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#5 山本昌男: くらやみ

山本昌男:くらやみ
中根健太

KURAYAMI (IKKI 2023)

 日本人写真家・山本昌男と音楽家・内田輝による写真と音楽の対話から生まれた写真集。この2名がコラボレーションをするのは2020年の『sasanami』に続き2回目である。本書はiikki booksというフランスの出版社から出版されており、写真集のほかに音楽家が作曲したレコードも同時に販売している。

山本昌男の写真には人間が先天的に持っている自然への敬意、崇高、五感を揺さぶるものが写り込む。普段から先端的なものに触れていると忘れがちだが、身の回りにも自然は存在し、私たち人間以外の存在を感じ取ることができる。元来、日本は八百万の神が存在しているという神道がベースにあり、全てではないにしろ自然や食べ物、置物に至るまで魂(愛着のようなもの)を感じるのは国民性が関係しているだろう 。

この写真集を見ていると雄大な自然を目の前にし、冷たく細やかな空気が肺の中を満たしていくような感覚を覚える。感覚の一つ一つが普段の生活から離れ、目の前の写真に没入していく。光によって浮かび出される岩の造形は見知った形をしておらず、NASAの写真だと言われても全く疑わないだろう。女性のヌードもただひたすら腕の筋や足の形などを見てしまい、凝視していくと人間の体はこんなにも不思議な形をしているのかと思い知らされる。

単に普段見ているものがこの写真集によって揺らいでしまった。当たり前だと思っていたことを疑い、自然や周囲の事柄をよりよく見つめるための手掛かりがここには詰まっているのではないだろうか。

YouTubeではレコードに収録された音源をA面とB面それぞれ聞くことができる。正直なところお経と音楽が混ざっているため、ほとんどの人が何のことか分からないまま聞くことになるだろう。是非とも慣れ親しんでいないことや言葉が読み取れないという理由で聞くことを諦めないでいただきたい。BGMとして流しながら写真集を見てみるとさっきまで見ていた写真が不思議と一層重く心に突き刺さってくるはずだ。音楽と写真集を連動させること自体珍しく、また写真集を多角的に読み解くためにも一度体験してみて欲しい。

山本昌男 写真集: くらやみ
【Photographs by】Masao Yamamoto(山本昌男)
【出版社】IKKI 2023年 Edition of 2000 copies
【装丁】Hardcover(ハードカバー)
【ページ】96 pages (with 6 metallic/silver pages), 56 photos,
【サイズ】24.8 x 25.7 cm

https://youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_kCe8WVgfmZER0T1qqd9HV3CGH86cJjbyU&si=ej70-4dt2Cz71QCb

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執筆者
中根健太
2002年生まれ 東京工芸大学在学
Mail: nakanekenta.2002@gmail.com
IG:_k9080
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