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『日本沈没2020』を観た結果『東京マグニチュード8.0』が凄かったお話。

今しがた『日本沈没2020』を一気観しました。以下ネタバレ無しです。

そもそも世界がこんな雰囲気の時に『日本沈没』はどうなの? という言葉も聞こえはしましたが、フィクションと現実をリンクさせる必要は無いと個人的には思います。エンタメは楽しめれば良し。

自然災害で記憶に残るアニメと言えば、僕は『東京マグニチュード8.0』を一番に挙げます。
当時リアルタイム、しかも家族で視聴していたという観ていた人には解る壮絶な体験をしているので。

簡単に説明すると、『日本沈没2020』は日本列島が海底に沈むという話で『東京マグニチュード8.0』は首都直下型のM8.0に襲われた話です。
どちらも10代半ばの姉と小学校低学年の弟の2人が主人公であり、大規模な災害を生き抜くという似通った性質を持っています。
子供とそれを取り巻く大人達が非常事態の中で翻弄される様をリアルに寄った筋道で描く、というのもほぼ同じです。

『日本沈没2020』の感想

希望溢れるアニメでした。命の輝き凄い。
登場人物が多いのでそこをもう少し掘り下げて貰いたかったと思います。
説明の無かった登場人物は弟が父親の様な存在を幾度も失うという経験値稼ぎだったので、まぁ背景と言ってしまえばそれまでなのですが。
特に中盤お世話になる施設に関しては、あれで1本スピンオフを作れるんじゃないかというくらい惜しいポイントです。

突っ込みポイント
・ソイツが刺される必要性あった?
・ユーチューバーが万能過ぎて特殊任務の経験あったか勘繰るレベル
・そのカメラに撮られたら〇〇
・小野寺さんはマスコットキャラ
・引きこもりの唐突な活躍
・脈絡のないフリースタイルラップバトル

ちなみに好きなキャラは小野寺さんと爺さんで、後半その2人しか見てませんでした。
恐らく末期癌であろう爺さんの驚異的な活躍と、全身麻痺なのにどんなピンチも乗り越えてくる小野寺さん。
『TEXHNOLYZE』という別のアニメでも吉井さん(モブのオジサンだけど存在感は1位)が好きだったから、これは僕の特性なのかもしれませんが。

『東京マグニチュード8.0』というトラウマ製造機との違い

ネタバレしたくないので詳しくは書きませんが、『東京マグニチュード8.0』は間違いなくトラウマ製造機です。
というか最早地震なんて関係なかった。あれは本気で絶望させにきてる。
何だろう、どんでん返しではないんだけど、何なんだろうなあれ。
ある意味ではどんでんより大きな物を返された感があります。どんでんって何。

一方『日本沈没2020』は絶え間なく紡がれた希望をしっかりラストで咲かせるという王道な一本道です。
絶望だけを残していったりはしない。
「日本は沈没するけどその後にちゃんと希望があるよ」
という事が徹底されて描かれています。
アフターストーリーを想像できるパニック物というのがしっくりきます。
『東京マグニチュード8.0』はアフターなんて無い。いや想像できるからこそしたくない。やめてくれ絶対鬱になる。
前者とは違ってパニック感はゼロなんですけどね。この不思議は一見の価値有りですよ。

やっぱり最後に書かせてほしい『東京マグニチュード8.0』の悲しすぎるアフター ※ネタバレ有

悲しすぎると書きましたが、むしろ苦しすぎると言った方が良いです。
まず最終回での衝撃の展開を書きます。ネタバレされたくない人は回れ右です。

大震災の最中両親との再会だけを願ってどんな事も2人で耐えてきた姉弟。
でも、実は最初の方で弟は死んでいました。
その後登場している弟は全て姉の妄想だったのです。
ご丁寧にきちんと種明かしもしてくれます。というか2回観れば解るんですが、最初から「弟なんていないよ」というシーンが幾つもあるのです。
2回目を観たいと思えればの話ですけどね。

道中関わってくれた大人達も、もちろんそれを知っています。知っていて、辛い姉の心中を察して誰も言わなかったのです。
お陰様で視聴者が一番辛い思いをしましたが。

「お姉ちゃんなんだから」
両親から日常的にそう言われてきた姉はその言葉で自分を鼓舞して最後まで頑張っていました。
でも、両親と再会するその直前に弟が死んでいた事に気付いてしまいます。弟を守れなかった絶望に襲われながらの再会に両親も寄り添う、そんなラストシーンで終わってしまうのです。

まず姉は自分を責めるでしょう。弟を守れなかったと。
両親にも少なからず姉への憤りがあるはずですが、直接責めるほど子供ではないし、隠し通せるほどできた人間でもない。
そうなると必然的に夫婦の見解にも差が生じます。喧嘩が増えるかもしれないし、口を利かなくなるかもしれない。そしてそれが姉を再び責めるのです。
月命日がやってきて、命日がやってきて、姉ばかりが年を重ねる。
その間に迎える姉の誕生日や進学を、家族はどうやって祝っていくのでしょう。
成人式、結婚式、孫が生まれた時。
きっと変わらず弟の遺影は実家に飾られています。

現実世界の震災や津波でもこの様な『残された家族』の辛さは都度テレビで特集されています。
希望なんてどこにもない。失った部分は失われたままそこに穿たれている。
そのまま、真っ暗なまま、それでも残された者には生き続けるという選択肢しかないのです。
リアリティという意味では『マグニチュード8.0』が圧倒的な勝利なんですけど、アニメというメディアでそれを表現する事の賛否は分かれると思います。
深夜にうっかり観ていたアニメの最終回がこれというのは、午前3時くらいに始まるNHNの『みんなのうた』を観てしまうくらい苦々しい物でした……。

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