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Outer Wildsのはなし②「星と宇宙」

注意:”Outer Wilds”未プレイの方へ

この記事には超名作ゲーム”Outer Wilds”のネタバレが含まれています。
DLCのネタバレは無いつもりです。
(そもそも未プレイの人がこの記事にたどり着く可能性は低いと思うけど)未プレイの方は読まないでください。
「今後もプレイする予定もないし、いいじゃないの」という人も、いつかプレイする機会が来るかもしれないので読まないでください。
「まだあわてるような時間じゃない」と陵南高校の仙道彰も言ってます。

前回①の続きです。今回は初プレイ、木の炉辺の村をウロウロしているときに、早くもこのゲームに私が「グッ」ときたポイントのはなし。

木の炉辺を探索して

初回プレイの1ループ目は、たき火の前で目を覚まし、村人と全員と会話をし、無重力洞窟で訓練を受け、観測所の展示物を満喫し、像とマッチングして…時間をかけてゆっくりと村の探索をした。
像とマッチングした後も、すぐに宇宙船には向かわずに村をウロウロしていたようで、メモによると村の中で謎の光に包まれて初めてのループを終えたらしい。
このときの私にはまだこの宇宙に何が起こっていて、この青い光が何なのかはまだ分かっていなかった。
それでもこの時点で、私はこのゲームに心を奪われ始めていた。

なぞのまぶしい青い光。

またまた話が脱線しますが、私は学生時代にバイトで塾講師をやっていた。教科は理系全般。主に中学・高校生、たまに小学生にも教えており、そのなかでも個人的に教えていて楽しかったのは中学生の理科だった。
考え方のコツみたいなものを図に描いて教えるのだけど、理解せずに丸暗記で取り組んでしまう生徒もいれば、うまく意味を理解してくれてすぐに応用問題も解けるようになる生徒もいる。
そして中学校の理科には「地球と宇宙」みたいな単元があるわけです。

図解:月の満ち欠けの仕組み
宇宙から鳥瞰した月(図の内側)は、常に太陽側が照らされて半月状態だが、
地球から観察した月(図の外側)は、公転位置によって満ち欠けをしているように見える

Outer Wildsでまなぶ「地球と宇宙」

そんな私にとって、初プレイで木の炉辺の村から見上げた夜空の天体の動きや、アトルロックの満ち欠けはかなりインパクトがあった。
恒星・惑星・衛星が存在し、それぞれが自転・公転をしているOuter wildsの舞台は、太陽系シミュレーターとして、それだけで既に魅力的だった。

中学校理科に出てくる内容でも「北極星を中心にした日周運動」、「月や金星・火星の満ち欠け」、「地球の自転と公転がどういう自然現象を起こすか」などなどを理解するためには、
・人が地球の内側から夜空を見上げた時の主観的な視点
・宇宙を外側からみたような鳥瞰的な視点
の両方の視点が必要になる。

同じ宇宙でも、それぞれの視点で見え方は全く異なっていて、問題を解くためには視点を切り替えて考える必要があり、これがなかなか難しい。
(これは理科だけじゃなくて、学問全般、ひいては人間社会を生きていく上でもとても大事な考え方だと思っているんだけど、そんなところまで教えられる良い先生ではなかった)

主観的な視点:木の炉辺から見上げた北の夜空の日周運動
鳥瞰的な視点:太陽系の外側から宇宙船で見た星の動き

Outer wildsが太陽系シミュレーターとして素晴らしいのは、主観的な視点と、鳥瞰的な視点、その両方をシームレスに行き来することができる点だ
主観的な視点に関しては、地球(木の炉辺)からの視点でも、北極や赤道直下などいろんな場所からの視点も見られるし、なんなら月(アトルロック)など他の惑星からの視点など、様々な場所に視点を移すこともできる。

地球から見える金星や火星とは異なり、他の惑星との距離もかなり近い。
目を覚ました瞬間から目に飛び込んでくる巨人の大海のスケール感、表面の様子が目視で確認できるアトルロックなど、空を見上げているだけでも、体感的に「地球と宇宙」を学ぶことができるOuter wildsの舞台装置に、グッと心をつかまれた。

もちろん、Outer wildsではない他の宇宙を舞台にしたオープンワールドのゲームを先に遊んでいれば、そちらで同じ感想を持っていたんだとは思う。
私のオープンワールドの経験は、ゼルダの伝説BotW、スカイリム程度だったので、そのスケール感にしてやられた…という感じ。
我々の太陽系を舞台にしたこういう惑星シミュレーターがあれば、理科の教材として最高だと思う。探せば既にあるんだとは思うけど。

下弦のアトルロック。しっかり欠けている。

木の炉辺と地球の違い

そのほか、Outer wildsの太陽系で気になったところ。木の炉辺は地軸(自転の回転軸)が、公転面に対して垂直(90°)になっている。
ここが我々の地球と大きく異なるところで、地球は公転面に対して66.6°、言い換えると公転軸に対して23.4°傾いている(ここはテストに出ます)
その結果、木の炉辺と地球とでは以下のような点で異なってくることになる。はず。

