【お金の学校⑥】確定申告に備えて今からやるべきことは? メリットや節税対策など
フリーランスや独立志望の方に向けて、正しいお金の知識を伝える「お金の学校」。今回のテーマは「確定申告」です。
個人事業主やフリーランスとして収入があれば、申告する必要がある「確定申告」。会社員として働いていても副業で20万円以上の所得がある場合は、個人で確定申告をしなければいけません。
今回は、ぼくわたギルドのメンバーで公認会計士のSetoが、確定申告のメリットや節税対策などについてわかりやすく解説します。
【この記事を読むとわかること】
・確定申告をするメリット
・確定申告をするために準備すること
・確定申告で使える経費の節税対策
そもそも確定申告ってなに?
確定申告とは、事業で1月1日から12月31日までの1年間に稼いだ金額(事業所得)が20万円以上の人がするべき手続きのこと。FXや株、不動産での収入なども対象になります。
まずは、確定申告がどんなものかを具体的に解説します。
確定申告とは?
年収から経費や各種控除を差し引いた所得を元に納税すべき額を計算し、税務署へ申告することを「確定申告」と言います。
所得がある人は必ず申告する必要がある確定申告ですが、会社員の方は年末調整で、従業員の代わりに会社が所得税の申告と納税をしてくれています。
年末調整は会社、確定申告は個人が行うものと覚えておきましょう。
確定申告が必要な人は?
確定申告が必要なのは、一言でいうと、20万円以上の事業所得がある方です。アルバイトなどでも現金で給与を受け取っていて年間20万円以上の給与がある方が対象となります。
上記の他にも以下の条件に当てはまる場合は、申告を求められます。
源泉徴収を行った公的年金の年間額が400万円以上の場合
源泉徴収が行われていない公的年金の年間額から所得控除を差し引いた後に金額が余る場合
災害減免法によって源泉徴収額の還元もしくは猶予を受けた場合
確定申告はいつまでにする?
確定申告では、1月1日〜12月31日までの収入を、翌年の2月16日から3月15日までに申告します。申告期限日が土日の場合は、次の月曜日が期限になります。所得税の納付期限も同様です。
2023年分の確定申告は、2024年2月16日(金)から3月15日(金)です。該当する方は提出を忘れないようにしましょう。
期限までに申告を行わなかった場合、延滞税や無申告加算税が課されてしまいます。また、2年連続で期限を守らないと青色申告の承認を取り消されてしまいます。
確定申告をする4つのメリット
確定申告と聞くと「難しそう」「面倒臭そう」と思う方もいらっしゃると思います。しかし、確定申告で得られるメリットを知っていれば、申告するモチベーションも上がるはずです。
①還付金を受け取れる可能性がある
確定申告をすることで、払いすぎた所得税を「還付金」として返金してもらえる可能性があります。還付金は、源泉徴収された所得税額、予定納税を行った所得税額が、年間の所得金額から計算した所得税額よりも多い場合に受け取れます。
②所得税控除の活用ができる
給与所得者は基本的に会社が行う年末調整で税額計算されますが、医療費控除、雑損控除、寄付金控除、住宅ローン控除で還付申告したい場合は、確定申告をすると受け取れるケースもあります。
所得税控除を活用すれば、納税者は実際の所得税額を減らすことができるでしょう。③融資や契約のための証明書提出が簡単になる
以下をする場合、所得の証明が必要になります。
家を買うためのローンを組む
融資を受ける
起業する
確定申告をすると納税者の所得状況が正確に把握され、所得証明書の取得が簡単になるでしょう。
きちんと納税していることが証明できれば、所得証明書が取得できるのでフリーランスでも各種審査が通りやすくなるはずです。
④会計の勉強になる
確定申告を税理士に丸投げする人もいますが、現代では会計ソフトが充実しているため、自ら取り組むのもよいでしょう。簿記3級程度の知識があれば、簡単な確定申告はできます。会計の勉強として、自身で取り組んでみることもおすすめです。
確定申告をするためにいまから準備すること
確定申告の申告期間になってから慌てないように、必要なものは事前に準備しておくことが大切です。いまからするべき準備を紹介します。
確定申告をするために必要なもの
確定申告をするために、以下の4つを準備しておきましょう。
①確定申告書
確定申告書には、青色申告と白色申告の2種類があります。令和3年までは確定申告書Aと確定申告書Bがあり、それぞれ使い分けられていましたが、令和4年より一本化されました。
②本人確認書類
確定申告をするためには、申告者本人であることを証明する本人確認書類が必要です。以下のうち、ひとつが必要になります。
マイナンバーカードの表面と裏面の写し
番号確認書類(通知カードまたは住民票の写し)と身元確認書類(運転免許証やパスポートの写し)
③銀行口座の情報がわかるものと、関連する領収書類
還付金の受け取りなどに口座情報が必要です。通帳や銀行口座の情報がわかるものを準備しましょう。(コピーの添付は必要ありません)
また、個人事業主では事業に関与した領収書などを経費として、収入から差し引くことができます。会社に行くための交通費や接待費などの領収書は、1年分貯めておきましょう。事業用の口座とプライベート用の口座を分けておくと、確定申告の準備が楽です。
④所得及び所得控除、税額控除を証明できるもの
確定申告で所得税を申告する際は、所得の根拠となる収入額などを記入する必要があります。記入に当たっては、所得を証明できる書類(請求書など)の準備が必要です。
また、税額控除を受ける際にも控除の適用を証明できる書類を用意しなければなりません。例えば、医療費控除を受けるためには医療費を支払った際の領収書が必要です。
青色申告と白色申告の違い
個人事業主として開業しているなら、開業届と青色申告承認申請書は必ず出しておきましょう。青色申告で確定申告をすると、最大65万円の控除を受けられ、節税効果が高いので必ず利用したいものです。
青色申告をするメリットは以下です。
最大65万円の控除を受けられる
3年間赤字を繰り越せる
親族や配偶者に払った給与を経費に計上できる
減価償却の特例がある
白色申告と比べて会計処理は複雑ですが、メリットが大きいので青色申告を利用しましょう。会計処理が難しい方は、税理士に依頼するのがおすすめです。
e-Taxでの電子申告を利用する
確定申告は紙の書類に記載して提出する以外に、e-Tax(国税庁が提供する国税電子申告・納税システム)にて電子申告する方法もあります。e-Taxを使えば、自宅にいながら確定申告ができるうえに添付書類を省略できるのでメリットが多いです。
ただしe-Taxを利用するためには、マイナンバーカードとマイナンバーカードに対応しているカードリーダー(スマートフォン)が必要なので注意しましょう。
確定申告で使える経費の節税対策は?
