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近所の弁当屋に怪物がいる

近所の弁当屋に怪物がいる。

 こんな噂を最近耳にした。よくよくこの噂話を聞いてみると、80歳を過ぎた人がバリバリ弁当屋で働いているらしい。そこでその怪物の正体が僕のばあちゃんであると気づいた。僕のばあちゃんは85歳。仕出し弁当屋で現役で働いている。
 弁当屋は数百人前の弁当の調理、盛り付けを長時間前屈みで作業を行い、重い材料や釜を運ばなければならないハードな仕事だ。若者でも根を上げそうな仕事を、150センチにも満たない小さな体でこなしている。まさに体力の怪物。業務の大変さを知っている同業者から『怪物』と言われるのも頷ける。
 85歳で働いていることだけでも十分すごいと思うのだが、これだけではない。早朝から昼過ぎまで弁当屋で働いた後、自宅の庭仕事をするのだ。祖母よ。元気すぎるだろう。

元気の秘訣

ばあちゃんの日常の中で、元気の秘訣と思うものがある。
【よく食べる】
 食べる人は元気と言うけれど、ばあちゃんを見ていると本当にそうなんだなと納得する。筋肉や骨の基であるたんぱく質やカルシウムが豊富な魚介類を好んで食べているからか、病院でも骨密度の高さを褒められたらしい。
【定期的なメンテナンス】
 整体師である僕が週に一回ばあちゃんの体のメンテナンスを行っている。加齢による身体能力の衰えは防げないが、衰える速度を緩やかにはできるはずだ。年齢に伴って硬くなりやすくなる筋肉を時間をかけてゆっくりほぐしている。弁当屋の仕事で酷使する肩背中周りはガチガチだが、足首のしなやかさは抜群。これからもまだまだ元気に歩けると思う。
【働くこと】
 なんと言っても、仕事をしていること自体が元気でいるために重要なんじゃないかと思う。コロナで仕事の休みが多くなった時期は少し元気が無くなっていた。仕事でほどよく体を動かし、同僚と喋ることがストレス発散になっているんじゃなかろうか。ばあちゃん本人も「仕事辞めたら暇になる」と辞める気はない。

働きながら元気になっていくばあちゃん。
弁当屋の怪物の伝説は、まだ続きそうだ。

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