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ウツのたわごと

これから、ウツ状態にある俺について喋る。独り言、自分のウミを出すためのデトックス。
……と~か言って、実は聞いてもらいたいと思ってる。独り言なら形なんかどぉ~でもいいのに、聞き手を意識してカッコつけてる(「それで、この程度?」って言わないでネ)。この辺が、実にイヤラシイ。ま、それが自分なのだから、認めるしかない。

改めて、

お願いです。聞いてください!

「じゃあ、聞いてやろうか」と思ってくれた方に頼みがある。俺の話を聞いて、「ウツの人は、みんな、そうなんだ」と決めつけないで欲しい。

俺は、血統書付き――おっと、間違えた――診断書付きの「双極Ⅱ型気分障害」だが、同じ病名の誰かさんの症状と俺の症状が同じだなどと、思ったことはない。人間は一体、一体、異なる生き物だ。生まれ育った環境が違えば、今の境遇も違う。

時々、精神疾患の人が事件を起こすと、「彼/彼女は……だったから」みたいな記事がメディアを賑わす。そのせいで息子さんを殺す親御さんまで出たような覚えがある(ホントの理由はそこじゃないかも……と思ったから、覚えてる)。そういう捉え方はやめて欲しい。病名が同じだからって、同じことをするわけじゃないからだ。

精神疾患の病名ってのは、医者たちが「この辺の患者は、まとめて、この引き出しに入れようぜ」って、患者をタンスに整理しただけだ。
俺の家のタンスでは、靴下とパンツが同じ引き出しに入ってる。みなさんのお宅でもそうですか? 家ごとに違いません?

話が混乱してきた。要するに何が言いたいかというと、病名なんてのは一応の便宜的な区分で、ホントは、患者の数だけ精神疾患があるってこと。

だから、この独り言を一般化しないでください。お願いします。

さて、前置きはこのくらいにして……今、俺が何をしてるかと言うと……あっ、話をそう持ってっちゃイカン。今はパソコン(ないしスマホ)に向かってるに決まってんだから。(パソコンです)
つい直前まで何をしていたか……そう、そこが大事だ。俺にこんな独り言を喋る気にさせた出来事。

俺は、テーブル全面を覆った醤油を拭いてた。今も、まだ強烈な醤油の匂いに包まれて喋ってる。
なんで、そうなったか――テーブルの上を片付けようとしたからだ。散らかった部屋の片付けに着手したら余計散らかったこと、ありません?
俺はしょっちゅうだ。家でも、会社でも、俺の人生もそんな感じで、問題は、人生を余計散らかしたまま再び片付ける意欲を失ってることだ。

あ、イカン。また、話がそれだした。目の前のテーマに集中、集中。あれ、どこまで喋ったっけ? あぁ、醤油だ、醤油。

俺は、ウツになると、身の回りの片づけが面倒になる。っていうか、元々面倒なのが、ますます面倒になる。ウツが悪化して一か月。独り暮らしの俺の部屋は、ほとんど「ゴミ屋敷」になった。

しかし、このままだと自己肯定感が下がってウツが悪化する――そう思い出したのが、おととい。俺は、毎日の片づけの予定を立てた。今くらいのウツ状態だと、俺は、一日にひとつのタスクしかできない。昨日が溜まった皿洗い。今日がテーブルの片づけだ。

昨日は、まる一日がかかりで、汚れた皿とコンビニ弁当の抜け殻の山からキッチンを掘り出した。そこで疲れて、オシマイ。

今日も、昼過ぎに起きた。俺は、ウツの時は、朝、動けない。昼過ぎになっても動きたがらない身体にムチ打って、テーブルの上を片づけ始めた。

テーブルの表面が見えなくなるまで散らかしまくった新聞やら、チラシやらを、切り裂き、丸め潰し、捨てに捨てまくった。保険会社やら役所やらの通知で封も切ってないのを、そのままサイドボードにしまった。なにをしまったか、もう覚えてない。

やっとテーブルの表面が見え出した、その時。
ドス黒い血のようなものが、テーブル表面を覆い始めた。最初は何が起こったか、わからなかった。「汚され抜いたテーブルが悲しみのあまり出血したのか?」なんて、思った。
俺の鼻が「出血点」を嗅ぎつけた。テーブルの上にあった醤油の小瓶が倒れ、その口から醤油が流れ出してた。

これが醤油でなかったら、俺はそこで力尽きて、片づけを投げ出してるところだ。だが、醤油となると、そういうわけにいかない。
俺は、醤油の匂いが嫌いだ。鼻にツーンときて、しかもネトーっとした、あの匂い。納豆の次に嫌いだ。

俺は、醤油臭から逃げたい一心で、テーブルの上に残ってたものを全部床に放り出し、ひたすら雑巾で醤油を拭いた。どす黒く染まった雑巾を洗っては拭き、洗っては拭き、した。地獄のような15分間が過ぎ、やっとテーブルの上から醤油が消えた。俺はテーブルに消臭剤をスプレーしまくった。

だが、おかしい? まだ醤油の匂いがする。ふと足元を見ると、テーブルから放り出した雑誌やら皿やら何やらが、みな醤油に濡れ、そいつらが、あの嫌な匂いを発してる。

グギャ! 天が俺の上に落ちた。俺は、テーブルに突っ伏した。動く気力が出ない。疲れた身体を睡魔が襲ってくるが、醤油の匂いが気になって眠りにおちることができない。ていうか、テーブルの上で眠ったら風邪ひいちまうだろうが。ウツに風邪じゃあ、「ドツボにはまってトッピンシャン」だ。
だが、再び片付けに戻る気力が出ない。

その時、読書机の上のパソコンが俺の目に入った。誰かが、ツイッターで、精神的にキツいと感じたら気持ちを吐き出すと楽になると言ってた。聴いてくれる相手がいるとなお良いとも言ってたが、俺は独り暮らしだ。電話で愚痴をこぼせる相手もいない。
よし、SNSだ。元気だったころに登録したnoteに向かって喋ろう。

……ということで、ここまで喋ってきた。効果のほどは?
あった。俺は、ここらで独りごとを終え、部屋の片づけに戻ろうと思う。外は寒いが、窓を開けて換気扇を回し醤油臭を追い出す覚悟もできた。

ここまで聴いてくださったみなさん、本当にありがとうございました。おかげさまで、今夜は、醤油臭に悩まされずに眠れそうです。
このデトックスがいつもいつも効くという確信はありませんが、また効果がありそうに思ったら、しゃべります。その時は、よろしくお願い致します。

《独り言、おわり》