続いて、確定申告でできる経費などの節税対策を8つ紹介します。ポイントは、必要経費となる項目をしっかりと経費計上することです。
①青色申告をして65万円の控除を行う
青色申告をすることで最大65万円の特別控除を受けることができます。これが青色申告の最大のメリットです。会計処理は手間ですが、個人事業主の方は青色申告をすることをおすすめします。
②必要経費となる項目をうまく使う
事業に関連するものは必要経費として計上できます。交通費、通信費、消耗品費、旅費、接待費など、事業に関連する支出は必ず領収書をもらいましょう。
③小規模企業共済やNISAへの加入を検討
小規模企業共済や個人型確定拠出年金(iDeCo)、NISAに加入すると拠出金が所得控除の対象になります。納税する金額が発生するなら、積み立てに回した方が節税になります。新しいNISAの制度も始まるので、ぜひ試してみましょう。
④減価償却費という概念をうまく使う
事業用の設備投資に対する減価償却費を計上できます。青色申告をしている個人事業主の場合は、30万円未満の備品代を経費計上するとき少額減価償却資産の特例を利用して購入・使用開始した年度に一括して経費計上することができます。
利益の多く出た年度に購入して、一括で経費計上するなど工夫すれば節税できるでしょう。
⑤家族を従業員として雇用して給与を経費にする
家族を正当な理由で雇用し、適正な給与を支払うことでその給与を経費として計上できます。ただし所定の書類(青色事業専従者給与)を届け出なければなりません。この制度を使うにはいくつかの要件を満たす必要があります。
⑥投資の損失で相殺を行う
赤字の場合は、他の所得との損益通算や、翌年以降に繰り越すことができる場合があります。青色申告をしている個人事業主は、事業で出た赤字を翌年以降3年間に繰り越すこともできます。
⑦保険適用を利用し、病院に行った領収書を取っておく
多額の医療費がかかった場合、一定額を超える部分については医療費控除を受けられます。親族の医療費を支払った場合でも控除の対象となり、最大で200万円まで控除できます。
⑧経費で生命保険等に加入しておく
保険のなかでも、事業を継続するために必要な保険の保険料は経費として認められます。例えば、事業で自動車を使用しているなら、自動車保険料は経費計上が可能です。
事業主の生命保険料は個人のものなので事業経費に当たらず経費計上はできませんが、雇用している従業員の生命保険料や社会保険料は経費になります。
確定申告でよくある質問
確定申告に関して、よくある質問にQ&A方式で答えていきます。
Q1. 確定申告をしなかった場合のペナルティはなんですか?
申告しなかったり、申告が遅れたりすると延滞税が課されることがあります。もし納付期限を過ぎてしまった場合は、すみやかに納税をすることが重要です。延滞税は納付が遅れた日数に応じて増加するため、早めに納付することで延滞税を最小限に抑えられます。
Q2. 給与所得者等で還付申告をしていなかった場合、何年前まで遡って還付申告できますか?
確定申告が必要のない方の還付申告は、還付申告をする年分の翌年1月1日から5年間行うことができます。したがって、これまでに申告をしていなかった場合でも平成30年分については、令和5年12月31日まで申告可能です。
Q3. ネットで確定申告できますか?
国税庁のe-Taxシステムを利用すればオンラインで確定申告ができます。e-Taxを利用するためには事前にユーザー登録が必要です。これには、マイナンバーカードまたはe-Taxソフトウェア(従来の利用者IDとパスワードによるログイン方式)のいずれかが使われます。
Q4. 住民税や事業税の申告は?
所得税等の確定申告書を税務署に提出した方は、税務署から地方公共団体に確定申告書のデータが送信されるので、改めて住民税や事業税の申告書を提出する必要がありません。
ただし、住民税において所得税等と異なる控除等の適用を受ける場合には、別途、住民税の申告が必要な場合もあります。お住まいの市区町村にお問い合わせください。
確定申告のまとめ
最後に、この記事のまとめです。
確定申告は青色で提出して有効活用しよう
青色申告をすると最大65万円の所得税控除ができるため、節税効果が非常に大きいです。会計処理を面倒臭がらずに最大限にこの控除を利用してください。
期限を過ぎないために早めに必要書類を準備しよう
確定申告の申告期限は収入があった年の翌年2月16日から3月15日までです。約1ヶ月しかありませんので、1月になったら帳簿の準備をしたり、本人確認書類や所得控除税額控除の照明などを揃え、提出できるよう早めに準備をしておきましょう。
出費をうまく経費計上して節税しよう
確定申告をする際は、事業に関するものであれば経費計上ができます。交通費、通信費、接待費など、経費にできるものはきちんと領収書を集めましょう。なるべく利益が小さくなるように調整すると節税効果が高まります。利益率を25%くらいにすると、納税額が10〜15%程度に収まります。