【雑記】FGOの緊急メンテの裏側って何がおきてたんだろう予測
※注意※
同業経験則からくる開発事情の予測です。
こんなことがあるんだなー程度の参考にしてください。
そもそもFGOで何が起きたの?
2024/12/12 01:20~19:00までFGOでは緊急メンテナンスが実施されていました。
Xなどで関連するワードがトレンドに入るなどしていたので、FGO未プレイでも「FGOってゲームでなんかおきてるっぽいぞ」程度の認識をされている方もいらっしゃったかと思います。
緊急メンテってことはかなりの大事なんだろうなとはぼんやり想像できるでしょうが、じゃぁ具体的にはどんなやばいことが起きてたのかという話を先にします。
FGOの機能の一つにミッションというものがあります。
機能自体はありふれた機能であり、FGOはこのミッションの一つに【エクストラ】というカテゴリが存在し、これが今回の緊急メンテナンスの原因となった部分でもあります。
【エクストラ】はいわゆる恒常ミッションとも呼ばれるもので、「メインストーリーを〇〇まで進めよう」「キャラクターを〇〇体育成しよう」のようなゲームを遊ぶことで達成できる内容が大半を占めています。
報酬もゲーム内通貨(いわゆる石)やキャラクターを強化するためのアイテムなどが大半で、ある程度難易度の高いミッションであれば入手機会や個数が制限されている貴重系アイテムも入手できます。
もちろんミッションなので一度報酬を受け取ったら再獲得はできないのが仕様なのですが、なぜかこれが12/12(一部報告によると12/11のアップデート後から)が再度受け取れる状態になっていた、というのがメンテナンスの原因となった不具合です。
なお、これは一部のユーザーだけに発生していた不具合で、私は再現しませんでしたが妻のアカウントでは発生していました。
何が問題だったの?
まずは以下の画像をご覧ください。
有志の方がまとめてくださった、今回の不具合で獲得できたアイテムと個数の最大数です。
なんかたくさんのアイテムあるなー、一部のアイテムはなんかすごい数がもらえたんだなー、など未プレイの方でもたくさんのアイテムが獲得できたということがわかる画像になっています。
何かと話題になったのは画像最上段にある右から5番目、ほぼ中央にある虹色のアイテムです。
これがFGOにおける石、聖晶石となるのですがこれが1746個も獲得できていました。
FGOにおけるガチャは1回につき石3個、11連だと30個必要ですので、単純計算で11連約52回分の石と考えるとその数が膨大さがイメージできるかと。
ちなみにFGOの聖晶石は1個120円の価値があります。
なので現金換算すると【20万9520円】分の石となるわけです。
ちなみに、ここの価値算出方法は人によって異なるのですが、金融庁や財務局などには基本的に1個何円という形で届け出ることになるので今回は最高単価で計算します。
現金換算すると一気にやばさが実感できますね。
そのほかにもいろいろとアイテムが獲得できるわけですが、背景が金色のアイテム(チェスの駒のようなデザインとクッキーみたいなデザインのアイテムは除く)はゲーム内でも獲得機会が制限されている貴重性の高いアイテムです。
例を挙げるのであれば、画像最上段にある最右の結晶のようなアイテムは、一回のイベントで4~6個、別途月に2回までのアイテムとの交換で入手などで月平均6~8個入手となるのですが、このアイテムはキャラクターのスキルを最大レベルにするために必要となり、しかも1キャラに3個や5個や8個と一定数使用するため非常に需要が高いアイテムです。
それが57個も獲得できるということは、受け取っただけで格差が生まれてしまうわけですね。
結論、莫大な数の石と全ユーザーを対象にして入手経路を絞っているアイテムの過剰獲得によるユーザー間での格差の発生というゲームでは絶対に発生してはならないことが起きてしまった、というわけです。
なんで炎上しちゃったの?
大きく分けると以下の要因があります。
1:年に数回もないイベント形式「ボックスイベント」中にメンテナンスとなった。
2:イベントに伴ってめっちゃ強いキャラがガチャに実装されていた。
3:運営の初回対応が「回収可能なアイテムのみを回収して、すでに使ってしまった分はおとがめなし」としたこと。
まぁ3の対応が一番大きな要因です。
2も関連していて、新キャラがマジで強いんです。
FGOは良くも悪くも周回ゲームであるため、効率よく周回できるキャラクターや汎用的な強さを持つキャラクターは評価されがちなんですが、この新キャラのロウヒはその条件にがっちり当てはまり、しかも開催中のボックスイベントでは特攻キャラにしていされているので通常よりも50%ほど攻撃力が上がっています。
そして1のボックスイベントというのが何かというと、周回してアイテム集めてアイテムとかががっつりもらえる専用のガチャ(のようなもの)を回すという内容になります。
まぁFGOは周回ゲームのわりにアイテムのドロップ率が渋いので、イベントであつめるのが効率がいいのですが、このボックスイベントはすべてのイベントのなかでトップクラスの効率性をほこっており、それ故にみんな必死になって周回しまくるわけです。
とまぁいろんな要因が重なった結果炎上しちゃって、現在は「すでに使った人にも何らかの対応しますよ、悪質な利用と判断した場合はBANしますよ」という方針に代わっています。
なんで〇〇しないの?シリーズ
簡単な経緯は以上でここからは、アプリゲームの運営者視点による一連の対応に関する疑問に答えていくコーナーになります。
あくまでも、ほかのゲームの運営者から見た場合の話であり、FGO運営内部で同じことが起きているという裏取りなどをしたわけではないのでご注意ください。
なんでロールバックしないの?
