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Twisted Steppersの裏側②

本日、Murder ChannelのBandcampにて『Twisted Steppers』が発売されました。
Name your price形式でのリリースです。全曲本当に素晴らしいので是非聴いてみてください。

ラトビアの暗黒電子音楽家「Oyaarss」について
今回は『Twisted Steppers』のオープニングを飾ってくれたOyaarssについて書いておきたい。
僕がOyaarssを最初に意識したのが、前回触れた3BY3のプロモミックスCDを聴いた時であった。Oyaarssと同じくラトビア出身のブレイクコア・アーティストKodekのミニアルバムにリミキサーとして参加しており、先にそちらを聴いていたのだが、正直その時の印象は薄かった。
OyaarssはCloaksのアルバム『Versions Grain』にリミキサーとして参加し、翌年にはドイツのAd Noiseamからアルバム『Bads』を発表。北欧らしい冷たく神秘的なメロディとハードコア・テクノの文脈から切り離されたガバキックを使い、インダストリアル、スラッジ、ポスト・クラシック、ダブステップ、ダークアンビエントの要素を散りばめ、地底深くまで沈ませられる様な重く絶望的にダークで喪失感のある楽曲を作り出していた。


ハードコア・テクノを聴いている人間ならば絶対にOyaarssのガバキックの特殊性に耳を奪われるだろう。Hellfish『The Anti-Citizen』の方向性ともシンクロしており、ハードコア・テクノという枠組みの中に『Bads』を入れるのも不可能では無いはずだ。予てから、ハードコア・テクノやガバの文脈から離れた所で鳴らされるガバキックに異常な興奮を覚えていた自分にとって、Oyaarssの登場は待ち望んでいたものであった。この興奮を出来るだけ多くの人に伝えたく、GHz music storeでもCDを取り扱いプッシュしていた。
2012年には、Murder ChannelからリリースしたDJ TechnorchのコラボレーションEPシリーズ『変身 第一形態~The Metamorphosis 1st Form~』にも参加して貰った。その時にOyaarssとメールで何度かやり取りをしたのだが、彼はガバキックを好んで自身の音楽に使っており、意図的にガバキックを作っていたのが解った。どういったアーティストの音源に影響を受けたのかまでは聞けなかったが、ハードコア・テクノからの影響は少なからずあるのだろう。
Oyaarssが提供してくれたDJ Technorchのリミックス「Love Love Love You I Love You (Oyaarss Remix)」は、インダストリアル・ハードコアとエレクトロニカとダブステップをミックスした危険な雰囲気のある素晴らしいものであった。『変身 第一形態~The Metamorphosis 1st Form~』には、ガバキックでダブステップを作るSinister Soulsのコアステップなリミックスも収録していたが、Oyaarssの方がハードコア感があったのも意外で面白い。Oyaarss曰く、マイナスの気温の中で制作していたというのも頷ける冷たさと暗さを感じさせるリミックスで今でも愛聴している。

Oyaarssがアルバムのプロモーションの為に制作したミックス音源では、IsisやSlogun、Ion Dissonanceをミックスし、ポスト・ハードコアからパワーエレクトロニクス、マスコアを自身の楽曲と繋ぎ、Oyaarssの世界観を違った角度から演出していた。Ad Noiseamのアルバム発表以降、Oyaarssはバンドセットでのライブパフォーマンスにも挑戦し、自身の音楽の幅を広げ、2014年にはコンピレーションLP『Paris/Berlin: 20 Years Of Underground Techno』にAdam XやRegisといった重鎮と共に参加し、Machine Codeのサンプルを元に楽曲を構築するコンピレーション『Stems』でも個性的な楽曲を披露していた。


近年、ダンスミュージックの中でのレフトフィールド系の作品にガバキックが使われる事が多くなってきたが、Oyaarssのアルバムを聴き返すと、彼があの時代に大きな挑戦をしていたのが解る。Oyaarssのアルバムは各種ストリーミング・サービスでも聴けるので、気になった方はチェックしてみて欲しい。
『Twisted Steppers』に収録されているOyaarssの「Salvatore」はMVも制作されているのでコチラもチェックを。


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