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# 60 Minor Bulbs を「マイナー」と言う勿れ-春先に咲く小球根たち

こんにちは。2月もあっという間に半ばを過ぎてしまいました。
なのに、寒い日ばかり。

マイナー・ボーブス(Minor Bulbs)とは?

マイナーと聞くとどんなイメージを持ちますか? マイナーリーグ、マイナーコード、マイナーなグループなど、メジャーの裏側に隠れている感じがします。

でも、今回は単純に球根(塊茎なども含む)の大きさが、メジャー(Major)=「大きい」か、マイナー(Minor)=「小さい」か、と言う意味で使っています。
アメリカでは "Minor Bulbs" (マイナー・ボーブス/ボルブス)は春に咲く小さい球根植物のことをさします(小さな電球ではありません)。
ちなみに、大きい球根とは、チューリップや水仙などですが、メイジャー・ ボーブスとは普通呼びません。

マイナー・ボーブスの利点はたくさんあります。
・水仙やチューリップより一足先に庭に彩りを添え春を感じさせてくれる
・背丈が低く、花後に残る葉も大きくなりすぎない
・夏には休眠するので、宿根草(ギボウシ、デイリリーなど)との組み合わせで庭の鑑賞期間が長くなる
・球根同士の組み合わせ、パンジーやヴィオラなどの1、2年草、ヘレボラスなどの宿根草との相性も良いので、春先に重宝



ニューヨークで咲くマイナー・ボルブス



ここでは、ニューヨークではどんなマイナー・ボーブスが咲くのかをざっとご覧いただきたいと思います。
早速、ラインナップスタート。

1.  スノードロップ (Galanathus/ガランサス)

スノードロップは、前回のブログで書きましたが、春先にまず最初に目に入ってくる、白くうつむいた可憐な花。ひとつずつは小さくても群植にするとパーっと春の大地の息吹を感じます。(ヒガンバナ科)

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2. 黄花セツブンソウ (Eranthis/エランシス)

黄花セツブンソウ(Eranthis hyemalis)は、モノトーンな景色に飛び込んでくる黄色いカーペットです。
ミツバチさん達が見つけて喜んでいる姿を目にすると嬉しくなります。
ただ、ニューヨーク市内では、フカフカの腐葉土が残った斜面、山里のようなところが少ないため、エランシスが育ちやすい環境は減っているように思います。(キンポウゲ科)

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3. ミニ・アイリス (Iris /アイリス)

アイリス属の中の、球根(球茎)で育てる、「レティキュラータ(reticulata)系」のアイリスは、 スノードロップに負けないくらい寒さに強く、2、 3日雪の下にいても平気です。
早咲き、遅咲き、があって 品種ごとにグループにして植えておくと、長い間咲いているように見えます。(アヤメ科)

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ここ10年近くの人気は 下の写真、'Katharine Hodgkin (キャサリン・ホジキン)'。

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4. ミニ・スイセン(Narcissus/ナルシッサス)

小さいというだけで、スイセンと同じなのですが、日本でおなじみの’tête-à-tête(テタ・テット)'など、背丈が低いのと原種が多いのがこの「ミニチュア・矮性」のグループ。そのせいか、開花が早いものも多く見られます。花後の葉も低くて細いので気になりにくいです。(ヒガンバナ科)

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5. クロッカス (Crocus)

曇り、夜の間は花は閉じ、晴れの日には大きく開いて、暖かい太陽の光を浴びているようです。
ニューヨークでは鳥やリスが球根をつついたり食べたりするせいか、庭で見かけることは少なめです。

でも、どうも美味しくないのか、こぼれタネでどんどんテリトリーを広げていく品種があります。
Crocus tomasinianus (クロッカス・トマシニエイナス)。
リスに頭を悩ませていた職場では、トミーと呼んで重宝していました。
トミーにも品種改良で仲間が出てきて、花が大きめだったり、濃い花色のものがあります。

オランダ産の大輪咲きは、ツヤツヤした花びら、大きさのバランスからして、私には何とも恐ろしく(あくまで個人的見解です)、小さめで、原種に近いものが愛らしく思われます。(アヤメ科)

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6.  原種系シクラメン (Cyclamen coum and spp.)

