事実関係の認識が誤っている点があれば、ご指摘いただけると幸いです。

現在、.LIVE所属のVtuberはTwitter上でもごくまれにしか交流せず、運営は依然として頻繁に彼女達の配信スケジュールを間違えて告知しています(もちろん訂正するのは演者の役目です)。1月22日()に開催されるカラオケ大会イベントの発表も、約1カ月前の12月20日でした。1月13日現在でも、未だに契約解除・活動休止のメンバーは公式HPの紹介に掲載されており、彼女らが活動していないことはTwitterのツイートを辿らなければ分かりません
一部演者に対しては、同僚を突き放してまで無理筋な運営擁護を行ったこと等に対して非常に直接的な非難が出ていますが、運営は沈黙したままです。
登録者数は年始の特番出演などで一時期やや増加傾向に向かいましたが、すぐに勢いは止まりました。もはや視聴者は運営とそれを擁護する演者を信用できずに離れていく人それでも受け入れて残り続ける人に分かれ、前者が増えていく状態が外から明らかである以上、新規人口はほとんど流入していないのでしょう。

「モンペ」の意見としては「.LIVEが今後盛り返すことができるように」などとは「演者の事を考えると」口が裂けても言えません。せめて誰もが幸せになる形で終わりの時が来ることを願います。


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