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福岡(FUCKOKA)の音楽史について / KenKoTaiji & MARU303インタビュー

先日、MURDER CHANNELから福岡のポスト・ブレイクコア・アーティストKenKoTaiji(健康胎児)さんのニューシングル『Empty Your Mind』をリリースさせていただきました。

KenKoTaijiさんは福岡を拠点にブレイクコアの本質を捉えた革新的な作品を発表されており、MURDER CHANNELのメガミックスやStazma The Junglechristのリミックスも手掛けてくれています。

ニューシングル『Empty Your Mind』は、メランコリックなメロディとアグレッシブなビートが劇的に交わるポスト・ブレイクコアの名曲となっており、カップリングにはオランダのブレイクコア・アーティストApzolutのジャングルコア・チューン「Oode」のKenKoTaijiさんによるリミックスを収録。『Empty Your Mind』はブレイクコアにはまだまだ大きな可能性があり、数ある音楽の中でも群を抜いて独創性があるジャンルであることを証明してくれています。

印象的なシングルのジャケットはMARU303さんが担当してくれました。
MARU303さんはゲームボーイを用いたチップチューン~チップブレイクをクリエイトされており、過去にはUSKさんとのユニットPortalenzとしても活動され、国内外のチップチューン・シーンに大きなインパクトを与えています。
DJ~VJ~デザイナーとしても精力的に活動されており、福岡のアンダーグラウンド・シーンを長きに渡って支えられている重要人物です。

今回は『Empty Your Mind』の発売を記念してKenKoTaijiさんとMARU303さんに今作にまつわるお話を中心に、お二人の視点から福岡の音楽史を語っていただきました。日本のチップチューン~ブレイクコアにおいて非常に重要な場所である福岡の歴史の一部が垣間見える素晴らしい内容の記事となりましたので、『Empty Your Mind』と合わせて是非チェックしてください。


Q. お二人とも福岡で活動をされていますが、ご出身も福岡でしょうか?どういった過程で音楽に出会い興味を持たれましたか?

健康胎児
生まれも育ちもずっと福岡です。地元は山が近くて昔は田んぼが多かったです。
音楽は高校からです。暇で友達からすすめられてギターを始めて、音楽聞かなきゃなーと思ってCDショップ行って、Slipknotのアルバム(Slipknot)をジャケ買いしてからです。それでバンド組んだりしてたのですが、金属アレルギーになってギター弾けなくなって…その時に高校時代からの友達のsHimaUが活動を始めた時期で、その影響で電子音楽を聞くようになりました。

MARU303
生まれは熊本ですが、頻繁に引っ越ししてたので地元的な感覚がないです。音楽は小さいころから親の趣味の音楽を聞かされてたと思うのですが、自主的に曲買って聞こうとしたのは中学くらいで、その時エヴァンゲリオンが放送開始されてハマってたのでOP曲の「残酷な天使のテーゼ」を買ったのが最初だったと思います。

電子音楽は大友克洋の映画「MEMORIES」のED(石野卓球:In Yer Memory)からテクノの存在を知って、その後大学に入ったら「テクノ部」っていうサークルがあったので、これは入りたいと思って入部したら実はナードコア部で…。そこから一気に曲作ったり、フライヤー作ったり、VJしてました。

Q. お二人の出会いについて教えてください。

健康胎児
まず僕はマルさんはYoutubeで見たのが初めてです。sHimaUから「天神でゲームボーイでライブするやばい人がいる」って教えてもらって見ました。
実際にマルさん実物を見たのはsHimaUの2回目のライブくらいで、頭ツンツンで緑で常に笑顔のヤベー人(もちろんいい意味)!って印象でした。
このときはまだ話したりはしてなくて、僕も20歳くらいだったかな?健康胎児として活動し始めたのが確か22~23歳くらいだったと思うので、初めて話したのは僕がライブを始めたときからくらい、マルさんが箱でイベントの準備してたときに僕も手伝いますって話しかけたのが最初だと思います。

仲良くなったのは6~7年前くらいでしょうか。僕が前の仕事を辞めた時期で、マルさんと大阪にSpongebob Squarewaveのライブを一緒に見に行ったあたりからよく遊ぶようになったと思います。今では仕事の途中にマルさん家に遊び行ったり、正月の元旦にマルさん宅におせち食べにいっちゃってるくらい仲いいです。

