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葬儀場のスタッフが静かに点火ボタンを押すように私に促した。 よく晴れた平日の昼下がりだった。△▽家の葬儀は私だけだったが、会場には私以外にも別の家族が葬儀に来ていて、火葬場はさざなみが立つような静かなざわめきに包まれていた。 私は促されるままに点火ボタンを押して最愛の人の身体と別れを告げた。 両隣の家族が待合室へぞろぞろと移動する中、私は最愛の人が閉じ込められた小さなドアの前から離れられなかった。 この中で私の大切な人が跡形もなくなるほどの炎の中で燃えている。 火
読書が好きでおとなしい私は、同じクラスにいる私と同じように読書が好きな彼に恋をした。 初めて人を好きになって戸惑った私は友達に相談した。 すると、友達が「そうなの?! 実はアイツからもアンタの事好きなんだって相談されたんだよね」と言ってきた。意図せず両想いだと知ることになった私はとても驚いたが、初恋が通じていると分かってとても嬉しかった。 「付き合っちゃいなよ」 友達が言った。 まだ中学生の私には、好きな人と付き合う、なんて大人みたいなことイメージできなかったが
秘密というものは重過ぎる。 それでも「嘘だ」と分かっていても受け入れるしかない現実があって、何を知らされても否定してはいけない事がある。 嘘をつく方も必死なんだ。 その意図を組んで、私たちは首を縦に振るしかなくなる。 私たちは彼の命日さえも知らされなかった。 私たちは建前と欺瞞を繰り返して、儀式ばかりを重んじて本音を隠して生きている。 真実というものはゆっくりと時間をかけて消えていくものだから、口をふさいでいればいずれ消えてなくなる。 そして、そのうちだれが犯
就寝前、LINEの通知がなった。0時すぎ、ベッドの中でぼんやりしている時だった。 仕事の連絡かも知れない…、と通知を見る。 するとそこに久しぶりに見る大好きな名前があった。ロックを解除して見てみると、『誕生日おめでとう』とお祝いのスタンプ。 タイムラインの誕生日通知から知ったのだろう。 彼は、私がひそかにずっと恋心を寄せていた高校の時の同級生。 彼はまさに私の“理想の男の人”といったような人で、今でも時々何かと用事をつけては食事に誘ったり、連絡を取ったりしていた。