今回の炎上の中で一番見た意見です。
ロールバック、いわゆるゲームデータの巻き戻しですがユーザーからしたらこの方法が一番確実な方法だと思われますよね。
でもロールバックって結構危険な行為なんです。
単にサーバー上に存在するバックデータから上書きするという処理だけ済む話じゃないんですね。
問題点は以下の通りです。
「正常」なデータはどこまでなのかの特定に時間がかかる。
ユーザーの努力をなかったことにしてしまう。
課金などが発生していた場合などの副次対応が発生する。
1はそのままで、不具合が発生したタイミングを特定して、その前の時点のデータを正常なものとして、不具合修正後にユーザーデータを上書きするという手順をイメージしてもらえればわかりやすいと思います。
要するにロールバックするにしても、どのタイミングのデータに戻すべきなのかの特定に時間がかかるというわけです。
2もそのままですね。
ロールバックというこういは、その間のユーザー努力を否定する行為でもあります。
その間に育てたキャラやドロップしたアイテムなどもなかったことになり、人によっては納得できないということにもつながります。
3が一番厄介です。
なぜなら課金したこと自体をなかったことにしないといけませんが、これはアプリ側だけで完結する問題ではありません。
Googleやappleなどのストア側に課金処理のキャンセルや払い戻しの処理を対応してもらう必要があるためです。
要するに決済完了となった時点で、各ストアに支払情報が飛んでしまっているのでロールバックしてもそれをなかったことにはできず、またこの手の返金対応は誤対応を防がなければならないのでストア側もかなり慎重になり、結果として対応完了まで時間がかかるわけです。
またロールバックが不完全となるリスクもありますし、仮に処理上は完全だったとしてもユーザーから「キャラがいなくなってる」「アイテムがなくなってる」「石が減ってる」というお問い合わせがあればそのすべてを調査するという事後処理の負荷もかなり増えます。
過去に携わっていたタイトルで一度だけロールバックをしましたが、何かしらが消失したという問い合わせは後を絶たず、一か月近くその調査に掛かりきりとなった経験があります。
なのでロールバックは本当に最終手段であり、それ以外解決する方法がないとなった場合の奥の手というわけです。
なんで対応方針を先に出さないの?
これはものすごく単純で、対応方針が確定するのは修正を含めた一連の対応が完了してからになるためです。
原因が特定できなければ修正のしようがないですし、その修正内容などによって対応できること、できないことなどが変わります。
そして修正しようとしても、様々な理由から当初構想していた通りの修正ができないということもありえます。
なので「こういう対応方針とします」と先に公開したのに、あとから「やっぱりできませんでした」というのはかなり印象が悪くなるのは容易に想像できると思います。
できないことを言うなよ、ってやつです。
ユーザーへストレスをかけてしまっている状態では、この手のアナウンスはかなり慎重に行わないと火に油を注ぐ形となってしまうため、確実な情報として出せる段階で発表する形をとることがほとんどです。
(まぁ今回のFGOは出した対応方針が誰が見ても悪手という、まるで悪い例のお手本のようなことをしたのでかなり驚きましたが)
なんで対応完了するまでメンテしないの?
これは商業的にも提供的にも一番とりたくない選択肢です。
商業的にという視点は考えるとわかることですが、メンテ中はゲームがプレイできない=収入が発生しないことになります。
それでいて対応のために人員は動かさないといけないわけなので、お金は出る一方になってしまうので、完了まで時間がかかるとなるとメンテナンスを続ける選択肢はとれないわけです。
それでサービス継続困難となるのは本末転倒なわけですし。
なのでまずは表面上の問題を解決(今回の場合はミッション関連の挙動の修正と可能な範囲でのアイテムの回収)してメンテを開け、追加で調査などが必要なものは継続して対応する形で運用することなります。
提供側という視点でも理由はほぼ似通っていますが、つまるところサービスを止め続けることは遊んでもらうことを考慮すると極力避けたいわけです。
特にイベント中なんてユーザーが最もモチベーションを上げやすい期間ですし、それに水をさすなんてことはしたくないわけです。
なんで取ったもの勝ちみたいな対応にしちゃったの?
これは俺も知りたい()
ゲーム内のリソースバランスを一番理解している立場から出てくる対応とは思えなくて、3回は読み直したけどやっぱりなんでこんな判断にしたのか全然わからなかった。
結局は対応方針ぐるりと変えていくことにはなったけど、あの内容でユーザーが納得できると本気で思ってたのなら、FGOの運営方針に携わってるメンバーにサービス運営に関する経験が浅い人しか残ってないのではと邪推してしまうよ。