MARU303
もともとsHimaUから健康胎児の存在を教えてもらってて、曲聞いたらめちゃかっこいいしテクニカルで、ヤバい人がいるな~って思ってました。
リアルで初めてあったのはDJ天さんの追悼イベントとして復活した「DJ天下一武道会」をやったときに、自分がクラブの壁に落書きできるようにロール紙を貼る作業をしてたら話しかけられたのが最初ですね。実際会ってみたらtwitterとかから勝手に想像してたイメージとは違ってて頭が切れる雰囲気を感じてました。

仲良くなったきっかけは胎児くんが言ってる通り大阪に遊びに行ったあたりからだと思います。色々情報交換とかして遊んでるうちに仲良くなりました。今もよく飯食いに行ったり機材持ち寄って鳴らしたり一番よく遊んでます。

Q. お二人が出会われたとき、周りの音楽環境はどういった状況でしたか?

健康胎児
僕はクラブイベントは天さん主催の「VERSUS」しか遊び行ったことなかったので、周りの音楽環境はよくわかってませんでした。とりあえず僕は多分Breakcore聞いてたと思います。

MARU303
そのころはVJ絡みでお世話になっていた福岡SELECTAというクラブだとトランス、アニソン、アニソンリミックス、ベースミュージックがかかっていたと思います。割と企画力が強めのイベントが多かったので、面白イベントが多かったです。例えば、郷ひろみの「ゴールドフィンガー99」を99回かけるイベントとか、運動会と称して筋トレ始まったりとか(笑)。

他はTSUTiという壁にレゲエのサウンドシステムのようにスピーカーを積んでるクラブがあって、そこはベースミュージックやハードコアテクノがかかってました。そのクラブで「瞬極殺」っていう福岡で唯一のハードコアテクノイベントが長くやってて遊びに行ってました。あとは、ブラックアウトというクラブにも行ってました。名前の通りになるくらいテキーラがしこたま出るところで、音楽的にはかなり重いベース中心の曲がかかってたり、色んな知り合いがイベントやっていたのでバラエティ豊かな感じだった気がします。大体イベント終わりごろにはぐったりしてる人たちが多かったです(笑)。

街の方はこの頃から福岡天神の再開発が天神ビッグバンという名前で始まって、思い出の風景がどんどん消えてく感じに…、悲しいですね。

Q. お二人が関わられた福岡のアンダーグラウンド・シーンについて聞かせてください。まず、MARU303さんが参加されていた「辻テクノ」とはどんな企画だったのでしょうか?「辻テクノ」は路上でライブをゲリラ的に行われていましたが、こういった活動形態になった経緯とは?

MARU303
企画自体は先ほど話に出てきたテクノ部の部長が発案で、路上で弾き語りしている人たちにスピーカーを向けてテクノ流して音を打ち消そう!テクノで辻斬りだから辻テクノで!という内容でした(笑)。

それは実際に実行されなかったのですが、外でテクノ流すのは楽しそうだなと思ったので、余ってたアンプ付きのPCスピーカーに、無理やり電池ボックスくっつけてモバイルスピーカー作ったりしてて、そのあとゲームボーイのnanoloopとLSDj(ゲームボーイで作曲できるソフト)で遊びだして、2つとも合わせたら辻テクノ出来るんじゃないかと思って、USKに話したら乗ってくれたという感じです。

参加メンバーに関しては元々DJ天さんのやっていたイベント「VERSUS」での繋がりですね。辻テクノやる場所は、最初は機材持ってうろうろしながら良さそうな場所、ここでやったら楽しそうみたいな場所を見つけたらそのままやるって感じでした。
でもすぐ通報されたりして…、そういうのを繰り返してるうちに、ここなら通報されないとか大丈夫な場所を覚えていって定位置が決まっていきました。

Q. MARU303さんを筆頭にUSK、BSK、DJ天、Gigandectといった素晴らしいチップチューンをクリエイトするアーティストが福岡にはいらっしゃいます。福岡でチップチューンが広まったキッカケなどはあったのでしょうか?
福岡のチップチーン・アーティストの特殊性や魅力とはなんだと思われますか?

