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残影と残響 —Ghost&Reverberation

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ベラゴアルドの記憶と追憶。或いはその残り香、残影と残響。 だいたい一話完結の短編。
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2022年7月の記事一覧

込めたるは祈りにあらず |三|

些細な供物  レモロは懸命に働く。少しでも信頼を勝ち取ろうと躍起になる。働きぶりが認めら…

込めたるは祈りにあらず |四|

嵐の訪れ  その日もレモロは野良仕事を終え、孤児院へ戻る畦道を歩く。近頃のイーゴーの背中…

込めたるは祈りにあらず |五|

宴  振動と衝撃がレモロに覚醒を促す。  はじめは誰か、何かの叫び声をぼんやりと聞いてい…

込めたるは祈りにあらず |六|

粛清  怪物は立ち上がり、両腕を広げる。ドレスは破れ、肥大した肉体が露出する。緑色の二の…

込めたるは祈りにあらず |七|

幕間の憤懣 「ちくしょうめ」  アギレラは二度目の悪態を吐く。最期にかち割った怪物の頭蓋…

込めたるは祈りにあらず |八|

生き残り  ジャポが行う地母神教の弔いを待ち、準備が整い次第、アギレラは部屋に落ちていた…

込めたるは祈りにあらず |九|

判断  アギレラは眠り続けるレモロを抱いて山脈を登り、見晴らしの良い平地で野営を張る。  キャリコらとは、孤児院の先の坂道で別れた。スミッチへの後始末は二人に任せ、ひとまず彼がレモロを引き取る運びとなったのだ。  金鷹までの猶予。キャリコが提案した折衷案はそれだった。三つの季節が過ぎるまでには、必ずアムストリスモを説得し、レモロを引き取らせる。そう胸を張るキャリコをひとまず信じ、アギレラは孤児院が燃え尽きるのを待たずにスミッチから遠ざかった。急いだのは、いち早く子どもをこ

込めたるは祈りにあらず |十|

日暮れを待たず  レモロを連れ、アギレラは山脈を越える。念のためポランカも避け、人影が見…

込めたるは祈りにあらず |十一|

街道にて  街道を進むにつれ風向きが変わる。草木や土の匂いとは別で、前にも感じた妙な生臭…

込めたるは祈りにあらず |終話|

別たれる辻  距離を詰めず、互いは静かに対峙する。  おびき寄せられたという時点で不利、…