日本でおなじみ、ガーデン・シクラメン(Cyclamen persicum)は、ニューヨークの冬には寒すぎて向きません。
冬の間に咲く原種の中で、一番よく知られているのがシクラメン・クーム(Cyclamen coum)。丸く、厚みのある葉が可愛らしいです。
育てやすさから言うと夏〜秋咲きのヘデリフォーリアムですが、クームは冬の花として貴重な種類です。
木陰などに植えておけば毎年咲いてくれます。ほとんどがピンク系の花なのでたまに白を見ると、発見気分で嬉しいです。(サクラソウ科)

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7.  チオノドクサ & シラー (Chionodoxa & Scilla)

チオノドクサ(キオノドクサ/カイアノドクサ, Chionodoxa)と呼ばれているグループがニューヨークでは主流になってきています。
丈夫で、花が大きくて上向き、見映えもよく、お金を払った価値が感じられるせいかもしれません。特に’ブルー・ジャイアント’のような改良品種。

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シラー (Scilla)の中でサルデンシス(S. sardensis)、バイフォリア(S. bifolia)は、落葉樹の下でどんどん増えます(植物分類学では名前が、シラーだったり、チオノドクサだったりしてますが、それは置いといて)。 
同じシラーでも、シラー・シビリカ (S. sibirica)は、控えめです。濃いめのブルーが可愛いです(上の写真、右端の真ん中あたり)。
シラー・プシュキニオイデス (下の写真左側)もこのグループ。まるでミニヒヤシンスみたいです)(キジカクシ科)

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そして、現在チオノドクサとシラーが自然に属間交配してチオノシラー(Chionoscilla)と呼ばれるものも出てきています。
チオノドクサとシラーを区別する時、おしべが歯状(チオノドクサ)か糸状(シラー)か、で判断していましたが、それもだんだん難しくなってきました。(キジカクシ科)

こちらはウェーブヒル・ガーデンのウッドランドの斜面。私は勝手にブルーカーペットと呼んでいます。
シラー・サルデンシス(or チオノドクサ・サルデンシス)がメインです。
四つ葉のクローバー探しじゃないですけれど、私の目は、シラー・シビリカを探していました。

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8. ムスカリ(Muscari)

ムスカリは、水仙やチューリップの横で、青い添え物のようにしてあしらわれていたような気がします。
悪い環境でも丈夫で、種子からでもよく育ってくれます。
中には雑草扱いする人もいますが。そういう人はとっておきの品種を植えて育てるのも良いでしょう。

最近では切り花にも使われているので、花を摘み取ってしまえば種もできず雑草のように広がっていくことも少ないと思います。(ヒヤシンス科またはキジカクシ科)

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9. アネモネ (Anemone)

日本で見かける 切り花用の’デ・カン’みたいな品種は外の寒さに耐えられず、育ちません。

山野草としてのアネモネがありますが、一般的ではなく、カタログで購入しやすいのは、マーガレットのような花をつけるアネモネ・ブランダ(Anemone blanda) です。
淡いブルー、ピンク、白い花をつけて花壇の前方に植えられることが多いです。毎年のカムバック率が低いせいかもしれませんが、人気はあまり伸びていません。(キンポウゲ科)

1つ失敗談があります。
何百個と植え付ける時、干しぶどうのような形の黒いアネモネの球根(塊茎)は、地面に置くとどこにあるか分からなくなってしまいます。
アネモネに小麦粉をまぶしたら、植えるのは簡単、でも生えてこないなあ、と思ったら、、、、大失敗!
ネズミか鳩に食べられたみたいです。
ニューヨーク5番街でのお話です。都会特有の動物の被害ってあるんですよね。

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10. コリダリス (Corydalis)

コリダリス、と一言にいっても、世界中に350種以上ある大きなグループです。
その中で、青色の品種は、群植や放置植えには、ちょっともったいなく、もっとワイルドにいくなら黄色の品種もありますが、小さな庭で人気なのは、コリダリス・ソリダ(C. solida)、品種では、'ジョージ・ベーカー(George Baker)’と’ベス・エヴァンス (Beth Evans)’が人気の立役者です。薄い紅色、赤紫色で、案外丈夫でよく育ちます。花が終わると来年まで姿を消してしまいます。(ケシ科)


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駆け足のご紹介でしたが、いかがでしたでしょうか。

日本でも小球根を庭の片隅に植えて、春のお知らせを楽しんでいる方もいらっしゃると思います。
目が、この小さな春の息吹に向かって、ミツバチみたいに飛んでいきますよね。

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(エリカ、クロッカス、チオノドクサ)

今日も最後までご覧いただき、ありがとうございました。

こちらはおまけのリールです。
クロッカスのお好きなリスさんへ。







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