健康胎児
キッカケは先ほど挙げたsHimaUから教えてもらってからです。
当時マイスペースでマルさん、USKさん、撲殺さん達の曲を聞いてました。皆の音源は大好きでどれも沢山聞いてましたが、特に思い入れがあるのはマルさんの「Insane Youth」です。Renoiseでコピーもやったことあります。

Fuckokaのチップチューンは僕の中で「これがチップチューン」です。僕の中でBSK、USK、MARU303、Gigandectが四天王でボスがDJ天ってイメージです。皆の曲はこう…メロディがグッとくるんです。
多分、自分が18~20くらいに聞いてたのもあるんでしょうが、青春って感じです。哀愁、夕焼けって感じです。僕の中では。

MARU303
筆頭ではないです(笑)。たしか辻テクノメンバーにLSDjを布教したり改造ゲームボーイを渡したりしてたら、みんなゲームボーイで曲作るようになっていきました。全員、元々別の形で作曲やライブをしてたので、そのままツールがゲームボーイに置き換わっていった感じでした。

Pepinoのアレさんは元からCarillon EditorっていうLSDjとは別のゲームボーイ作曲ソフトで曲作ってましたね。他に福岡でチップチューンやってた方は猫0号さん、ajipoさんがいてイベントにも出てもらってました。

Q. FUCKOKAという名称はいつ頃から使われ始めたのでしょうか?FUCKOKAにカテゴライズできるアーティストの要因とは?

健康胎児
マルさん!教えてください!

MARU303
多分、辻テクノが出来なくなったあたりの2007年後期くらいから自然に言い始めた感じだったと思います。後から知ったのですが、自分たちよりも前に名乗ってた人たちがいたみたいですね。

自分は単に気の合う人たちの集まりだった感覚しかないので、レーベルみたいなものとは思ってなかったです。入りたいとかも言われたことあったのですが、そんな感じなので勝手に名乗ってどうぞって言ってたかも(笑)。

Q. 福岡で「VERSUS」「DJ天下一武道会」といったイベントをオーガナイズされていたDJ天さんはイベント・オーガナイズ/DJ活動を通じて、日本のチップチューンやブレイクコアなどのジャンルの発展に大きく貢献されたと思います。お二人にとってDJ天さんとはどんな存在ですか?

健康胎児
天さんがいなかったら僕はクラブに行ってないし、健康胎児は生まれてもないと思います。なので神様です。

「VERSUS」が初のクラブでした。僕は最初から行こうと開始時間くらいに行きました。そしたら、まだ皆リハーサルしてました。まだ出演者の1人が家にいるとの声も聞こえてきたのも覚えてます。(多分家にいたのはUSKさん)
僕は初めてのクラブイベントだったので、「クラブってこんなゆるいんだー!」って思いました。

MARU303
オーガナイザーとしては癖のある人たちをまとめてくれる大きな存在でしたね。天さんがイベントやってなかったら居場所なかったかも…。

DJとしてはとにかく熱血でストイックでした。もともとミニマルテクノをやってたのですが、音楽好きすぎて、ジャンルやBPM、クラブミュージックかどうかも無視していろんなの混ぜるようになっていきました。なんでもありな状態なのですが、流れをすごい考えてDJしてて、音楽の良さでミックスしてる感じでしたね。
天さんしかかけれないような印象に残るアンセム曲が多くて、今でもその曲聞くと当時DJで聞いてた感覚がよみがえります。

Q. KenKoTaijiさんが最初に出演したイベントはなんでしたか?活動初期はどういった場所でプレイされていましたか?

健康胎児
撲殺さんとDJ宮村優子が主宰の「REDSHIFT」というイベントです。
場所は今はもうありませんが、天神大名のBUBBLEでやらせていただきました。活動初期はほとんどこちらでやらせていただきました。

Q. Hitori Tori、Sabrepulse、Drumcorps、Sulumiといった海外アーティストが福岡でプレイされていますが、特に印象に残ったアーティストは?

健康胎児
Hitori Toriです。ずっとYoutubeで動画見てたりしてて、ずっと雲の上の人ってイメージでした。
直接お会いするととても気さくな方で僕に会うと「胎児さーん!」って言ってくれることが嬉しいです。奥さんも素敵な方でDJも最高で最強夫婦だと思います。

MARU303
全員印象深いし濃ゆいので決められないですね。別の方向で印象深かったのはDrumcorpsで、アーティスト写真でライブ中にクラブの天井にぶら下がって暴れてる写真があったんですが、それ福岡でライブしてた時の写真なんです。
そのとき隣でVJしてて、ぶら下がって暴れてるDrumcorps見て笑ってるときの写真が結構使われてたのが印象深かったです(笑)。

Q. KenKoTaijiさんのニューシングル『Empty Your Mind T-shirt』について。この曲にはどういったテーマやイメージのもとに作られましたか?MARU303さんがシングルのジャケットとTシャツのデザインを担当してくださりましたが、どのようにして曲をビジュアル化させていったのでしょうか?