  • 木の炉辺では、公転位置による地表の気温の差は生まれないので、
    季節の概念が生まれない。

    • そもそも自転も公転もめちゃくちゃ早いので、地軸が傾いていたとしても四季は生まれなさそうだけど。

      • 季節がないと、行事とかも生まれにくそう。そもそもあの世界の暦がどうなってるのかは分からんけど。

      • 時間の単位として「分」とか「年」が出てくるのは、ゲームデザイナー様の地球人への配慮だと思っているので、特に疑問に思ったり考察したりはしない派です。本当はHearthianやNomaiそれぞれに使いやすい暦や時間の単位があるのでしょう。

季節はないけど、間欠泉周りとか雪が積もっている地域もある。
標高差による気温差とかはあるのかも。
  • 木の炉辺では、北極と南極付近では年中、白夜の状態が続いており、地平線には太陽がいつも見えている

    • 一方、赤道付近では、太陽が真東→真上で南中→真西と、太陽がまっすぐ上って沈む

    • 本来なら太陽の照らす角度の影響で、地球以上に「北極・南極」は寒く、「赤道直下」は暑くなるはず

      • 気温差がすごいことになりそうだが、地域の植物とか降雪の差はほとんど無く見えるので、地域による気温の差は無さそう

      • 木の炉辺の大気は温室効果的なものがめちゃ強く、ビニールハウスみたいに星全体の気温を均一に保っているのかもしれない
        (地学は中学以降勉強していないので適当なことを言ってます)

      • ちなみにHearthianの村は赤道直下

    • 地球でも白夜や極夜になる地域はあるけど、地軸の傾きにより季節限定。

  • 「地軸が垂直」なのは木の炉辺に限らず、Outer wildsの太陽系すべての惑星に共通

    • 燃え盛る双子星の場合、北極にはChartのキャンプがある。大気が無いので昼間っぽさがないので分かりにくいが、あそこも白夜。

アトルロックの月食。木の炉辺と太陽とアトルロックは
すべて同じ公転面にいるので、皆既月食、皆既日食が起こりまくる

Outer Wildsの「昼夜の概念」

星の動きに関連した話で、これはゲームプレイ中に考えていたわけではないが、「昼夜の概念」も、Outer wildsはかなり特殊で面白いと思う。
私のプレイしてきたゲームでも、ドラクエⅢに始まり、ポケモン金銀ムジュラの仮面マインクラフトと、「昼夜」や「時間の流れ」の概念をシステムに取り入れたゲームはたくさんある。
普通、これらのゲームでは「昼にしか行けない場所がある」だとか「夜は敵の出現率がアップする」などの仕様を実現するために、ゲーム内のフラグとして昼夜が意図的に実装されている。
例えばマインクラフトでは「暗い場所にはモンスターが出現する」という仕様があり、日中フェイズで建築や探検をすすめ、夜フェイズは屋内に避難したりベッドで時間を過ごす…というプレイヤーの行動を促している。
空を見上げれば太陽や月が時間の流れに合わせて動いていて、それに合わせてフィールドの明るさも変わる。朝焼け・夕焼けのような太陽光の見え方もしっかり変わり、かなりリッチに時間の流れが表現されている。
このように多くのゲームにおいては、太陽や月は「昼夜」や「時間の流れ」の表すアイコン(インジケータ)としての役割を担うように実装されている。

マイクラの四角い太陽(私の畑)

それらのゲームと大きく違い、Outer wildsは高精度な太陽系シミュレーターであるため、副次的に昼夜の概念が実装されている。
明るい恒星
と、惑星の公転と自転を実装したら、自然と、勝手に、昼夜の概念が生まれたのだ。
このスケールのデカさ、改めて考えるとすごくないですか?
「まずはじめに太陽があった」みたいな神話クラスのスケール感。

もちろん実際のゲームデザインの順序はそうではなく、昼夜を作ろうとして公転と自転を実装したのかもしれない。そうでなくても、より昼らしく、より夜らしく見せるために、手間をかけて様々な調整はされていると思う。
それでもOuter wildsの「昼夜」は、他のゲームと比べてかなり特別なあり方をしていると思う。Outer wildsの世界では、地表で太陽を追いかけていけば夜はいつまでも来ないのだ。(22分で別のどえらいものが来るけど)

3Dゲームに「物理エンジン」が搭載されることが当たり前になったように、今後は地表を舞台にしたゲームで「天体シミュレーター」が実装されるようになっていくのかもしれない。
…どういう嬉しいことがあるのかはパッとは思いつかないけど。

そういえば今気づいたけど、巨人の大海は常に明るい。分厚い大気の層(雲)日光を乱反射していて、星のどこかに日光が当たってさえいれば、星全体の雲を明るくしてくれているんですかね。しらんけど。

それにしてもこの空の色はどういう理屈なのか

…まだ木の炉辺の、空を見上げてグッときたところから話が進んでいないですが、今回はここまで。次回はobservatoryの展示物の話と、いい加減、宇宙船に乗ってからの話に入りたいところ。
ゾンビのみなさまのお腹の足しにしていただければ幸いです。


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