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言葉を装う

綺麗な言葉遣いは無料でできるおしゃれ、とはよく聞く言葉で、誰が言ったのかと調べてみたらカズレーザーだった。最初に聞いた時から良いこと言う人がいるなあと思っていた。

大事なことほど丁寧な言葉遣いで言うと、誠意や真心といったものが相手に届きやすい。大事なことじゃなくても、普段から丁寧に話す習慣を持っている人はそれだけでその人を信頼できそうだと思える。

おしゃれ、というのは装うということだ。第一印象で相手のことをだいたい「こういう人だろう」とアタリをつけるものだが、それをあとになって覆すのがかなりむつかしいのは心理学を持ち出さなくても実生活の中で誰しも経験があるだろう。第一印象を良くしたいというのは割合普遍的な欲求だと思う。

私は元来人見知りが激しいのと、警戒心が強いのと、その裏返しで無用な敵対心を持たれたくないため、なるべく優しく聞こえるような丁寧語を使うよう心掛けている。気心が知れれば言葉遣いも砕けてくるが、乱暴に聞こえないようには気を付けている。乱暴な言葉遣いは自分にとって損だというのはさんざん実家の家庭環境で学んできた。

男性が乱暴な言葉遣いをするのは、テレビや漫画などでなにかと影響を受けやすい部分も多々あると思う。シャイな人が、それを隠すためにわざと乱暴にしていることもあろう。言い訳はいくらでもできるが、男性が乱暴な言葉遣いをするというだけで、それだけで威嚇になる。威嚇されれば、恐怖を抱く。モラハラとかパワハラとかする人に顕著なように、知性、品性の下劣さを私は相手の第一印象に抱くだろう。

女性はどうか。女性で乱暴な言葉遣いをする人は輪をかけて、知性品性のなさを偏見差別を総動員して相手の最悪な第一印象として残す。女性はその育てられ方からして(今にそういう「育てられ方」もなくなるだろうが)丁寧な言葉遣いを親を含めた有象無象の人に強制されるといっていい。つまり女性が丁寧な言葉遣いなのは「当たり前」なのだ。(幸か不幸かその当たり前もいつかは淘汰されようが今のところはまだ当たり前とみなされる)そんな女性が乱暴な言葉遣い、丁寧に装うということをしないのは、よほど親の教育が悪かったのだろうと察してしまうし、そこまでいかなくても、わざと乱暴にすることで「わたしサバけた女なんですー」とアピールしたいつもりなのだろうが、そういう人こそサバけてなくてむしろジメジメ陰湿でうじうじしている性格を隠すためなのだろうなと、私など裏返しで思ってしまう。また男性に対する媚も見えて「嫌な女」という、本当に相手にとっては最悪でしかない印象を抱かせる。

どちらも総じて幼稚。

自分にとってプラスにしかならない装い方を、それこそ無料でできるのだから、マイナスにしかならない乱暴な言葉遣いをする人の気が知れない。まあ慇懃無礼というのもあるが、それはまた別の話。



夫が「これ食う?」とたまに自分のものを私に与えようとするときに、つい「うん食う!」などと釣られてしまうが、そのあと必ず私は文句を言う。「食べる?って聞いてよー」と。目下私が一番装いたい相手は夫なので、釣られて乱暴な言葉遣いになるのは負けた気になる。