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【FLSG】ニュースレター「Weekly Report 2/26号」


史上最高値更新の日経平均株価 前日比836円高の終値3万9098円

日経平均34年ぶりに史上最高値更新
22日は日本株にとって記念すべき1日となった。
日経平均は34年ぶりに高値を更新したのだ。89年12月29日の38,915円を更新して39,098円で引けた。もう一つの株式指数であるTOPIX の史上最高値を報じるマスコミはゼロ。実はTOPIX はまだ最高値を更新していない。TOPIX の最高値は同年12月18日の2884.80ポイントだ。ちなみに今回の22日は2660.91ポイントの引け。つまり最高値まで10%弱あるのだ。
日経平均とTOPIX の違いは、日経平均は単純平均なので値嵩株(一般的に、株価が5000円以上を値嵩株という)との動きが大きく左右する。一方、TOPIX は加重平均のため、値嵩株に左右されず市場全体の動きを表す。

22日はエヌビディアが主導し、米国と欧州、日本の株式相場は過去最高値を更新。決算発表後のエヌビディアは22日の米市場で16%上昇し、株式時価総額に2770億ドル(約41兆7000億円)余りが加算された。一日での増加額としてはメタ・プラットフォームズが記録した1970億ドルを上回り、米史上最大を記録。エヌビディアの強気派は新たな決算の数字を得て、株価収益率(PER)を計算し直そうとしている。同社の利益はこれまで、株価よりも速いペースで成長している。22日の日経平均は39,098.68円、NYダウは39,-69.11ドルと、絶対値では日経平均がわずかにNYダウヲ上回った。ただし、今のところ、この日1日だけで23日(日本は休場)には再びNYダウ(23日は39,131.53ドル)が高い。

1989年とはどんな年だったのだろうか。
1989年1月7日昭和天皇は崩御され、8日から新年号「平成」が始まった。当時、筆者はスイスに赴任していたので、昭和天皇の様態が悪化し、様々な行事が自粛されていたが、市場のムードは直接わからなかった。
しかし、天皇の様態が芳しくない頃から紙パルプと印刷株が上昇していた。

このことが記憶にある理由は、この年の3月に東京の株式部長が来てスイスの大手銀行を同行訪問、十条製紙(現日本製紙)を推奨(筆者は疑問に思っていたが)、大手スイスの銀行はアナリストも同意し、毎日毎日買い注文が累積されていった。
しかし、日経平均は上がれども、十条製紙の株価は上がらず、むしろ下げ基調だった。十条製紙だけでなく、大手不動産なども上がらなくなっていた。つまり89年は日経平均という指数だけが上がり、多くの個別銘柄は上がらなくなっていたのだ。そのわけは,後でわかったのだがソロモンブラザーズが裁定取引を活発に行い、日経平均の構成銘柄のなかで薄商いの銘柄だけを買い、指数だけが上がっていたのだ。
その後の十条製紙は90年になって下落の一途、ある日この銀行から呼び出され、その銀行のアナリストを首にしたと伝えられ、同時に私も出入り禁止となった。この時の教訓は、他人の相場観は絶対信じないということだ。信じて間違っても責任は自分に返ってくるということだ。

おそらく今回の高値はエヌビディアに振り回されたが、89年当時のような、知らない商い方法(裁定取引を知らなかった)が行われていることはなさそうだ。そういう意味ではまともな相場と言える。

最高値から「失われた30年」の始まりだった
1989年は昭和天皇の崩御から始まった。この年の4月1日から導入されたのが消費税である。当時は3%だったから、金額的にはそれほどでもなかったが、消費税への不満は、折からのリクルート事件によって増幅された。
これもまた一種のバブルによる犯罪であって、当時は新興企業だったリクルート社が、値上がり確実な未公開株を政官界にバラまいていたことが世間全体の怒りを呼んだ。7月の参議院選挙で自民党は大敗した。総理大臣は竹下登から宇野宗佑へ、そして海部俊樹へと目まぐるしく入れ替わった。思うに政治が安定していなくても、株価が上がることの妨げにはならない。現在もまったく同じであるように見える。

この年の国際情勢は激動の連続だった。6月4日には天安門事件が発生。民主化を求める人々を人民解放軍が容赦なく弾圧する様子に世界は戦慄した。この年最大の事件は、ベルリンの壁の崩壊である。11月9日、東西ドイツを分け隔てていた壁が、ベルリン市民の手によってあっけなく撤去されたのだ。東欧諸国は雪崩を打ったように民主化し、ルーマニアのチャウシェスク政権が年末に倒れるまでは一気呵成であった。「冷戦が終わる!」「平和の配当がやってくる!」という高揚感の中で、日経平均は12月29日に最高値をつけたのである。

 そして、1989年12月17日、第26代日本銀行代総裁に三重野康氏が就任する。プラザ合意以降の金融緩和局面の長期化に危機感を抱いていた三重野氏は、急ピッチで公定歩合を引き上げる。かくして1990年以降の株価は下落の一途をたどり、「失われた10年」「失われた30年」につながっていく。

エヌビディア予想上回る決算。発表直後は売り方の買い戻し主導か
AI向け半導体で圧倒的シェアを占める米エヌビディア決算(11-1月が第4四半期、2-4月が第1四半期)は21日引け後に発表、実績、予想とも市場予想を上回った。売上高は第4四半期221億ドル(市場予想206.2億ドル)、第1四半期240億ドル±2%(同219億ドル)。
21日の株価は、立ち合い中一時4%安と調整が続いたが、引け後の発表後は一時10%高。半導体関連の影響が大きい日経平均先物もシカゴで3万8800円台に急伸、NYダウ先物の絶対値を上回った。そして22日の東京市場で最高値を更新したのだ。

