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創作

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ショートショート小説。ちょっぴりネガティブで、でも元気が出るお話が好き。
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記事一覧

良薬は口に苦し

コンペに負けた。 重い足取りで上司のデスクに報告へと向かう。 「すいませんでした」 下げた…

美忘錄
1年前
2

不合理で非効率な何かを摂取したい

「また行こな」 そうして新大阪のホームで友だちに別れを告げる。 数秒してからそっと後ろを振…

美忘錄
1年前
3

リンゴのおもてうら

「最後の晩餐は何が良いかな?」 そんな会話をしたのはもう10年も前のことになる。 最後に同…

美忘錄
1年前
4

「そんなつもりはさらさらなかった。」

あほらしいなと、朝のニュース番組を横目にバタートーストにかぶりついていた時期がわたしにも…

美忘錄
1年前
2

loop and loop

車窓から見える景色が私は好きだ。 車の窓、電車の窓、飛行機の窓。 別に乗り物が好きとか、…

美忘錄
2年前
1

(本編:読切部門)「ワスレワスラレ」

「あれ、卵買い忘れた。」 「えー、炒飯食えんやん。」 「卵なしで作るから我慢してな。」 日…

美忘錄
1年前
4

草の分け目にあるモノ

1つ、不思議な話をしようか。 小学生の頃、ぼくは草野球のチームに入りたかった。 ピッチャーでもキャッチャーでもなく、1塁2塁3塁でもなく、ベンチでもなく、ただ外から見ていた。車椅子の上から見ていた。 野球ボールがこちら側に飛んできた。 その日はなんだか天気が良くて、青い空にシャボン玉のあわあわがふわふわと風に乗って流れてきたのをよく覚えている。 動かない体でボールを見ていると、野球ボールは横道に逸れずに真っ直ぐに向かってきた。 避けようと思うより先に頭にずこーんと当たった

甘いバターの匂いもいつかは苦くなる

ただいま、扉を開けると、部屋にはバターの匂いが充満していた。 「クッキーかな。」と予想。…

美忘錄
2年前
3

SHUKATSU IN THE DYSTOPIA

20XX年。少子高齢化に伴って社会福祉費の肥大化が進んだ。その費用を賄うため労働者各々が最大…

美忘錄
2年前
1

お客様は何様だ?

またベルが鳴る、「3番テーブルさんオーダーです!」 その日は三連休真っ只中、客足はなかな…

美忘錄
3年前
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水色[改]

小さい頃、色白でとっても可愛い男の子がいた。 5歳頃まで女の子と見間違われるくらいであった…

美忘錄
3年前
2

オフホワイトな恋

わたしと、ひーちゃん、あっくんの3人は小学校に入る前から仲良し3人組だった。 みんな近所に…

美忘錄
2年前
2

ある男の○○、どうぞ綺麗に騙されて。

おまえに王水ぶっかけて、ドロドロに溶かしてやろうか。 ひもを首周りに何重も巻き付けて、象…

美忘錄
2年前
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見上げた空と、見下げる床。

高校生の頃は愛とか恋とかよく分からなかったけれど、 好きな人と見上げた青空だけは不思議と鮮明に思い出せる。 冬の朝は寒い。 だけどもわたしは嫌いじゃない。 「冬はつとめて」、わたしの感性が枕草子に肩を並べたと少しだけ歓喜して、初めて古文の先生に感謝する瞬間もあったりするわけで。 すっかり早朝の散歩が日課になってしまった。 「寒いから」の一言は免罪符。 普段は甘えるのが苦手なわたしも、「寒いから」って言って少しだけ彼に身を寄せる。 彼は私を引き寄せて、大人の遊びが始まって。