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「ほんとにあなたは友達に恵まれているね」

「ほんとにあなたは友達に恵まれているね」
 これは僕の母親の口癖です。僕が友達と遊んだ話をしたとき,予定があるからと夕飯を断るときなどによくこう言ってくれるのです。でも僕はこれを真正面から受け取ることはできないのです。

 僕は友達は多くありません。
 定期的に決まって会う友達も稀で,いつメンと呼ばれるようなグループには一つも属していません。長期休暇もほとんど実家で過ごし,遊ぶ友達として名前を出すのも決まった2,3人です。

 話が変わりますが昔付き合っていた彼女の話をします。
 普段からオシャレで話も合いとてもタイプだったその人はあまり感情表現が活発ではない人でした。 予定を聞いても積極的に合わせるそぶりもなく,デートの計画はいつもこっち,用意したデートプランを過ごしてみてもはしゃぐことなくローテンション。冷めているわけではなく老夫婦のような関係性が好き,と話してくれた彼女とは対照的に僕は物悲しさを感じていました。
 そんな僕ですが大学のサークルなどで近況を聞かれるたび「1ミリも不満のない彼女」と自慢げに惚気ていました。きっとそう思いたかったのだと思います。自分がそう思えば,そう思って彼女のそういう部分から目を背けることができたのなら少しは物悲しさを紛らわせて全て満たされると。

 話を戻して僕は自分の友達はみんな素敵でとても好きです。大切です。
でも友達に恵まれていると言うのはそういう風に思いたい母親の自己暗示なのではないかと思ってしまうのです。


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