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祖父のこと1 アトリエを持つ祖父

父方の祖父は、ちょっとすごい。何がすごいって、祖父の仕事場に銅像があるくらい、なんだかすごい人だった。(しかも生前に作ったらしい)完全な商売人だったので、どちらかというとその側面ばかり、地元では重きを置かれるが、本来は芸術家になりたかったのだと思う(これは、本人からは聞いていませんが、絵を描いていた)。

何しろ、自宅と別にある部屋を、書斎とかではなく、アトリエと呼ばせていたのだ。当時は祖父の自宅に遊びに行っても祖母が「アトリエにいるよ」とよく言っていたのだが、今思うと自営業者がアトリエって名の部屋を持つのって不思議だ。しかし、祖父は芸術が好きだった。特に抽象画。職場のあらゆるところに、子供ながらによくわからない大きなキャンバスの絵がいくつも飾ってあった。なかには風景画や静物画など写実的な作品もあった。そのうえ、アトリエには祖父が集めた絵画がさらにたくさんあったのだ。ちなみに、祖父は集めた絵画を子供である父にも渡していたので、我が家には我々子供達はよくわからない絵がたくさん飾られていた。家っていうのは絵が飾ってあるものだと思っていたが、大人になるとそれは世間ではそういうものでもないらしいということがわかった。

あと、確実に地元にいた画家や芸術家のパトロン的な存在で、祖父のアトリエで夜な夜な彼らと芸術論を戦わせていたらしい。祖父のアトリエは創作活動ではなく、祖父のための社交場でもあったのだろう。

祖父の芸術好きとして、ちょっとすごいなぁと思うのが、自費で美術館を作ってしまったことだ。しかも、一人の画家のための美術館。現在は、閉館しているが、建物はまだある。

今思うと、子供にはまったく興味がなく、遊んでもらった覚えは一切ない。何しろ孫が17人いて、私や私の兄弟は下の方の幼い孫だったから相手にされていなかったのだ。唯一、気にしていたのは勉強の成績くらいだ(それも祖母よりは全然気にしていない)。

教養とセンスと商売っ気のある人だ。「損して得とれ」というのが彼のポリシーであり、地元振興についても根回しは欠かさない人だった。あとはカレーやうどんを作るのが得意だった。その腕は祖母より上だった。

それ以外は、あとひとつだけエピソードがあるが、それはまた今度まとめた方がいい。



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