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SDGs実践事例インタビュー~「買い物は投票」株式会社ハローズ様の取り組み~

株式会社Flexas Z稲葉涼太です。
中小企業の皆様のSDGsに関するお困りごとを解決するSDGsコンサルタントです。

『SDGs実践事例インタビュー』と題しまして、岡山県を中心に中国・四国地方にて食料品スーパー マーケットを展開される株式会社ハローズ様のインタビューを通したSDGsの実践活動の記事をお届けします。

SDGsの認知度は高まったが、SDGsの取り組みとは何をどうしたらよいのか困っている事業者の方の参考になればと思います。

【今回インタビューにご協力いただいた方】
株式会社ハローズ 
 代表取締役 社長
  佐藤利行様

 商品ライン本部 商品管理室長
  太田光一様

左:太田様/右:佐藤様

食品廃棄削減とハローズモデル

■ハローズ様の食品廃棄率は2022年で0.48%、恵方巻にいたっては同業が20%程度の廃棄率の中、0.16%と伺っています。驚異的な数字と存じますがどのような工夫をされているのでしょうか?

佐藤様:いいところを聞いてくれた。5年前の廃棄率が0.70%で廃棄率がどんどん下がり、1店あたり1000万円の廃棄が1店あたり700万円に減っている。
つまり年間3億のコスト削減につながっている。
太田さんが商品管理を頑張って、タイミングの見定めや値引きなどの工夫をしている。

恵方巻の廃棄率の少なさは当社の緻密な在庫管理・発注管理の象徴。

太田様:廃棄は残念ながらゼロにはならない。
多くの店がそうだが閉店時間があると閉店2時間前くらいから廃棄を恐れて品切れを起こす。品切れを起こすとお客様は買いに来なくなり、そうすると余計に廃棄が増える。

当社は24時間営業しており、その上で総菜の廃棄率は極端に低い。
ハローズに来れば24時間欲しいものがあるからお客様は当社を選び、売れるから廃棄も減る。

■需給予測の読みの精度の高さを各店舗で保つコツはなんでしょうか?
太田様:
各店で改善レポートを出してもらい、私も毎月各店舗を巡回している。良い事例が共有され好循環が生まれる。

ハローズモデルと呼ばれる、フードバンクと契約した子供食堂等の支援団体が直接に近隣のハローズ店舗へ寄付品を引き取りに行く仕組みが消費者庁で取り上げられ食品ロス削減推進大賞も受賞しました。
ハローズモデルについてお伺いさせてください。

出展:消費者庁

佐藤様:まだ食べれる、もったいないものはいっぱいある。
しかし、お客様向けには安全を考えて期限1日前に撤去している。

太田様:きっかけは2015年ころ。私が廃棄削減のために店舗巡回をしていると何人かのパート従業員から、「実はまだ食べられるのにどうしても廃棄に回る商品がもったいないので何とかしたい」という声が上がった。
調べたらアメリカのウォルマートでフードバンクに提供している話があったので参考にし、フードバンク岡山に食品を提供したところから始まった。

佐藤様:以前はハローズからフードバンクに持って行っていたが、欲しい人がハローズに取りに来るモデルに切り替えた。
こちらから責任者が持って行くスタイルは労力もかかってていたが、その労力が無くなることで持続可能になった。

太田様:更に、いったんフードバンクに持って行く形だと日持ちするものしか渡せなかったが、直接取りに来てくれることで生鮮品なども渡せるので渡せる食品が10倍くらいに増えた。

■賞味期限・消費期限ギリギリの食品を渡すことのリスクなど大変だったことはありますか?

太田様:
食料品を貰う団体様に対して、ハローズは消費期限内の食品を渡すのでもらう側は自己責任という約束事をしている。
そこに賛成してくれる団体に渡しているので、今までクレームはない。
アメリカなどでは法制化されている『善きサマリア人の法(※)』の精神である。
(※「災難に遭ったり急病になったりした人など「窮地の人」を救うために無償で善意の行動をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができることをしたのなら、たとえ失敗しても結果責任を問われない」という考え方)

■中国地方ではハローズ様を中心に広まっているハローズモデルだが、他の地域で広まるのは難しいのでしょうか?

佐藤様:考え方の問題だと思うが簡単なはず。
本当は食べれるものを食べてもらえば食品が活きる。
更に廃棄にはコストがかかるが持ち帰って食べていただければ廃棄コストもかからない。
二重三重に良いことがある。

太田様:『善きサマリア人の法』が無いのでリスクを感じている会社も多いと思うが、今度の国会で法案が提出されるという話も伝わってきている。
ニュージーランドで『善きサマリア人の法』が制定されたら食品提供が4倍になったと聞いている。
日本もそうなるのではないか。

■中国地方ではどうしてハローズモデルが他社にも広まっているのでしょうか?