エヌビディアのオプション、決算発表後に2000億ドル近い時価変動示唆

事前に「エヌビディア株のオプション取引、決算発表後に2000億ドル近い時価変動示唆」(ブルームバーグ)と伝えられ、発表後の乱高下も予想されていただけに、一先ず安心感、ヘッジファンド中心と見られる売り方は窮地の買い戻し、と言ったところか。米時間21日の時間外の日経平均先物の急伸も、買い戻し主導と考えられる。

敢えて、懸念材料を探すと、AI開発の規制強化論議、ライバルとの開発競争により拡大ペースに水を差されること。広い範囲の半導体関連では、日本の半導体製造装置では中国のレガシー半導体生産(旧世代のプロセス技術で製造される半導体)に伴う需要が企業によっては4割程度占める。中国需要に急ブレーキが掛かるリスクがある。米国の1月スマホ販売台数は「10%減、17年のピーク比半減」と伝えられ、AI関連以外の半導体需要に活況感を欠く(ただし、スマホも同時通訳などAI機能搭載新機種発売待ちとの見方もある)、などが考えられる。

関連株は大きく上昇してきただけに空売りを飲み込みやすい。その買い戻しが上昇エネルギーに転化するパターンを繰り返しており、そのパターンは何処かで崩れる可能性がある。

半導体関連以外の材料は、アマゾンがNYダウ採用(26日、外れるのはウォルグリーン・ブーツ・アライアンス。ダウ変動幅が拡大するかも知れない)、1月FOMC議事要旨公開では「緩和が速過ぎるリスクを警戒」姿勢。短期金融市場での利下げ開始時期は6月に後退しており、その見通しに変化はなかった。先行きリスクでは「不確実性」が強調されており、直接言及されないが、ウクライナ、中東、中国情勢、米大統領選など不透明要因の多さが影響していると見られる。米債券運用大手PIMCOは「市場はインフレ再加速リスクを過小評価している」と警戒姿勢。

日本の経済環境では、早々とホンダとマツダが春闘で満額回答。21日発表の帝国データバンク調査発表で、「6割の企業が賃上げ計画。平均は前年度を上回る4.16%」。人手不足対策が浸透している。日銀の金融政策修正思惑が強まる可能性がある。

EV補助金打ち切りで1月EV販売急減、脱CO2ジワリ後退
20日発表の1月欧州新車販売台数は部品不足解消などが進み、前年同月比+12.1%だった。ただ、BEV(バッテリー電気自動車)は、前月比でドイツ59%減、フランス46%減と急減した。12月末で補助金が打ち切られたこと、冬場の不人気などが重なったためと見られる。前年同月比ではドイツ+24%、フランス+37%と増勢を維持していると見られているが、急ピッチで増強した生産能力は早くも過剰となっている可能性が高い。

同様に、12月末で米連邦税額控除の対象外となった米フォードのEV主力車「マッハE」の1月販売台数は前月比51%減の1295台にとどまった。フォードは最大8100ドルの値下げを発表した。

EV販売不振→値下げ競争が始まっているが、最大市場の中国では、習政権に近いとされるBYDの一人勝ちの様相だ。規模等不明だが、EVメーカー「華人運通」の工場操業停止が伝えられた(18日)。既に、販売店閉鎖、一部サプライヤーへの支払い遅延、従業員給料2月末に1月分支払いなどが報道されている。同様の苦境にある関連企業は数百社に及ぶとの見方もある。

BYDは欧州に低価格販売攻勢を掛けており、値下げ競争の一因になっていると見られる。目標は化石燃料車並み価格だが、当面のカギは電池コスト。引き下げ競争が激しくなる可能性がある。

環境対策のネガティブ情報はメディアが抑制的にしか伝えないので実情がよく分からないが、米EPA(環境保護局)は昨年4月に発表した排ガスCO2削減基準を後退させる最終規制を近々発表する見通しと伝えられる。当初案は32年までに26年比でCO2排出量を平均56%減らす義務付けを行い、新車販売に占めるEV比率を30年60%、32年67%にする目標だった。バイデン大統領の”EV比率70%”目標に沿ったものだが、現実的に断念する公算が大きい。

15日、JPモルガンとステート・ストリートの投資部門は「CA100+(クライメート・アクション100プラス)」から離脱すると発表した。CA100+は国連責任投資原則に基づき、温室効果ガス排出量の多いグローバル企業に削減推進を働きかける仕組み。世界の加盟社数は金融機関中心に700社余。米共和党から独禁法違反や受託義務違反の批判を受けてきた。最近の”国連崩壊”の一環とも見られなくもないが、環境対策の無理が露呈してきたと言える。環境投資に安易に乗っかるのは要注意になると考えられる。

■レポート著者 プロフィール
氏名:太田光則
早稲田大学卒業後、ジュネーブ大学経済社会学部にてマクロ経済を専攻。
帰国後、和光証券(現みずほ証券)国際部入社。
スイス(ジュネーブ、チューリッヒ)、ロンドン、バーレーンにて一貫して海外の 機関投資家を担当。
現在、通信制大学にて「個人の資産運用」についての非常勤講師を務める。証券経済学会会員。

一般社団法人FLSG
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