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はじまりの物語㉓ 神酒

社に戻るともう道風と実頼が待っていた

昼間は汗ばむぐらいの陽気だが日が落ちると
幾分か涼しい
風にあたりながら食そうか

社は小さいものであったがそれでも通りからは
十分に距離をとってぐるっと木々も植えてあった
その辺は、天上の使徒でもあり地上でも神護院に
属する道風のお手のものだ

色々な意味でしっかり守りが固められ
安心してしゃべることのできる場所であった
そうとはいえ、政に携わる実頼はそうそう一葉を
訪れるわけにはいかなかった
人に会うにも気を遣うものよ、
そう言いながら、久しぶりに会ういとこ
一葉としばしの別れの前に積もる話もありそうだった

皆が外の腰掛けで話はじめたあと
蛇はこそっと社の中に入ってすみの方で丸くなった

ときおり聞こえてくる笑い声、ガヤガヤとした
雰囲気が心地よい

いやー、少し飲みすぎた
少し休んでくるよ、
暫くして、道風が社の中に入ってきた

道風は天帝の使徒であり蛇とは会話ができる
酒を飲んだのか
そう聞くと、ああ、酒はいいぞ
軽く陽気な気分になる
昔から神への貢ぎ物に入っているしな
天帝も気分が良くなって
時折ふるまってくれるのさ

ほらお前さんにも、
そう言って酒の入った盃を蛇に差し出した
あの瓶に入った薬酒を思い出したが
目の前の水のように澄んだ酒はふんわりと
いいかおりが漂ってきた
お前さんもお龍様だもんな、
神の聖獣といっても過言ではない
一葉をしっかり守ってやれよ
両手を後ろについて体を上向けにしながら
そういった

蛇はわかってる、と言わんばかりに
舌をだし、そのついでにといった感じで
チロチロッ、と酒を舐めた
なんとも言えないふくよかさ
ふむ、やはり酒とは美味しいものだな

蛇は丁寧に礼をいった

それにしても、一葉のいう仏とやらの道
この国は神が納めていたのではないのか

道風が答える
まぁそうだったんだが、ここ何十年で大陸から
やってきた仏教が中央を中心に盛んになってね。
まあ、その教えも結局意味するところは天上世界と
人間の世の理(ことわり)だろうっていうので
容認する方向になったんだよ。
ただもともとの神も大事にしておくれよ、と
今は神も仏も一緒に奉る神仏習合の時代ってわけ

それより、問題は妖術の方だがそっちはなんとか
神護院で頑張って抑えるさ
神でも仏でもそれでみんなの心根がきれいになれば
妖術なんぞ敵わんわい

一葉が帰ってきたらこの社にも仏をおいて
ついでにあの龍の絵も奉ってやろう
なにせ、いい出来栄えだからな、
カッカッカッと大きな口をあけて笑った




ここにきてビュー数が増えておりましておそらく読んでくださっている方、迷子になって何度か読み返して頂いていたんじゃないかと思っております。
謹んで感謝申し上げます。

もしかして、龍(蛇)VS 陰陽師(妖術使いの悪い方)に進むのでは?!と
思われた方もいらっしゃったかも。
それは神護院と使徒 小野家のもの(道風はじめ)のお仕事ですよ、ということでこれからのストーリーにはでてきません。
きっと、道風は都で頑張って働くことでしょう。
※ちなみに神護院という役所は創作です。

お酒はきっとこのへびさん好きだろうな、ということで
閑話休題、ちょっとリラックスタイムです。

さて、創作大賞締め切りまであと少し。
明日からちゃんと旅にでますよ。

読んでいただいてありがとうございます。



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