健康胎児
使用した機材はFLstudioで、シンセは全部Minimal AudioのCurrentです。
最初、本当はBPM230でラガアカペラ使ってアレ系作ろうとしてたのですが、なんかしっくりこなくて…それで勢いで1日で作ったのがこの曲です。
イメージは自分っぽさです。初期衝動っぽい感じを最後出したいって思いました。

MARU303
もともと胎児くんからジャケットのリクエストを色々聞いてたので、曲に合わせるってよりかはリクエストを盛り込んで作っていきました。
イラストも描いてるうちになんだか胎児くんぽく見えてきたので本人要素をちょいちょい足したりして描きました。

Q. KenKoTaijiさんは音楽活動を休止されていた時期がありましたが、どういった理由で休止されていたのでしょうか?休止期間中はまったく音楽を作られていなかったのでしょうか?

健康胎児
自分が音楽活動休止したりアカウント消したりするのは一種の発作です。
なんとなくです。
なんとなく気分じゃないから音楽作らなくなって、なんとなく曲作りたいって思ったからまた曲作り始めました。多分この繰り返しで死ぬまで楽しみたいですね。音楽作ってないときは、、色々してました。

Q. お互いの音楽で魅力に感じる部分を教えてください。

健康胎児
さっきあげた「Insane Youth」は本当に最高な曲なので皆聞いてほしいです。メロディすごいキャッチャーなんですが、そん中にこう沸々としたパワーが秘められててサビで爆発してる感じです。

マルさんは時期によって使ってる機材や作ってる音楽は違ったりしてますが、変わらないのは音楽大好きなんだなーってところです。クラブでいつもハッピーハッピーマンになってるとこも最高です。クラブで楽しそうなマルさん見てるだけで幸せになれますよ。

MARU303
ビートの打ち込みが激しいけど、しゃべってるみたいに自然な感じで聞けるのがいつもすごいなって思います。
個人的にはメロディが好きで、不思議でちょっと不穏な感じの遊園地のようだったり、ワビサビが効いてる憂い感ある雰囲気とかが好きです。かと思えば突然ドハッピーな曲もあるのでそういうのも楽しくて好きです。

Q. 福岡以外の都市に住んでみようと思われたことはありますか?お二人が福岡を拠点にされている最大の理由とはなんでしょうか?

健康胎児
福岡以外に住んでみようと思ったことないですが、多分どこでもいい感じに住めると思います。でも、めんどくさいので福岡にずっといてます。
福岡を拠点にしてる最大の理由は、なんだかんだ福岡が好きなんだと思います。特になんもないけど、飯はうまいと思います。ご飯おいしいのは大事。

MARU303
思ったことはありますが、なんだかんだ福岡住みやすくている感じです。
日本の南の方なのでなんとなく気候が陽気で楽しい気もしますし…。あとごはんが美味い。

Q. 最近はどんな音楽に興味を持たれていますか?

健康胎児
Breakcore
ずっと探してる。
見つかるといいなー。

MARU303
最近はNia Archivesにハマってアルバム買いました。あとはジャングル味が強くてメロディ主体じゃないハッピーハードコアみたいなのが最近好きです。

Q. 福岡のオススメ・スポットがあれば教えてください。

健康胎児
マルさーーーん!!教えてください!!

MARU303
友泉亭公園っていう日本庭園を堪能できる場所が雰囲気良くておすすめです。
庭園の中に大きな建物があって、そこの大広間から下の池の鯉にエサやりできるんですが、その鯉がめちゃくちゃ獰猛で勢いすごいので面白いです(笑)。
入場料も200円で入れるし、大広間で茶菓子付きの抹茶セットも楽しめるのでゆっくりできますよ。

Q. 今後の予定を教えてください

健康胎児
特にないです。好きに気楽に適当にです。

MARU303
9月7日にM8 TrackerというLSDjをパワーアップさせた小型携帯作曲マシンの使い手が集まる「M8 Fest」にライブで参加します。海外のチップチューンアーティストや開発者本人のtrash80もライブするのでよければ遊びに来てください。場所はCIRCUS TOKYOです。

9月14日は福岡で10年間ハードコアミュージックイベントを続けて来た「ていおん!」が「Rave in Session」として新しくイベントが開催されます。
ゲストにYuta Umegatani (MURDER CHANNEL)、Savage States (Night On Earth)の二人を迎えてやるので福岡の方は是非!自分はライブとDJで参加します。

KenKoTaiji
https://kenkotaiji.bandcamp.com/music

MARU303
https://www.instagram.com/maru303/


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