蝉と蛍
読書が好きでおとなしい私は、同じクラスにいる私と同じように読書が好きな彼に恋をした。
初めて人を好きになって戸惑った私は友達に相談した。
すると、友達が「そうなの?! 実はアイツからもアンタの事好きなんだって相談されたんだよね」と言ってきた。意図せず両想いだと知ることになった私はとても驚いたが、初恋が通じていると分かってとても嬉しかった。
「付き合っちゃいなよ」
友達が言った。
まだ中学生の私には、好きな人と付き合う、なんて大人みたいなことイメージできなかったが「こういうのは男から告白しないとね! 告白大作戦たてないと!」と恋を応援してくれる友達に嬉しくて楽しかった。
翌日、私たちはいつもどおりに昼休みに図書室で会った。同じクラスなのに席が遠い私たちは、いつも教室では話さずここで静かに会う事が多かった。
私は彼に私の気持ちがすでにバレていると思うと落ち着かず、目も合わせられなかった。
「この本は結末が予想外でオススメなんだよ」
対して彼はいつもどおり冷静に見えた。でも、ちらりと見るその横顔の耳がいつもより赤い気がして、やっぱりそうだんだ、と心拍数が早まった。
しかし、彼はなかなか私に告白してくれなかった。
両想いだと知ってすでに一週間が経っていた。
それなのに彼はいつもどおりの雑談しかしてこなかった。
最初のうちはソワソワしていた私も、だんだんと落ち着いてきて、告白されない関係もくすぐったくて心地良いかもしれないと思い始めた時だった。
私は別の男の子に告白された。
それは彼とは正反対なタイプの、別のクラスのムードメーカーな男の子だった。
その日、私はクラスメイトの女子生徒たちに呼び止められて雑談をしていた。
いつもなら図書室にいる時間だった。
男の子は急に私たちのクラスにやってきて私に言った。
「好きです! つきあってください!」
近くほかの生徒たちがいるにも関わらずそれはとても大きな声で、周りにいた人たちが数人振り返るほどだった。
「ひゅー! やっと言った!」と誰かが冷やかした。
驚いた私は声も出なかった。
男の子は「返事は今すぐじゃなくていいから!」と赤い顔で言って教室を出て行った。教室から数人の男子生徒たちが男の子を追いかけて行った。
「あいつ、本当に告白するなんてね!」
私の元へもすぐさま数人の女子生徒たちや友達がやってきた。
「一目ぼれなんだって!」
女子生徒の誰かが言った。
2023年9月4日 HP公開作品 再掲載
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