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京都市京セラ美術館『アンディ・ウォーホル・キョウト』

 1/31、ずっと楽しみにしていた展覧会に行ってきました。

 おもしろかった〜!! ウォーホルの作品の単純さ好きだなと思いました。

 ウォーホルは1950年代の抽象表現主義に反発してポップアートを始めたアーティストですが、私はこの抽象表現主義がそこまで好きではないんですよね。抽象表現主義、という言葉を知らなかったころから、1950年代の抽象画に対して何となく居心地の悪いような……そんな感覚がありました。ただこれはむしろ抽象表現主義というイズムを知らず、鑑賞方法が分からなかったため居心地が悪かったのであり、鑑賞方法がわかった今は昔ほど苦手ではないです。それでも大好き、とまではいかなくて。

 なのでそこに反旗を翻したウォーホルに親しみを覚えるというか。ウォーホルの作品はわかりやすくておもしろくて「低俗」でかっこいいなと感じます。

 大学で演劇論の講座を取っていたのですが、教授が「エンタメとアートの境界は曖昧です。それは揺らいでいて、今エンタメと呼ばれるものが後世ではアートと呼ばれたりもします」と言っていたのを思い出しました。ウォーホルの作品の、高尚とされるものと低俗とされたものの境界をなくす試みはとても面白いです。

 そもそも「商業的であること」は本当に低俗なのか。

 現代アートの父も言われるデュシャンは資本主義のシステムと縁を切ってアートを行いましたが、同じく現代アートで重要な地位を占めるウォーホルは資本主義や消費社会の中でアートをした、私はそれをとても"いい"と思います。

 だってもともとアートってお金によって消費されるものじゃないですか? もちろん資本主義とか消費社会は近代に生まれたシステムなので、ウォーホルのやったこととはズレがありますが。でも近代になって印象派が登場する以前は、王族貴族富裕層といったパトロンの注文通りに描くものがアートであったことを思うと、そしてそこから多くの傑作が生まれていることも加味すると、アートとお金が縁を切るのは変な話じゃないかと。

 なのでウォーホルが大スターたちから肖像画の依頼を受け、それを主要なビジネスにしていたことは、とてもクラシカルだと感じました。彼の仕事は現代アートをがらりと変えてしまったかもしれませんが、それはある部分ではアートの原点に立ち返る行為であったようにも思います。


 それからこれは私の個人的な好みの問題なのですが、私はウォーホルが取り組んだ「有名人の消費」というテーマがどうも好きなようです。

 少し面倒な話にはなりますが。有名人にはたしかに、大衆に消費される側面があるように私には思えます。その是非を問うのはまた別の機会にするとして、事実として消費の構造がある以上、ウォーホルが有名人のことが好きだからこそ彼らを消費する、あるいは鑑賞者に彼らを消費させる作品を作ったのはとても面白いと感じるんです。

 私はK-popアイドルが好きなんですが、この界隈に足を踏み入れてから「アイドルの消費」という話をよく聞くようになりました。中にはアイドルを消費したくない、と口にしている人もいて正直びっくりしたんですよね。アイドルというのがビジネスであり産業である以上、どうあっても消費の構造からは逃れられないと私は思うので(もちろんこれは私の個人的な意見なので、あくまで消費したくないと思うのもその人の大切な意見だと思います)。

 だからウォーホルが、有名人が好きだと言って憚らなかったのも、好きだからこそ消費の構造を描き続けたのも、とても興味深いと思います。

 ウォーホル自身がかつらと服を通して「アンディ・ウォーホル」という偶像、つまり消費される「自身」を作り出したのも一貫していて良いなと。


 それと好きだったのが、「もしアンディ・ウォーホルのすべてを知りたいなら、私の絵と映画と私の表面だけを見てください。裏側には何もありません」というフレーズ。

 これ本当に好きだな〜。たぶん抽象表現主義が難解すぎることへの反抗から生まれた言葉なのかな? という気がするんですが。同時に「有名人を消費する」ことって、究極的にこの言葉通りにすることじゃないかなと思うんです。

 有名人にはたしかに消費される側面があるけれど、彼らの裏側を消費することは私はタブーだと思ってます。わかりやすく言ってしまえばプライベートとか、内心とか。そこはもう「有名人」の範疇ではない、というか。「アンディ・ウォーホル」の裏側はもう「アンディ・ウォーホル」ではないんだと思います。彼が私たちに見せてくれる作品と彼の表面(要するにペルソナですよね)だけが「アンディ・ウォーホル」なのであって、それ以外は知る必要のないこと、知るべきでないこと。そういう意味でもあるのかなと私は思いました。


 興味深い作品いっぱいあったのですが、長くなってしまったのでこのへんで!

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