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券売機を設置しない吉野家

テレビの雑学番組で、この吉野家の券売機のことを取り上げてました。
ファストフードの店舗では、省力化の一環としてこの券売機を導入していることが多いですね。
ところが、吉野家では全店舗で券売機を設置していないのです。

なぜ、吉野家では券売機を置かないのか? 
その理由は、創業時からの接客に対する基本精神があるからというのです。
券売機で前払い制にしていると、確かにスタッフ・お客ともに便利ではあります。
特に忙しいときには、サービススタッフにとってもオーダーをいちいち聞かなくて済みます。
お客の側も、オーダーテイクに時間を取られるイライラを解消できます。

双方ともに、いいこと尽くめのように思えます。
ましてや、ファストフードのお店です。
何事もスムーズに運べることは願ってもないことです。
牛丼をゆっくり味わって食べようという人もいるでしょうが、普通はこの牛丼、とりあえずの食事ではないでしょうか。
席についたら一刻も早く丼が出てきて、すばやく平らげ退店する。
それが理想の牛丼食スタイルのはずです。
ファスト(早い)フードなのですから。

その流れを、言ってみれば阻害するような最後のレジ精算。何故なのかといえば、その時に店舗スタッフから、「ありがとうございました。」と声がけをすることができるからというのです。
さすがの吉野家の接客精神ですね。こんな深い考えがあるとは思ってもみませんでした。

食事を済ませ、最後に精算をするとき。
その時というのは、何かの不具合があったり、気に入らないことがあった場合に、お客のほうからクレームに値しないしても「一言」を述べる絶好の機会です。
ホテルの飲食部門では、レジの専任が置かれていることが多いですね。
この会計時のキャッシャーとのやり取りの中から、クレームになりそうな事項を拾い上げるそうです。
(食事を済ませた後での精算ということがポイントです。単に券売機を置かないだけではありません。マクドナルドなどの店舗もカウンターでの対人オーダーです。しかし前払いです、これでは意味がないのです。)

街のレストランでは、このキャッシャーを店舗マネージャーが兼任していたりすることがあります。
また、ホテルといえども最近では合理化の波で、専任のキャッシャーを設けてないところもあります。

しかし、このキャッシャー要員の役目は非常に大きいのです。
多くは女性スタッフが担当するのでしょうが、ホテルの場合すべてのレストランをローテーションで廻っています。
彼女たちは、そのホテルの各店舗の顧客情報を共有しているのです。
各店舗のマネージャーは、自分の担当する店舗の顧客は把握してますが、他の店舗の顧客には案外と疎いのが通常です。
それを補うほどの役目を果たすのが、このキャッシャーです。

いってみれば影の店舗マネージャー、実質的なアシスタントマネージャーといってもよいでしょう。
それほどまでに、会計をするときの接客対応は大事なのです。
吉野家は、そこまで接客の要諦を把握した上で店舗設計をしたのですね。
素晴らしいと思います。

実際に吉野家の各店舗でこの精神が生かされているか、また対応するカウンターのスタッフがそのレベルに達しているかは、ここでは述べません。
(いいえ、到底そのレベルではない、とはいってません。語弊のないように。)

さすが吉野家、只者ではありませんでした。

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