佐藤様:活動の成果が出ていて、フードバンクなども成果を発信しているから。
太田様:各社の社長同士で連絡しあっているので、当社の話を他の会社の社長も聞くとやりやすくなる。
スーパーマーケットの廃棄は事業用生ごみだが、メーカーが食品廃棄すると産業廃棄物でさらにコストが高くなる。
そこに気づき、ハローズモデルを行うメーカーも増えてきている。

佐藤様:競争することもあるが協働することも大事。
ハローズモデルは誰も損していない、みんなプラスになっている。

『買い物は投票』~好循環型社会のための取り組み~

■ハローズ様のサステナビリティレポートを拝見しました。
以下の4領域を重要課題としてサステナビリティに取り組まれています。
・食を通じた経済
・人財活躍
・社会貢献
・環境保全
そしてハローズ様は35年間増収増益です。
SDGsに取り組むことはコストであるという考え方も世の中にはありますが、ハローズ様にとって「SDGs」はどういう位置づけでしょうか?

佐藤様:ハローズは食を通じた好循環型の社会を目指すための活動をしている。そのためにはお客様から支持されなければいけない。
そのための活動はすべて行わないといけないのが大前提。
CO2削減の活動はTCFD(※)の目標も高く難しさを感じているが、取り組んでいる。
人財育成はハローズ財団を通じた人材育成と教育振興を行っている。
社内でも人材育成なくして企業の成長なしと考えている。

われわれは一介のスーパーではなく好循環型の社会インフラだと考えている。

TCFD:(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)。G20の要請で2015年に設立された国際的な組織の名称であり、各企業に気候変動に対して取り組みの計画や現状を具体的に開示することを推奨している。

太田様:欧米では「買い物は投票」と言われている。消費者は企業をよく見ており、同じ売価なら社会に貢献する企業から消費者は買う。
社内でも「買い物は投票」という考え方を話している。

佐藤様:今、コロナの前よりも業績は向上している。
店舗が広く天井も高く通路もしっかり確保されていて三密の対策も出来ていて24時間営業で商品も安心して買える環境がつくられている。

太田様:品目の売上の伸び方の分析をすると、コンビニからお客様が流れてきていると考えられる。
コンビニよりも安い価格で24時間商品を提供していることが要因と考える。

佐藤様:今、上場しているスーパーの中でハローズは、客単価を上げたからではなく、客数が伸びたことで売り上げが伸びている。
エシカル消費が理由なのかはわからないが、「同じ買うならハローズ」という支持をされていると考える。

ハローズ様の強み

■ハローズ様の活動を支える強みについて教えてください。

佐藤様:ビジネスモデルの勝利だと考える。
当社のビジネスモデルは3つの強みがある。
①24時間オペレーション
24時間の店舗営業、24時間の物流、24時間の情報システムを実現することで、お客様のローコストでお客様の利便性を高めた店舗運営を行える。

②百店一様の600坪型NSC
600坪の共通フォーマットで百店一様の店づくりをし、棚割共通化でAI活用した自動発注をしている。
当社のNSC(※)の複合化率は80%近く、当社がディベロッパーにもなっている。

※NSC:(Neighborhood Shopping Center:近隣購買型ショッピングセンター)とは、ドラッグストアやホームセンター、スーパーなど来店頻度が似通っていて生活に便利な業種と共同でショッピングセンターを形成すること。

③SCM(サプライチェーン・マネジメント)
物流センターを中心に、「製造・開発」「集荷配送」「販売」を一括コントロールすることで、お客様へ「安心・安全・安価」な商品を安定供給できる。

この3つを持っている会社はないので優位性があると考える。

■人材育成に関してお伺いさせてください
佐藤様:
当社ほど人的資本経営、パーパス経営をしている会社は無いと他社にも言われている。

持続可能な成長をしていくために大事なことは「人材開発」「組織開発」そして「事業の枠組みをしっかり守ること」だと考えている。

そして従業員の平均年齢を維持していく、つまり若い従業員の採用を継続していくことが大事。
情報開示されている同業の中で当社は平均年齢が2番目に若い。

人材が元気になることが大事。
利益の分配を賞与で支払っており、従業員達から「こんなに貰っていいんですか?」と言われるが、頑張りに報いるために払っている。

SDGsに取り組もうとされる会社へのメッセージ

佐藤様:上場企業には色々な制約があるが、それが企業の生命維持装置だと思う。会計基準の変更など面倒くさいと思うかもしれないが、それらが会社の精度をあげ自分の会社を研ぎ澄ます外からのよい影響であり、みんなドンドン取り組んだほうがよい。

ただし、本業から外れてはいけない。
SDGsも、自分の会社のSDGsに関係することをより強化するのであり、実現できないこと、やってもいないことを掲げるのではない。

世の中に存在意義がある会社なら必ず良いことをやっているはず。
今やっている範囲の中でSDGsに関係することを取り上げたら結構あるはず。

当社は、ただ安いだけではなくお客様の信用・信頼にこたえているから支持されている。

おわりに

今回は株式会社ハローズ様の実践活動インタビューを通じて、SDGsに取り組もうとされる世の中の事業者様に向けメッセージをいただきました。

弊社では今後とも、SDGsを実践されている方の実践事例のインタビューをお届けします。

このnoteをご覧になって、SDGsをやってみて直面したお困りごとを相談したい方、実際にSDGsに取り組む際の事例を知りたい方がいらっしゃいましたら、ぜひお問い合わせフォームから弊社までご連絡ください。

・株式会社Flexas Z Webサイト:https://flexas-z.com/

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