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はじまりの物語③ふしぎな力 ー蛇ー



かつての旅の話に戻ろう

天上と地上を行き来できる


これは紛れもなく
蛇に備わったふしぎな力であった


蛇が謙虚であれば『与えられた』というので
あろうが自力なのか他力なのか
蛇が蛇であるということと
その特性はなんら変わることはなかった

つまりはじめから備わっていて
頑張る必要がないのである
蛇は蛇以外の何者かになろうとも思わなかった

あくまで われ 『我』は われ『我』
他と交わることはない


これは感情においてもそうであった

たまにビッグボスのように
あれやこれや言ってくるものも いる

そういうときは『呑む』のだ
取り込んで変容したり 同化するのではない
ただ『呑む』
 そこに葛藤はない
しばらくして外に出せばいいだけの話だ


しかし、水辺を訪れる地上の人間たちは違った

むすめを差し出せ
年貢を納めろ
もっと働け
搾取され、虐げられ、
逃げ場に困って水辺までやってくる

蛇は草むらに隠れて そっとささやく
舌をチロチロするほどの ほんの小さなメロディ

村では話せなかったことを
蛇のいる木陰でぽつりぽつりと語り出す
泣くばかりで言葉にならないものもいる

『コトバ』でなくても『思い』が通ずる
これもまた蛇のふしぎな力であった

さらに蛇は ささやき を続ける
これもまた聞き取ることはできないが
素直な人間は そのささやきに従った

『重い』を外に出し始めた

蛇はよしよし、と一肌脱いだ
ここでいう肌は皮である

古い皮を脱ぎすてて柔らかな皮が現れる
新しい皮はよく伸びる
よく曲がりよく伸びる皮を飾るように
ウロコがキラリと光る

さあ、その『重い』を呑んで進ぜよう
いくつもの『重い』を呑み込んだ


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これは なんのはなしです果 にまつわる
はじまりの物語
話を聞き出す魔法のフレーズ
蛇のささやきはきっと あの呪文だろう


第1話が気になる方はこちらからどうぞ
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続く

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