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日仏2つのマルシェを比較してわかる、日本のマルシェの魅力

生産者と消費者の交流と農産物の売買を行うプラットフォームとして先進を行く株式会社ポケットマルシェが年に1度開催する「リアルマルシェ」に参加した。卸売市場の近くで育ったせいか、マルシェ(市場)はプロが行くもの、一般人は開放日や稀のお祝いに買いに行くものというイメージであったが、今回リアルマルシェに参加し、日本のマルシェの良さを学んだ。筆者がかつて滞在したフランスのマルシェ文化とともに、将来の日本のマルシェの姿について考えたい。

1.どのようなお客さんが、なぜ買いに来るのか?

お手伝いと称してほぼ全ての農家さんとお話をしていると、お客はお客に吸い寄せられるのか人が集まってくる。訪れた人に来店理由を手当たり次第尋ねる自己簡易調査を行ったところ、主な回答はの通り。

①偶然通りかかって気になったから:4割

②ポケットマルシェの会員で応援したいから・ファンだから:4割

③新鮮な野菜がほしく会員ではないが遥々買いに来た:1割+その他1割

残りは子どもにせがまれたからなどが1割だ。年代は20~30代のカップルや家族連れ、単身と思われる40~50代男女、50~70代の主婦だ。

①偶然通りかかって気になったからと回答した人が比較的多く、さらに踏み込んで足を止めず通り過ぎた人も多数いたにもかかわらず、なぜ彼らは立ち止まり商品を購入したのか。主な理由は、好きな野菜があった、新鮮で安いから、人との待ち合わせ中でお土産にしたいから、農家さんの話を聞くとこだわりや想いを感じて応援したくなったから、であった。

興味深かったのは、「農業の修業を始めて今年晴れて独立をした若手農家」「20年近く務めた会社を辞めて地方へ移住、ゼロから農業を学んだ農家」「栽培はもとより秋から春先の土づくりに命を注ぐ農家」と直に対峙し商品を購入したお客さんが現れ、そうこうしているうちに新たなお客さんを惹きつける一幕を何度か見かけたことだ。ここに共通する空気は間違いなく農家への「へー」「すごい!」という共感だ。

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2.フランスのマルシェ事情

一方、フランスのマルシェ事情は少し異なる。なぜなら常設店舗はほぼ毎日開催され、週2回程度(たいてい平日・休日の各1日)特別店舗が立ち並び市場はより一層盛り上がりを見せる。食品安全の規制・基準が厳しく、公的施設以外の場所での屋外販売においては事前の営業許可が必要な日本とは制度が異なるのか、陳列された商品も水産物、畜産物、ハム・ベーコン・チーズなどの加工品、パンと幅広く、一家の数日間分の買い物がすべてマルシェで完結する。よって人々にとってマルシェは特別なものではなく日常の一コマなのである。日本が馴染みの居酒屋で一杯ひっかけるだとすると、フランスは馴染みの出店でチーズ一かけ買う場所なのだ。

3.日本のマルシェの魅力・販売戦略とは

都心の消費者にとっての買い物先として一般的なスーパーやコンビニではなくあえてマルシェに行く人は、やはり安く品数が多い量販店にはない商品を求めている。そのような通行客を惹きつけるのは、商品の質の高さに加えやはり農家自身のヒューマンストーリーやこだわりだ。一方、主催者からの指示もしくは他の販売者への配慮なのか、どのブースもどことなく同じように見え、農家さんのあふれんばかりの想いや個性が現れているとは言えない。農家さんも必ずしも売り上げ重視というよりも消費者との交流を楽しみにしているため必死に販売促進を図る必要はないかもしれない。しかしやはりたくさん売れた方が嬉しいのは間違いなく、そしてそれは比較的簡単な方法、例えばディスプレイの方法、キーワードの見せ方といったちょっとした工夫で実現可能に思えて仕方なかった。マルシェデビューの地方から来た農家さんとタッグを組んでマルシェ販売促進プロジェクトをやっても面白いかもしれないと新たなアイディアがひらめいた一日であった。

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